「震災時、検察官は最初に逃げた
」と国会で妄言を吐いた森雅子法
相を安倍晋三首相が厳重注意した
。検事長の定年延長で答弁に窮し
、国会を空転するのを避けるため
のポーズにしか見えない。法相が
ありもしない事実で検察官を侮辱
した異様さだった。本来なら、即
辞任に相当するはずなのに、立憲
民主など野党は形だけの首相注意
で妥協してしまった。立憲はさら
に著しく私権を制限しかねない新
型インフルエンザ特別措置法の改
正案にも賛成した。後手後手のコ
ロナ対策で感染拡大を招き窮地に
立たされた政権を追い込むどころ
か手を差し伸べているようにさえ
見え、政権と同じくらい不信感が
募る。
特措法改正案では首相が緊急事態
宣言を発すれば、集会や言論の自
由、移動の自由など私権が著しく
制限されることになる。旧民主党
が作った現行法は「事前に科学的
根拠を示す」「2、3週間に1度
は国会に状況報告をする」など国
会の関与を明確に規定していたが
、改正案は事前承認を条文に盛り
込まず、付帯決議に入れられただ
けだった。これでは強い拘束力は
なく、時の政権の恣意的運用を許
してしまいかねない。自民党が目
論む改憲の骨格となる緊急事態宣
言の先取りである。
新型肺炎への恐怖感に乗じるよう
な「焼け太り」ではないか。立憲
の山尾志桜里議員が「国会の事前
承認が必要だ」と語り「立憲主義
とは権力を国民が統制すること。
国会議員が国民の代表として権力
を統制されなければならない」と
採決で反対した。野党統一会派の
寺田学元首相補佐官もこれに同調
した。二人に拍手を送りたい。
正論を貫かずして、支持は広がら
ない。そして失態続きの政権を追
い込むことなどできない。山尾氏
は党方針に背いたことによる離党
について問われ「もう少し考えた
い」と述べたが、まったく必要は
ないのではないか。
かつて瀬戸内寂聴氏が山尾氏のス
キャンダルを「雷に打たれたよう
なもの」と擁護し再活躍を望んで
いたのが、記憶に新しい。しかし
、その後の政治行動は懐疑的に見
ていた。特に野党候補を見捨てて
、与党の林文子横浜市長の市長選
応援に回ったことが理解できなか
った。
ところが、立憲に合流後の山尾氏
は元検事というキャリアを生かし
法律の専門家的立場から鋭く安倍
政権のほころびを衝いていた。際
立ったのは、検事長の定年延長に
ついて人事院が検察庁法で定めた
検察官の定年が国家公務員法に基
づかないと規定した文書を発見、
森法相を追及した質疑だった。改
めて公文書の重要さをも教えた。
弁護士でもある森法相は人として
の誇りや人格まで失って虚偽答弁
を平然と繰り返した。それを浮き
彫りにさせただけでも、山尾氏が
見事に再生したように見えた。
9条改憲論議の必要性を説く山尾
氏にはまったく同意できないが、
今回も「検察官逃げ混乱」発言の
森雅子法相のさらなるでたらめ答
弁を見逃さなかった。政治センス
のある山尾氏を立憲はもっと重用
すべきだろう。
一方で、官僚だけでなく身内の官
僚さえ「国家の私物化」よって人
格をも破壊させる安倍首相。これ
から新型コロナウィルスの危機感
をどんなにあおられても、信用で
きない。それどころか首相の発す
る言葉の裏の裏まで読み取って行
動しなければ、破滅に加担するこ
とになる。
【2020・3・13】