◇ 考察11-6 灰原さんの誤算2(共にある覚悟6)
「黒鉄の魚影」 ◇
続きです。
「命がけの復活」シリーズで、
おそらく灰原さんは
「自分自身の、コナンへの想いを自覚」
したでしょうね。
手術室へ運ばれるコナンに付き添う蘭ちゃんと
廊下の端でそれを見ている灰原さん。
コナンの事情を知り、コナンと同じ立場にあり、
コナンの傍にいるのは自分だけれど
コナンは毛利蘭のものであって、自分のものではない。
彼の隣にいるべきは、彼女であって自分ではない。
そのことを、寂しい、あるいは悲しいと思い、
でも、そう思うことすら、自分にはおこがましい。
多分、この時の灰原さんは、
自分の感情と、コナンへの思いに気付き、
それを殺したんだと思います。
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ところが、その後です。
コナンに解毒剤を渡し、身代わりになった灰原さんに、
「なんでお前、ここまでしてくれるんだ?」
ってコナンが言った時、
びっくりしてるんですよね、灰原さん。
あー、そう言うことか、て。
灰原さんからしたら、
自分は解毒剤開発の為だけにここにいるんだし、
コナンの幼児化元凶である自分が、
彼をフォローするのが贖罪であり義務。
って思ってた。けどコナンは、
「オレが新一に戻りたいと思っているように、
灰原哀も宮野志保に戻りたいと思っていて、
そのために解毒剤を開発していた。
なのに、完成した解毒剤をオレに譲り、
更にフォロー(身代わり)までしてくれる」
て思っていた。それに、灰原さんは気付いて
びっくりしたでしょうね。
コナンは自分を、
コナンと同じ立場の人間として見ていて、
しかも、薬を譲った自分を気遣っている。
で、多分、この時に気付いたんじゃないかな。
コナンは、自分が幼児化したことに対して、
「お前のせいでオレはこんな姿になった」
と責めたことは一度もないんですね。
コナンは、灰原さんを恨んでいない。
解毒剤の開発は、灰原さんを庇護する見返りじゃなく
彼女自身が元の姿に戻る為だと認識している。
そして、組織や薬のこと以外では
同い年の女友達のように接してくる。
個人としての灰原さん、
灰原哀自身を、半ば無条件に受け入れている訳で
何て言うんですかね、
「あ、彼にとって私は人間だったんだ」
そういう驚き。
利害関係で繋がった他人ではなく
身内である明美さんや、
数少なかったであろうプライベートな友人とのような、
「無条件に相手を受け入れる親しい関係」
を、彼は自分との間に見ていたのか。
研究者でない灰原哀も、彼の傍にいていいのか、て。
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これはねー、本当に、灰原さん、
ころっと世界が変わったとんじゃないかな。
モノクロだった心象世界に、
一ヶ所、ポンっと色がついたような。
それまで、無表情と言う仮面をかぶっていた
灰原さんですけど、このエピソードから、
コナンへの気持ちを隠さなくなるんですよね。
(蘭ちゃんに告白できなかったって
聞いて嬉しそうな顔してますし)
これ、多分、今まで
「彼に憎まれているであろう自分が、
彼に惹かれるなんてありえない、許されない」
って思ってたのが
「思いを伝えることは出来なくても、
想うことくらいは許される」
に変わったんだろうなー、て、思います。
考察11 共にある覚悟
1
2 灰原さんの選択
3 灰原さんの来し方
4 灰原さんの免罪符
5 灰原さんの誤算1
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7 灰原さんの試練
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