◇ 考察11-4 灰原さんの免罪符(共にある覚悟4)「黒鉄の魚影」 ◇ | ひまわりの散歩道

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劇場版名探偵コナン「業火の向日葵」の感想をメインに
コナンについて好き勝手、書き散らしています。
 
 
 

◇ 考察11-4 灰原さんの免罪符(共にある覚悟4)

「黒鉄の魚影」 ◇


組織に監禁された時に
「服従」ではなく「自死」を選んだ志保ちゃん。
予想外に生き延びてしまった。ただし幼児化して。

ここで2つ目の疑問です。

「なぜ逃げたのか」

正確には、

「組織から逃げ出した後、
 なぜ工藤新一のところに向かったのか」

****************

正直、この行動については、
すごーーーーーーーく
悩んだんですよね。

子供の姿になったのがAPTX4869の作用、
これに疑う余地はありません。
このまま留まっていたら実験台として
碌な殺され方をしない。なので、

「逃げる」

てことで、組織に建物から逃走した。

この時点で、志保ちゃん、
「今すぐ組織に殺される危険」と
「研究に戻り人体実験を続ける苦痛」から
とりあえずは解放されてます。

それでも、明美さんを喪った悲しみや、
実験のために人命を弄んできた罪の意識が
消えたわけではないですし、
今、頼れる人も場所も、生きるすべもない。

再び自死を選んでもおかしくない状況じゃないのかな。

でも、志保ちゃんは、生きることを選んだ。

 

****************

自死には勢いが要りますから、
「気を取り直してもう一回」てわけには
なかなかいかないでしょう。

でも、彼女の場合は、発作的な自死ではなく、
自分の立ち位置や今後を冷静に受け止めた上で
これが自分に残された唯一の道だと判断したもの。

それを、状況が変わったとはいえ、即座に覆す。
それも「死ぬのをやめる」ではなく
「生きることを選び、行動する」


強い人だなあ、と思います。


そして彼女にとって「生きること」が
「工藤新一を頼ること」だった、
そういうことなんでしょうね。

****************

この時の「工藤新一」の存在は
志保ちゃんにとって、生きるための
唯一の希望だったんだと思います。

「自分と同じ境遇の人間なら、
 自分を理解してくれる」

工藤邸に辿り着いたらなんとかなる、
もう、そう信じるしかないですよね。
工藤新一に拒絶されたら野垂れ死ぬしかない。

そんな状況で、一度行ったことがあるとは言え
子供の足では遠い道のりを、長い白衣を引きずって、
雨の中、暗い街を1人で走った志保ちゃん。

・・・すごい根性。

いやだって、

新一さんが自宅帰ったのとは違いますよ。
あれは自宅ですから、

道も判ってる(見慣れてる)し
あとどれくらいだって判るしさ!

日が暮れてから知ってる道20分歩くのと
全然知らない道10分歩くのとじゃ
知ってる道20分の方が感覚としては近いよ。

頑張ったなあ・・・怪我もしないでさ。

で、当然工藤新一は自宅にいない訳ですが
運良く博士に拾われた志保ちゃん。

これで一安心、は、良いとして。
実を言いますと、あずま、
ずーっと気になってることがあるんですよね。

****************

気になってるコト。

志保ちゃん、いやもう灰原さんと呼びますが
コナンに対して、言動がやたら
偽悪的、挑発的ですよね。

あれ、何?て。

阿笠博士とコナンにしたら、
灰原さんを守らないといけない
義理も義務もありません。
自分の身の安全と今後の身の振り方は、
全部、コナンと阿笠博士の気持ち1つ。

なら、好感を持ってもらえるように

振舞うんじゃないの?

「私の作った薬のせいで
 あなたがこんなことになってしまってごめんなさい」

「お姉ちゃんが殺されて、

 もう頼れる人は誰もいないの」

「お願い、ここに置いてください」

て、謝罪しつつお願いし・・・ますよね?
あずまならそうする。
だって他に行くとこ、ないんですし。

なのに、まるで

「私を憎みたければ憎みなさい」
「私は好きでここに来たわけじゃないわ」
「私はあなたに同情される筋合いなんてないのよ」

と、言わんばかりのあの態度は一体何なんだ。
しかも、見てると阿笠博士には普通で、
コナンにだけキツイのでは?

いくらなんでも

コナンに甘えすぎじゃないの?て。

****************

で、考えてたんですけど、これね、
あー、あくまであずまの推測ですよ。
合ってるかどうかは判りません。

この、灰原さんのコナンに対する偽悪的な態度って、
無意識なのか意識してなのかは判りませんが


コナンに

 

断 罪 し て 欲 し か っ た


んじゃないのかな。

 

****************

志保ちゃん、工藤新一の生存に気付いた時は

「悪運が強いのね」

程度にしか思っていなかったんでしょう。
でも、実際に自分が幼児化して、
その状態で社会に1人放り出されたら。

日常の全てが不便になり、
周囲には本来の自分を理解してもらえず
組織の追手に常に警戒しなければいけない

死ななくて良かった良かった、

ではないんですよね。

組織の目を逃れるために身を潜めて
本来の名前も立場も捨てて
外見相応の生活を強いられる。

日本警察の救世主とまで言われた高校生が
小学校一年生として過ごすのが、どれほど苦痛か

そのことを、志保ちゃんは身を以って知った。

当然、工藤新一が、薬の開発者である自分に
良い感情を抱いているハズがない。

だから、コナンなら、自分を
断罪してくれると思ったんじゃないのかな。

罪を罪とも思わずに人を手にかけ
最愛の姉も死なせてしまった自分。
生きる価値のない、それでも
自分で自分を裁くことは出来ずに、
今、ここで、のうのうと生きている。

そんな自分を、
自分の薬のせいで幼児化して全てを失った工藤新一に、
そして、姉を看取ってくれた江戸川コナンに

「オレがこうなったのはお前のせいだ」

「オレはお前を、絶対に許さない」

そう、断罪して欲しかったのかな、て。

そうでもされなきゃ、許せないでしょう。
自分が今、生きていることを。

他人を傷つけ苦しめ、命をも奪ってきた自分は
他人に傷つけられ苦しめられるべきだ。
その苦痛と引き換えなら、生きていても良い。

立場的にはありえない態度をとってまで
灰原さんがコナンに求めたのは
今、生きるための免罪符、
だったんじゃないのかなと思います。



考察11 共にある覚悟
1
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