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プラスチック資源循環促進法(背景や目的など)【株式会社船井総合研究所:環境&廃棄物コンサルタントコラム】東新一

プラスチック資源循環促進法(背景や目的など)

 数回前のコラムから『資源有効利用促進法』の流れをくむ、個別物品の特性に応じた規制の背景や目的などをご紹介してきました。今回は『プラスチック資源循環促進法』、別呼称では『プラスチック新法』と呼ばれている法令で、正式名称は『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』です。この法令は容器包装リサイクル法(1995年制定)、家電リサイクル法(1998年制定)、建設リサイクル法(2000年制定)、食品リサイクル法(2001年制定)、自動車リサイクル法(2002年制定)、小型家電リサイクル法(2012年制定)の後、プラスチック資源循環促進法(プラスチック新法)として2021年に制定、2022年に施行されました。他の個別物品の特性に応じた規制にくらべ、比較的最近の法令になります。

 

<プラスチック資源循環促進法>

 プラスチック資源循環促進法とは、プラスチックの使用製品の設計から使用製品廃棄物の処理までの全ライフサイクルにおいて、関わるすべての主体に対し、プラスチックの資源循環の取組を促進するための方策を示した法律です。プラスチックの資源循環に向けては、プラスチックのライフサイクル全体において関わりのある全ての事業者、自治体、消費者の皆様(「関わるあらゆる主体」)が相互に連携し、「プラスチック使用製品設計指針と認定制度」「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」「製造・販売事業者等による自主回収・再資源化」「排出事業者による排出の抑制・再資源化等」「市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化」といった方策を3R+Renewableなどの大原則を踏まえ、取り組むことが重要とされています。 

 ここでは先にご紹介しました「プラスチック使用製品設計指針と認定制度」「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」「製造・販売事業者等による自主回収・再資源化」「排出事業者による排出の抑制・再資源化等」「市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化」において、具体的にどのような取組みが求めらているのかを補足紹介します。

 

「プラスチック使用製品設計指針と認定制度」

・プラスチックの資源循環を促進するには、プラスチック製品の設計段階での「3R+Renewable」の取組が不可欠です。環境に配慮したプラスチック製品の設計を国が認定/公表するので、買物では、グリーン購入法に基づき環境配慮製品を選択、プラスチック資源循環促進にご協力くださいというものです。

「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」

・ワンウェイ(使い捨て)のプラスチック削減には、プラスチック製品を必要な分だけ使用、繰り返し使用、過剰使用しないなど意識することが重要です。ワンウェイプラスチックの使用規制や削減は、世界全体としてプラスチックごみ問題に取り組む上で、欠かせない対策です。 日本では「プラスチック資源循環戦略」のマイルストーンによって、2030年までにワンウェイプラスチックを累積で25%排出抑制することを目指しています。また、商品の販売又は役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック製品のうち、12品目を特定プラスチック使用製品として指定し、これらを無償提供する小売・サービス事業者による削減の取組み(有償化、辞退者へのポイント還元、消費者の意思確認、代替素材への切替えなど)や消費者には、必要としない特定プラスチック使用製品の提供辞退や、繰り返し使用できる製品活用など、ライフスタイルの変革がお願いされています。

「製造・販売事業者等による自主回収・再資源化」

・プラスチック製品を資源として製造・販売事業者等による店頭自主回収等を行う取組が広がっています。買物では、各事業者が案内する分別/回収ルールに従うようにお願いされています。分別/回収協力によって、同一種のプラスチック製品が回収され、自主回収されたプラスチック製品は新たな製品としてリサイクルされます。

「排出事業者による排出の抑制・再資源化等」

・工場やオフィス、店舗などでもプラスチックごみの排出量削減/リサイクルが求められています。事業活動に伴って排出されるプラスチックごみの排出量の削減・リサイクル等を実施するために必要な体制の整備や、社内の分別ルール等に従ってプラスチックごみを分別するなどがお願いされています。

「市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化」

・プラスチックごみを減らすには、ごみ分別の徹底やできるだけ資源化することです。 容器包装リサイクル法に基づき、不要なプラスチック製容器包装を資源として分別/回収/リサイクルされていますが、これまで燃えるごみ等として処理されてきた、要らなくなったプラスチック製品についても、自治体で効率的な分別/回収/リサイクルされるような仕組みが設定されます。よって、今後、プラスチック製品の分別/回収/リサイクルが開始される際、自治体の分別ルールが変更されますので、ご確認の上、分別くださいというものです。プラスチックを分別して資源として回収することで、プラスチックが新たな製品として生まれ変わり、廃棄物削減につながります。

 続いて、プラスチック資源循環促進法の目的をご紹介します。同法第一条に目的は次のように示されています。

この法律は、国内外におけるプラスチック使用製品の廃棄物をめぐる環境の変化に対応して、プラスチックに係る資源循環の促進等を図るため、プラスチック使用製品の使用の合理化、プラスチック使用製品の廃棄物の市町村による再商品化並びに事業者による自主回収及び再資源化を促進するための制度の創設等の措置を講ずることにより、生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする

 また、プラスチック資源循環促進法の第二条には、同法での定義として、以下のように示されています。

・「プラスチック使用製品」:プラスチックが使用されている製品

・「使用済プラスチック使用製品」:一度使用され、または使用されずに収集され、若しくは廃棄されたプラスチック使用製品であって、放射性物質によって汚染されていないもの

・「プラスチック使用製品廃棄物」:使用済プラスチック使用製品が廃掃法に規定する廃棄物になったもの

・「プラスチック副産物」:製品の製造/加工/修理又、または販売その他の事業活動に伴い副次的に得られるプラスチックであって、放射性物質によって汚染されていないもの。

・「再資源化」:使用済プラスチック使用製品、またはプラスチック副産物の全部、または一部を部品、または原材料その他製品の一部として利用することができる状態にすること。

・「再資源化等」:再資源化及び使用済プラスチック使用製品等の全部、または一部燃焼用に供することができるもの、またはその可能性のあるものを熱利用できる状態にすること。

・「分別収集物」:市町村がプラスチック使用製品廃棄物の分別収集により得られる物。

・「再商品化」とは、①製品の部品または原材料として利用する者に有償、または無償で譲渡し得る状態にすること。②製品としてそのまま使用する者に有償、または無償で譲渡し得る状態にすること。

・「排出事業者」:プラスチック使用製品廃棄物のうち産業廃棄物に該当するもの、またはプラスチック副産物を排出する事業者をいう。

 続いて、プラスチック資源循環促進法の制度概要をご紹介します。以下はこの制度での「ライフサイクル」「対象」「主務大臣」などを示した図(出典:環境省・プラスチック資源循環)になります。

  ここまで同法の目的や定義、制度概要をご紹介してきましたが、そもそも何故『プラスチック資源循環促進法』が出来たのでしょうか?その理由として、主に以下の3点が挙げられます。

◆海洋プラスチックごみ問題

◆気候変動問題

◆廃棄物輸入の規制強化
 まず、海洋プラスチック問題ですが、ご存知のとおり、プラスチックは便利品として、人々の生活に浸透してきました。その便利品は社会に貢献している一方で、海洋汚染が深刻な問題になっています。例えば、2050年海洋プラスチックゴミの量が魚の量を上回る可能性があることや鼻にストローが刺さったウミガメなど。
また、世界的な異常気象が発生するなど、気候変動に関する問題も重要性を増している点や、さらに、諸外国における廃棄物輸入に関する規制が強化されている点も大きなポイントです。

 続いて、目標になりますが、2019年に策定された「プラスチック資源循環戦略」(消費者庁・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省)にて、3R+Renewableの基本原則と、6つの野心的なマイルストーンを目指すべき方向性として掲げており、排出事業者には『特定プラスチック使用製品の使用の合理化の目標』を設定いただくようにしています。なお、その6つの野心的なマイルストーンとは設定記入例は以下の通りです。

①2030年までにワンウェイプラスチック累積25%排出抑制

②2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに

③2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクル

④2035年までに使用済プラスチックを100%リユース・リサイクル等により有効利用

⑤2030年までに再生利用を倍増

⑥2030年までにバイオマスプラスチックを約2000万トン導入

 

また、特定プラスチック使用製品の合理化の目標については、各事業者が基準年度及び目標年度を設定し、売上高、店舗面積その他の特定プラスチック使用製品の提供量と密接な関係をもつ値などを用いて下記の表に示す方法によって設定いただくようになっています。
<設定記入例(出典:環境省・プラスチック資源循環)>

 上記の図からもわかるように、特定プラスチック使用製品の提供に係る原単位を基準年度と目標年度との関係において▲20%削減するように設定されています。

 続いて、プラスチック資源循環促進法での対象となる特定プラスチック使用製品提供事業者の対応業種と特定プラスチック使用製品との関係ですが、以下のとおりです。

<対応業種>

・各種商品小売業(無店舗のものを含む)/・飲食料品小売業(野菜・果実小売業、食肉小売業、鮮魚小売業及び酒小売業を除き、無店舗のものを含む)/・宿泊業/・飲食店/・持ち帰り・配達飲食サービス業 → ①フォーク、②スプーン、③デーブルナイフ、④マドラー、⑤飲食用ストロー

・宿泊業 → ⑥ヘアブラシ、⑦くし、⑧かみそり、⑨シャワーキャップ、⑩歯ブラシ

・各種商品小売業(無店舗のものを含む)/・洗濯業 → ⑪衣類用ハンガー/・衣類用カバー

 

 最後に、プラスチック資源循環促進法での各主体の役割をご紹介します。

<消費者は>

①プラスチック使用製品の使用の合理化によりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制すること

②事業者及び市町村双方の回収ルートに適した分別排出すること

③認定プラスチック使用製品を使用することに努める

<市町村は>

家庭から排出されるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集、再商品化その他の国の施策に準じてプラスチックに係る資源循環の促進等に必要な措置を講じるように努める

<都道府県は>

市町村がその責務を十分に果たすために必要な技術的援助その他の国の施策に準じてプラスチックに係る資源循環の促進等に必要な措置を講じるように努める

<国は>

プラスチックに係る資源循環の促進等を図るため、必要な資金の確保、情報収集/整理及び活用、研究開発の推進及びその成果の普及、教育活動、広報活動を通じた国民の理解醸成及び協力の要請などの措置を講ずるよう努める

<事業者は>

①プラスチック使用製品設計に即してプラスチック使用製品を設計すること

②プラスチック使用製品の使用の合理化のために業種や業態の実態に応じて有効な取組みを選択し、当該取組を行うことによりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制すること

③自ら製造/販売したプラスチック使用製品の自主回収/再資源化を率先して行うこと

④排出事業者としてプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等を実施することに努める

 

以上、プラスチック資源循環促進法の目的や背景などでした。また、世の中のサーキュラーエコノミへの移行として、『G20大阪ブルーオーシャンビジョン』による新たな海洋汚染ゼロの世界の実現、『2050年カーボンニュートラル』による温室効果ガス排出量を全体としてゼロにする、『プラスチック資源循環戦略』によるマイルストーンの達成は、これからの時代における<環境・経済・社会の三方よし>を実現しようとしています

 

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