食品リサイクル法(背景や目的など、そして、食品ロス)【船井総研:環境・廃棄物コンサルティング | 船井総合研究所コラム:最新☆産業廃棄物処分・収集運搬/一般廃棄物(塵芥、し尿汲取り浄化槽)/特別管理、再生資源業の経営支援

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食品リサイクル法(背景や目的など、そして、食品ロス)【船井総研:環境・廃棄物コンサルティングコラム】東新一

食品リサイクル法(背景や目的など、そして、食品ロス)

 前々回から『資源有効利用促進法』の流れをくむ、個別物品の特性に応じた規制の背景や目的などをご紹介しています。今回は『食品リサイクル法』、正式名称は『食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律』です。

以前のコラムでご紹介しました容器包装リサイクル法(1995年制定)、家電リサイクル法(1998年制定)、建設リサイクル法(2000年制定)の後、2001年に同法は制定されました。

 

<食品リサイクル法>

 食品リサイクル法とは、食品関連業(メーカーや卸、小売・飲食店など)に対し、食品循環資源の再生利用等を促進した法律です。なお、「食品循環資源」「再生利用」「再生利用等」とは以下のとおりです。

・食品循環資源:食品廃棄物であって、飼料/肥料等の原材料となる等有用なもの

・再生利用:食品循環資源を飼料/肥料/炭化の過程を経て製造される燃料及び還元剤/油脂及び油脂製品/エタノール/メタンとして利用し、または利用する者に譲渡すること

・再生利用等:発生抑制、再生利用、熱回収、減量(乾燥/脱水/発酵/炭化)

 少し補足しますと、食品リサイクル法の目的は、食品加工残渣や食べ残し等の食品廃棄物等について、その再生利用や発生抑制、減量を促進することで、食品に係る資源の有効利用と食品廃棄物の排出抑制を図ろうとするものです。

 そのため、食品関連業、国/地方公共団体、家庭/個人に食品循環資源の再生利用等の促進に関わる各主体に対し、その責務を定め、事業活動に伴って食品廃棄物等を発生させる食品メーカーや卸、小売・飲食店業等には、一定の基準に基づいた具体的な食品循環資源の再生利用の実施を求めています。

 なお、同法の目的は第一条で次のように示されています。

『この法律は、食品循環資源の再生利用及び熱回収並びに食品廃棄物等の発生の抑制及び減量に関し基本的な事項を定めるとともに、食品関連事業者による食品循環資源の再生利用を促進するための措置を講ずることにより、食品に係る資源の有効な利用の確保及び食品に係る廃棄物の排出の抑制を図るとともに、食品の製造等の事業の健全な発展を促進し、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする』

 続いて、食品リサイクル法の制定の背景ですが、1985年の世界会議(フィラハ会議)をきっかけに、地球温暖化やオゾン層破壊等が取り上げられ、環境問題に対応していくことは、人類の持続的な発展を図っていく上での重要課題になりました。とくに、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会構造を背景とした廃棄物は処理過程で発生するダイオキシン、最終処分場の残余年・ひっ迫問題、また、地球の限りある資源の有効利用という点からも問題があり、循環型社会構築のための基本法というべき「循環型社会形成推進基本法」が成立するとともに、その理念を具体化する個別リサイクル法のひとつとして食品リサイクル法が制定されました。

 そもそも、食品リサイクル法の対象となる食品廃棄物ですが、それは「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分かれて存在しています。

・一般廃棄物:食品が食用に供された後、食用に供されずに廃棄されたもので、食品流通(流通段階)では、売れ残り、外食や家庭(消費段階)では、調理くず・食べ残し 等

・産業廃棄物:食品製造/加工業の調理過程において副次的に得られた物品のうち食用に供されないもので、食品製造(製造段階)では、動植性残渣 等

 また、食品循環資源の再生利用等を促進するには、一般消費者/事業者/国/地方公共団体等がしっかりと取組むことが重要で、同法では各主体に以下のような責務を定めています。
◆事業者及び消費者の責務:食品の購入又は調理方法の改善により食品廃棄物等の発生の抑制に努めるとともに、再生利用により得られた製品の利用等に努めること。
◆国の責務:①再生利用等を促進するため、必要な資金の確保等とともに、情報の収集活用や研究開発の推進その他必要な措置を講ずるよう努めること。②教育活動、広報活動等を通じて国民の理解と協力を求めるよう努めること。

◆地方公共団体の責務:区域の経済的社会的条件に応じて再生利用等を促進するよう努めること。

 前述してきましたように、同法では再生利用等を促進することが重要で、食品事業者に求める再生利用や措置等について以下のように示しています。

<食品関連事業者による再生利用等の実施>

 ①食品関連事業者は、主務大臣が定める判断の基準となるべき事項に従い、再生利用等に取り組む。判断の基準となるべき事項は、再生利用等の実施の原則、食品循環資源の再生利用等の実施目標、発生抑制方法、特定肥飼料等の製造基準等について定める。※ここで定める目標とは、個々の食品関連事業者が取り組むべき目標

 ②食品廃棄物等を多量発生させる食品関連事業者(多量発生事業者)は、毎年度、食品廃棄物等の発生量や再生利用等の取組状況を主務大臣に報告しなければならない。

 ③主務大臣は、食品関連事業者に対し、必要があると認めるときは、指導、助言できる。

 ④主務大臣は、再生利用等が基準より著しく不十分と認めるときは、多量発生事業者に対し、勧告、公表及び命令できる。

<再生利用を促進するための措置>

 ①食品循環資源の肥飼料化等を行う事業者についての登録制度を設け、委託による再生利用を促進。この場合、廃棄物処理法の特例等(運搬先の許可不要、料金の上限規制をやめ事前の届出制を採用、差別的取扱の禁止)及び肥料取締法・飼料安全法の特例(製造・販売の届出不要)を講ずる。

 ②食品関連事業者が、肥飼料等製造業者及び農林漁業者等と共同して、食品関連事業者による農畜水産物等の利用の確保までを含む再生利用事業計画を作成、認定を受ける仕組みを設け、計画的な再生利用を促進。この場合、廃棄物処理法の特例等(①の内容に加え、収集先の許可の許可不要)及び肥料取締法・飼料安全法の特例を講ずる。

 続いて、食品リサイクル法での目標ですが、業種別に再生利用等実施率が設定されています。これは、食品関連事業者に対して個別に義務づけるものではなく、その業種全体での達成を目指す目標になっています。それを2019年と2024年でみますと以下のとおりです。

 <2019年度までの再生利用等実施率の目標>

 2015年7月に公表された基本方針では、2019年度までに業種全体で食品製造業は95%、食品卸売業は70%、食品小売業は55%、外食産業は50%を達成するよう目標が設定されています。 
 <2024年度までの再生利用等実施率の目標>
 2019年7月に公表された新しい基本方針では、2024年度までに業種全体で食品製造業は95%、食品卸売業は75%、食品小売業は60%、外食産業は50%を達成するよう目標が設定されています。 

 なお、食品関連事業者は、毎年度、事業者ごとに設定されたその年度の基準実施率を上回ることを求められており、その再生利用等実施率の計算式と基準実施率は以下のとおりです。
◆再生利用等実施率 = その年度の(発生抑制量+再生利用量+熱回収量×0.95※+減量量) ÷ その年度の(発生抑制量+発生量)

◆基準実施率= 前年度の基準実施率+前年度の基準実施率に応じた増加ポイント

 これは2008年からスタートされ、再生利用等実施率が20%未満の場合は、20%として基準実施率を計算されます。 

 2015年9月、国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(12.3)によりますと、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」とあります。

 また、2019年の食品リサイクル法の新たな基本方針の策定と食品ロス削減推進法では、事業系食品ロスを2000年度比で2030年度までに半減させるという目標が設定されました。つまり、2000年時点で547万トン(全体の食品ロス量は980万トン)だった事業系食品ロス量を、2030年度までに273万トンに減らすということです。2021年の事業系食品ロスは279万トンでしたので、目標達成まであと6万トンの削減が必要です。家庭系食品ロスも、2019年公表「第四次循環型社会形成推進基本計画」において事業系食品ロス同様に半減目標が設定されています。2000年時点で433万トン(全体の食品ロス量は980万トン)だった家庭系食品ロス量を、2030年度までに216万トンに減らすということです。2021年の家庭系食品ロスは244万トンでしたので、目標達成まであと28万トンの削減が必要です。

 以上、食品リサイクル法の目的や背景、そして、食品ロスについてでした。今後の食品ロスの削減には、「一般消費者」「食品の生産・製造・販売等に携わる事業者」「国・地方公共団体」それぞれがしっかりと意識し合って上手く実現できるように、以下のような行動が出来るといいですね!如何でしょうか!?

◆「一般消費者」

・買物前に家の食材をチェックしよう

・定期的に冷蔵庫の在庫管理しよう

・料理は食べきれる量にしよう 等

「食品の生産・製造・販売等に携わる事業者」

・規格外や未利用の農林水産物の有効活用

・賞味期限の延長

・季節商品や特別商品の予約販売

・値引きなどによる売り切り

・外食などの小盛メニュー導入や持ち帰り対応 等

「国・地方公共団体」

・食品ロス削減の施策推進

・災害時用備蓄食料の有効活用

・主催イベントでの食品ロスの削減 等

 

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