日本の、世界の、食の常識を超えていく。 -11ページ目
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執着心

私が文学部哲学科の卒業論文に選んだテーマは「人生論」。そこで述べたかったことは「執着心ある者こそが願望を成し遂げる」ということだった。


本日、ある青年を面接した。年齢は20代半ば。4年程度のサラリーマン生活に終止符を打ち、独立の夢を果たすために外食企業で働きたい。外食は大学時代のアルバイト経験しかないが夢を果たすためにどんな労苦も厭わない、と彼は言う。私は自分のキャリアと重なる面を感じ、興味を持った。しかし、彼の口からついて出てくる質問は「待遇は?」「福利厚生は?」。挙句の果てに「最近結婚したので前職を考慮した給料が欲しい」と言う。私は閉口し、彼に転職を考え直すよう提案した。


なぜ何の経験もないのに最初から何かを求めるのだろうか?順序が逆なのではないだろうか?地べたを這いつくばってでも、泥水を舐めてでも修行し独立の夢を果たそうとなぜ思えないのだろうか?このような覚悟では彼を採用したとしても遅かれ早かれ辞めてしまうだろう。


私もまだまだ勉強の身であるし、自分が苦労を重ねて社長を務めているとは思っていない。むしろ修行時代も含めて楽しい思い出ばかりだ。しかしもちろん悔しい思い出も沢山ある。ワタミの渡邊美樹氏が佐川急便のセールスドライバーのときに名づけられたあだ名が「大卒」「明治」だったように、私も修行時代は恥ずかしいあだ名をつけられ、大卒を理由に怒鳴られた。それでも夢の実現のために耐えられた。それは自分なりの夢への執着心だった。


たぶん彼はまだ自分の中でその思いを整理ができていなかったのかもしれない。これから社会の荒波に揉まれ一皮も二皮も剥けて行くだろう。今日の経験を糧に、彼が真なる「執着心」を獲得することを私は願ってやまない。

雷と梅雨空の雨

「ビジネスの成功のためには(ボウリングで言うところの)センターピンを探すことだ!」


今でも忘れもしない。5年ほど前、年商1000億を超え破竹の勢いで成長を続けていたグッドウィルCEO(当時)折口雅博氏はそう語った。ジュリアナ、ベルファーレを立て続けに成功させた氏はその成功の秘訣を「ディスコビジネスを成功させるためのセンターピンは、いつも人が一杯なこと。さくらでもなんでもよいからいつもに満員にすることが成功の秘訣だった。」と語り、前出の成功哲学を披露した。


なるほどと思った。しかし、さくらでも何でも良いという部分は疑問を感じたし、さらにその後披露した成功哲学にも違和感を感じた。

それが「ビジネス7割の法則」

多くの人がビジネスを9割、10割完成させてから次の展開へ進もうと考える。しかしこのスピードが求められる時代にはそれは間違いであるり、7割完成させたらすぐに次のビジネスに進むべきだ。7割でビジネスを進めて、もし失敗したら、と考えるのは誤りであり、たとえ失敗したとしてもそれは「雷に打たれるようなもの」だ。気にしていたら外を出歩けない(ビジネスを展開できない)、と論じた。


そんな折口氏の会社、今は皆さんご存じの通りだ。度重なる法令違反。色々な原因があるのであろうが、私は完成していない残り3割に非常に重要な部分が残っていたのではないかという気がする。


果たして氏が打たれたものは「雷」であったのだろうか。もしかするとこの失敗は「梅雨空の雨」に打たれるほど必然なことであったのかもしれない。



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