マジすか学園GX☆プリズン編☆
誰かが言った。
『信じる者は救われる』と。
また、誰かが言った。
『信じる者ほど救われない』と。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
人里離れた
山奥にある
有刺鉄線の巻かれた高い塀に囲まれた施設。
ここは、地図にない場所。
表向きは
少年刑務所(プリズン)ではあるが、実は──。
人間本来の持つ能力──異能(チカラ)を、最大限に引き出すべく、
日々、能力開発という名の人体実験を繰り返す研究施設であった。毎日、独特のカリキュラムが組まれ、必要に応じて、痛みを伴う実験や薬物投与なども行われていた。異能(チカラ)無き者と見なされた場合、速やかに、排除される。
定期的に、喧嘩(バトル)訓練が行われ、負け続けた場合も、また同様であった。
素体は、主に暴行、傷害などの
罪を犯し
世間からも、また、家族からも見放された少女たち。
異能(チカラ)が無ければ、ここでは、生き抜くことは出来ない。
刑期は無期限。
少女たちは
未来を夢見て
闘い続けるほかなかった。
勝ち続ければ、自由になれるという言葉を信じて。
この日も、新たに、
高電圧のスタンガンが仕込まれた特殊警棒を腰にぶら下げた、強面の看守長に連れられ、黒髪ショートカットの少年のような少女が、入所してきた。茶系の作業着のような上下に、脱走防止用の腕輪。
長めの前髪が、鋭すぎる双眸を覆い隠す。
(『私じゃない!私は、何もしてない!』)
少女は、さほど広くもない
雑居房に通された。
「新入りだ!」
ガシャンとすぐに、扉が閉じられる。
部屋の中には、同じような服装をした四人の少女たちがいた。視線が、入り口に集中する。
その中の
お嬢様風のかわいらしい少女が、興味深げに近づいてきた。
「ねえ、名前は?」
「平手...ユリナ」
「そう、よろしくね。てちこ。わたしは、石森ニジカ。にじにじって、呼んでもいいよ」
フレンドリーなニジカに、
柄の悪そうな少女──織田ナナが、奥の方から、声をあげる。
「で、テメェは、ここ(プリズン)に来る前に、何やらかしたんだ?エンコーか?クスリか?」
「............」
「ま、まあ、いいじゃん。そういうことは、言いたくなったときに、言ってくれれば、ね」
「相変わらず、甘々だねー。ニジカは」
「わたしたちは、チームなんだから。切磋琢磨して、異能(チカラ)を伸ばしていかなきゃ、この先、勝ち残っていけないでしょ。実際、リーチかかってるわけだし...」
喧嘩(バトル)──
定期的に、行われる実験のひとつ。
チームは、基本的に五人編成で、同レベルのチーム同士の喧嘩(バトル)が組まれることになっている。1対1の対決で、どちらかが、負けを認めるか、意識を失うまで続けられる。三回連続で、負けるようなことがあれば、排除対象とされる。
「ちなみに、わたしの異能(チカラ)は、『語るなら未来を』──。そう、何を隠そう、未来が視えちゃうんだよ」
石森ニジカ。能力名『語るなら未来を』──。
「と言っても、1秒先しか視えねぇんだけどな。まったく、意味ねーし」
「うざッ!そういうオダナナの異能(チカラ)──『キミガイナイ』だって、瞬間移動とか言って、1メートルくらいしか移動出来ないくせに!普通に動いたほうが早いじゃん!」
「ちっ!これからもっと、距離伸ばしていくんだよ!うっせーな!」
「わたしだって、これから、もっと、視える時間、増やしていくんだから!」
「まあまあまあまあ。やめなよ。新入りの前で」
人懐こい顔のポニーテールの少女が、二人の間に割って入り、制止する。
「あ!この子は、今泉ユイ。ずーみんの異能(チカラ)は、『チューニング』って言って、相手の攻撃を強めたり、弱めたり出来るんだ」
「二人と同じで、まだ、そんなに、コントロール出来ないんだけどね」
ずっと
話を聞いていた
ツインテールに、小学生のような風貌の少女──原田アオイが、おずおずと口を開いた。
「それでも、三人は、まだいいよ。わたしなんて、半年も経つのに、まだ、異能(チカラ)が、発現してないんだから。このままだと、『ゼロ』の烙印を押されて...、リカみたいに...」
「だ、大丈夫だよ!アオイは。絶対に、みんな、異能(チカラ)は、持ってるはずなんだから!」
あわてて、フォローするニジカ。
「ありがとう。にじにじ。わたし、頑張る!」
「リカ...?」
平手ユリナが、その名前に反応する。
「尾関リカ...。この部屋にいたメンバーなんだけど、異能(チカラ)は、発現しないし、喧嘩(バトル)も負け続きで...、もう、見込みがないってことで、連れていかれちゃったんだ...」
「今頃、どうなってることだか...な」
おそらく、皆、わかっていることだった。異能(チカラ)無き者が、ここ(プリズン)にいる意味はない。
「それじゃ、新メンバーも入ったことだし、新しくチーム名でも考えようか。いままでのチーム名が良くなかったんだよ。きっと」
今泉ユイが、明るく、雰囲気を変えようとしたとき。
カタンと。
部屋のなかに、
真っ赤な封筒が、投げ入れられた。
新入りの平手に、織田ナナが、説明する。
「招集礼状だ。次の喧嘩(バトル)の対戦日と対戦相手のチーム名が書いてある」
ニジカが、そっと封筒を拾いあげ、中身を広げた。
「まさか、新入りのデビュー戦が、チームMARRYじゃねぇだろうな?」
織田ナナが、鼻で笑う。
いま、現在、連戦連勝、最強の名を欲しいままにしてるチームが、チームMARRYだ。
志田マナカの M。
守屋アカネの A。
渡邊 リサのR。
渡辺リカの R。
菅井 ユウカのY。
それぞれの頭文字を取って、チームMARRY。メンバー全員が、恐ろしい異能(チカラ)を有し、それを充分に使いこなしていた。
ニジカたちとは、
実力に、雲泥の差があり、まず、ぶつかるということはなかった。
しかし。
ニジカのこわばった表情を見て、ユイが、訊いた。
「まさか...?」
「その、『まさか』みたい...」
そこには、連戦連勝中の最強チーム、
“チームMARRY ”の文字があった。
所長室──
この場に似つかわしくない
妖艶ともいえる女性──所長に、看守長が、尋ねる。
「所長、本当に、よろしいのですか?あの落ちこぼれのチームポンコツ共に、チームMARRYをぶつけるなんて、危険すぎますよ...下手をすると...」
「いいのよ。この世は、弱肉強食。強い者だけが、勝ち残る。遅かれ早かれ、ね」
フッ...と、自嘲気味に、パイプの煙を吐き出しながら。
「そう...。この世界には、愛なんてないのだから...」
『信じる者は救われる』と。
また、誰かが言った。
『信じる者ほど救われない』と。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
人里離れた
山奥にある
有刺鉄線の巻かれた高い塀に囲まれた施設。
ここは、地図にない場所。
表向きは
少年刑務所(プリズン)ではあるが、実は──。
人間本来の持つ能力──異能(チカラ)を、最大限に引き出すべく、
日々、能力開発という名の人体実験を繰り返す研究施設であった。毎日、独特のカリキュラムが組まれ、必要に応じて、痛みを伴う実験や薬物投与なども行われていた。異能(チカラ)無き者と見なされた場合、速やかに、排除される。
定期的に、喧嘩(バトル)訓練が行われ、負け続けた場合も、また同様であった。
素体は、主に暴行、傷害などの
罪を犯し
世間からも、また、家族からも見放された少女たち。
異能(チカラ)が無ければ、ここでは、生き抜くことは出来ない。
刑期は無期限。
少女たちは
未来を夢見て
闘い続けるほかなかった。
勝ち続ければ、自由になれるという言葉を信じて。
この日も、新たに、
高電圧のスタンガンが仕込まれた特殊警棒を腰にぶら下げた、強面の看守長に連れられ、黒髪ショートカットの少年のような少女が、入所してきた。茶系の作業着のような上下に、脱走防止用の腕輪。
長めの前髪が、鋭すぎる双眸を覆い隠す。
(『私じゃない!私は、何もしてない!』)
少女は、さほど広くもない
雑居房に通された。
「新入りだ!」
ガシャンとすぐに、扉が閉じられる。
部屋の中には、同じような服装をした四人の少女たちがいた。視線が、入り口に集中する。
その中の
お嬢様風のかわいらしい少女が、興味深げに近づいてきた。
「ねえ、名前は?」
「平手...ユリナ」
「そう、よろしくね。てちこ。わたしは、石森ニジカ。にじにじって、呼んでもいいよ」
フレンドリーなニジカに、
柄の悪そうな少女──織田ナナが、奥の方から、声をあげる。
「で、テメェは、ここ(プリズン)に来る前に、何やらかしたんだ?エンコーか?クスリか?」
「............」
「ま、まあ、いいじゃん。そういうことは、言いたくなったときに、言ってくれれば、ね」
「相変わらず、甘々だねー。ニジカは」
「わたしたちは、チームなんだから。切磋琢磨して、異能(チカラ)を伸ばしていかなきゃ、この先、勝ち残っていけないでしょ。実際、リーチかかってるわけだし...」
喧嘩(バトル)──
定期的に、行われる実験のひとつ。
チームは、基本的に五人編成で、同レベルのチーム同士の喧嘩(バトル)が組まれることになっている。1対1の対決で、どちらかが、負けを認めるか、意識を失うまで続けられる。三回連続で、負けるようなことがあれば、排除対象とされる。
「ちなみに、わたしの異能(チカラ)は、『語るなら未来を』──。そう、何を隠そう、未来が視えちゃうんだよ」
石森ニジカ。能力名『語るなら未来を』──。
「と言っても、1秒先しか視えねぇんだけどな。まったく、意味ねーし」
「うざッ!そういうオダナナの異能(チカラ)──『キミガイナイ』だって、瞬間移動とか言って、1メートルくらいしか移動出来ないくせに!普通に動いたほうが早いじゃん!」
「ちっ!これからもっと、距離伸ばしていくんだよ!うっせーな!」
「わたしだって、これから、もっと、視える時間、増やしていくんだから!」
「まあまあまあまあ。やめなよ。新入りの前で」
人懐こい顔のポニーテールの少女が、二人の間に割って入り、制止する。
「あ!この子は、今泉ユイ。ずーみんの異能(チカラ)は、『チューニング』って言って、相手の攻撃を強めたり、弱めたり出来るんだ」
「二人と同じで、まだ、そんなに、コントロール出来ないんだけどね」
ずっと
話を聞いていた
ツインテールに、小学生のような風貌の少女──原田アオイが、おずおずと口を開いた。
「それでも、三人は、まだいいよ。わたしなんて、半年も経つのに、まだ、異能(チカラ)が、発現してないんだから。このままだと、『ゼロ』の烙印を押されて...、リカみたいに...」
「だ、大丈夫だよ!アオイは。絶対に、みんな、異能(チカラ)は、持ってるはずなんだから!」
あわてて、フォローするニジカ。
「ありがとう。にじにじ。わたし、頑張る!」
「リカ...?」
平手ユリナが、その名前に反応する。
「尾関リカ...。この部屋にいたメンバーなんだけど、異能(チカラ)は、発現しないし、喧嘩(バトル)も負け続きで...、もう、見込みがないってことで、連れていかれちゃったんだ...」
「今頃、どうなってることだか...な」
おそらく、皆、わかっていることだった。異能(チカラ)無き者が、ここ(プリズン)にいる意味はない。
「それじゃ、新メンバーも入ったことだし、新しくチーム名でも考えようか。いままでのチーム名が良くなかったんだよ。きっと」
今泉ユイが、明るく、雰囲気を変えようとしたとき。
カタンと。
部屋のなかに、
真っ赤な封筒が、投げ入れられた。
新入りの平手に、織田ナナが、説明する。
「招集礼状だ。次の喧嘩(バトル)の対戦日と対戦相手のチーム名が書いてある」
ニジカが、そっと封筒を拾いあげ、中身を広げた。
「まさか、新入りのデビュー戦が、チームMARRYじゃねぇだろうな?」
織田ナナが、鼻で笑う。
いま、現在、連戦連勝、最強の名を欲しいままにしてるチームが、チームMARRYだ。
志田マナカの M。
守屋アカネの A。
渡邊 リサのR。
渡辺リカの R。
菅井 ユウカのY。
それぞれの頭文字を取って、チームMARRY。メンバー全員が、恐ろしい異能(チカラ)を有し、それを充分に使いこなしていた。
ニジカたちとは、
実力に、雲泥の差があり、まず、ぶつかるということはなかった。
しかし。
ニジカのこわばった表情を見て、ユイが、訊いた。
「まさか...?」
「その、『まさか』みたい...」
そこには、連戦連勝中の最強チーム、
“チームMARRY ”の文字があった。
所長室──
この場に似つかわしくない
妖艶ともいえる女性──所長に、看守長が、尋ねる。
「所長、本当に、よろしいのですか?あの落ちこぼれのチームポンコツ共に、チームMARRYをぶつけるなんて、危険すぎますよ...下手をすると...」
「いいのよ。この世は、弱肉強食。強い者だけが、勝ち残る。遅かれ早かれ、ね」
フッ...と、自嘲気味に、パイプの煙を吐き出しながら。
「そう...。この世界には、愛なんてないのだから...」
マジすか学園GX☆#3ー4☆
「欅女学園といえば、たしか、今年度から新設された私立高だったな。それで、先程の言葉は、聞き捨てることはできないが...、いったい、どういう意味だ?」
緊張感を保ちつつ、秦サワコが問う。
「すぐにわかる、よ」
長濱ねるは、なんとか、起き上がろうとしている金子シオリのほうに近づいていった。ねるの闘気は、はっきりと発散されていたが、金子からの攻撃は、なかった。
(金子の『絶対防御』が、発現しない?)
無意識下においても、敵意に反応し、攻撃を加える、金子シオリの『絶対防御』が──。
ねるが、おもむろに、拳を振り上げる。
直後。
ノーモーションから
秦サワコのスピード感のある飛び道具──硬質なチェスの駒が、繰り出された。百発百中の腕を持つサワコであった。
が、
その駒は、長濱ねるに当たることなく、あさっての方角に、飛んでいってしまった。
(おかしい...?狙いが...、定まらない...)
この距離で外すはずがないのに。
「なぜ...?」
「不協和音...」
ねるが呟く。
長濱ねるの異能(チカラ)。
能力名『不協和音』──。相手の平衡感覚に作用を及ぼす能力といわれている。
「これが、僕の異能(チカラ)だよ。もう、どんな攻撃も、当たらない」
「そんなことが...」
ねるの拳の前に、あっさりと、金子シオリが沈む。
「世界は、歪んでるんだ。だから、正さないと。僕たちが前にいたところは、それは、それは、酷いものだったよ...」
「...『僕たち』だと...?君たちは...、いったい...」
「僕たちは、無作為に集められたんだ...。“プリズン”とは、名ばかりの...、そこは、人体実験を繰り返す、能力開発研究所だったんだよ」
視線を地面に落とす。
「まさに、生き地獄だったよ...」
(『異能(チカラ)なき者は、ここでは、生き残ることは出来ない!弱者には死あるのみ。やれ!仲間など関係ない!』
『僕は嫌だ!』)
サワコが、
今度は、チェスの駒を数個、投げつけてみた。
しかし。結果は、同じだった。
あまりにも、かけはなれた方角へ飛んでいく駒たち。
近づいてくる救急車のサイレンの音。
「ここじゃ、落ち着かないし、場所、変えようか?」
そう言って、廃墟と化した、アンダーガールズ新宿本部ビルへと、長濱ねるは、規制線を乗り越え、入っていった。
マジすか学園GX☆#3ー3☆
新宿──
岩田カレン、そして、何者かによって操られた旧友であり戦友でもあった平田リカコの二人に、左右から、一方的に攻めこまれ続けるアンダーガールズ、一番隊隊長、秦サワコ。ショートカットの前髪と深紅の長い特攻服が、激しく揺れていた。
「残念だったな。二対二どころか、二対一になるとはな」
カレンの視線が、早々に、カレンに蹴り飛ばされ、口から血を流し、仰向けになって倒れている金子シオリに向けられた。
「彼女は、争いにはむいていない。それに、わたしの大切な仲間を操り、闘わせるような卑怯者のいる組織に、負けるわけにはいかない。わたしひとりで充分すぎる程だ!」
「強がりをッ!」
サワコは、必死に防御しつつ、反撃の糸口を探っていた。出来うるなら、平田をもう殴りたくはない。
平田リカコの攻撃と岩田カレンの攻撃。
どちらも鋭いものではあったが、お互いを意識した連携攻撃があるわけではないので、そこに、なんとか、つけ入る隙を見出そうとしていた。
そんな最中、サワコは、
カレンの動きに、どこか言いようのない違和感を覚えていた。
(何かが...違う...)
「考え事か?余裕だな!」
カレンの鋭い蹴りが、サワコの脚にきまり、バランスを崩され、
続いて、無言のまま、平田の拳が、サワコの顔面を痛打する。
倒れこむサワコは、転がるように、距離をとった。二人を同時に視界にとらえることが出来るように。
カレンは、すぐに、平田からはなれるように動いた。逆に、平田は、脇目もふらず、一直線、サワコに迫ってくる。
そのとき。
「金子ッ!」
先程まで倒れていた金子シオリが、真横から飛び出し、
平田の両脚を抱えるように、抑えこんだ。しかし、小柄な金子は、平田のパワーに、地面の上をズルズルと引き摺られることになった。しかし、それでも、金子は、決して、腕をはなそうとはしなかった。
「......、もう...、やめるでしゅ...、これ以上...、どっちも...、傷ついてほしくない...」
深紅の特攻服が、ボロボロに破け、ところどころ、肌が露出していても──。
「しぶといな、死に損ないのガキんちょが!弱いくせに」
「貴様には、わからないだろう。これが、アンダーガールズの絆だ。あまり、隊長職を、なめてもらっては、困る」
不用意に
近づいてきたカレンに、
そう言うと、サワコの瞳が、真紅に煌めいたように、見えた。
「消えろ!」
一瞬の後。
サワコの
視界から、岩田カレンは消えていた。サワコの神速の拳によって。大きく吹き飛ばされて──。
うずくまる岩田カレンの右の腕が、落下の衝撃で、あらぬ方向に曲がっていた。
にもかかわらず──。
すぐに
何事もなかったかのように立ち上がるカレン。激痛にみまわれたことを感じさせることもなく、顔面にも深い傷を負いながらも、うつろな目で、サワコのほうへ向かってきた。
「やはり...、そういうことか」
サワコは、確信した。
「平田だけでなく、彼女もまた、肉体の限界を超えるよう、洗脳されていたとはな」
死の軍団。完全に意識を飛ばしても、何度でも起き上がってくる。
こうなっては、もう、どうすることも出来ないのか。そう、サワコが考えていると──、
不意に、カレンの動きが止まった。
平田の動きも止まっていた。
そのまま、ガクンと崩れ落ちる二人。
同時刻。
サドによって、洗脳の首謀者である伊豆田リナを止めた功績を、サワコがこの場で、知るよしもないことだった。
平田とカレンの
意識は、すぐには、戻ることはなかった。洗脳のレベルや当人の資質などの違いに影響されるのかも知れない。
とりあえず、
サワコと金子が、ホッとしたのもつかの間。
パチパチと、乾いた拍手とともに、あらわれたブルーグリーンの軍服のような制服。明るい髪色の可愛らしい少女。
「さすが、アンダーガールズ、一番隊隊長だね」
「キミは?」
「でも、アンダーガールズは、もう、前時代の遺物になっちゃうんだ。僕たちによって、ね」
名乗る。
「そう、僕は、欅女学園一年C組、長濱ねる」
能力名『不協和音』──。
岩田カレン、そして、何者かによって操られた旧友であり戦友でもあった平田リカコの二人に、左右から、一方的に攻めこまれ続けるアンダーガールズ、一番隊隊長、秦サワコ。ショートカットの前髪と深紅の長い特攻服が、激しく揺れていた。
「残念だったな。二対二どころか、二対一になるとはな」
カレンの視線が、早々に、カレンに蹴り飛ばされ、口から血を流し、仰向けになって倒れている金子シオリに向けられた。
「彼女は、争いにはむいていない。それに、わたしの大切な仲間を操り、闘わせるような卑怯者のいる組織に、負けるわけにはいかない。わたしひとりで充分すぎる程だ!」
「強がりをッ!」
サワコは、必死に防御しつつ、反撃の糸口を探っていた。出来うるなら、平田をもう殴りたくはない。
平田リカコの攻撃と岩田カレンの攻撃。
どちらも鋭いものではあったが、お互いを意識した連携攻撃があるわけではないので、そこに、なんとか、つけ入る隙を見出そうとしていた。
そんな最中、サワコは、
カレンの動きに、どこか言いようのない違和感を覚えていた。
(何かが...違う...)
「考え事か?余裕だな!」
カレンの鋭い蹴りが、サワコの脚にきまり、バランスを崩され、
続いて、無言のまま、平田の拳が、サワコの顔面を痛打する。
倒れこむサワコは、転がるように、距離をとった。二人を同時に視界にとらえることが出来るように。
カレンは、すぐに、平田からはなれるように動いた。逆に、平田は、脇目もふらず、一直線、サワコに迫ってくる。
そのとき。
「金子ッ!」
先程まで倒れていた金子シオリが、真横から飛び出し、
平田の両脚を抱えるように、抑えこんだ。しかし、小柄な金子は、平田のパワーに、地面の上をズルズルと引き摺られることになった。しかし、それでも、金子は、決して、腕をはなそうとはしなかった。
「......、もう...、やめるでしゅ...、これ以上...、どっちも...、傷ついてほしくない...」
深紅の特攻服が、ボロボロに破け、ところどころ、肌が露出していても──。
「しぶといな、死に損ないのガキんちょが!弱いくせに」
「貴様には、わからないだろう。これが、アンダーガールズの絆だ。あまり、隊長職を、なめてもらっては、困る」
不用意に
近づいてきたカレンに、
そう言うと、サワコの瞳が、真紅に煌めいたように、見えた。
「消えろ!」
一瞬の後。
サワコの
視界から、岩田カレンは消えていた。サワコの神速の拳によって。大きく吹き飛ばされて──。
うずくまる岩田カレンの右の腕が、落下の衝撃で、あらぬ方向に曲がっていた。
にもかかわらず──。
すぐに
何事もなかったかのように立ち上がるカレン。激痛にみまわれたことを感じさせることもなく、顔面にも深い傷を負いながらも、うつろな目で、サワコのほうへ向かってきた。
「やはり...、そういうことか」
サワコは、確信した。
「平田だけでなく、彼女もまた、肉体の限界を超えるよう、洗脳されていたとはな」
死の軍団。完全に意識を飛ばしても、何度でも起き上がってくる。
こうなっては、もう、どうすることも出来ないのか。そう、サワコが考えていると──、
不意に、カレンの動きが止まった。
平田の動きも止まっていた。
そのまま、ガクンと崩れ落ちる二人。
同時刻。
サドによって、洗脳の首謀者である伊豆田リナを止めた功績を、サワコがこの場で、知るよしもないことだった。
平田とカレンの
意識は、すぐには、戻ることはなかった。洗脳のレベルや当人の資質などの違いに影響されるのかも知れない。
とりあえず、
サワコと金子が、ホッとしたのもつかの間。
パチパチと、乾いた拍手とともに、あらわれたブルーグリーンの軍服のような制服。明るい髪色の可愛らしい少女。
「さすが、アンダーガールズ、一番隊隊長だね」
「キミは?」
「でも、アンダーガールズは、もう、前時代の遺物になっちゃうんだ。僕たちによって、ね」
名乗る。
「そう、僕は、欅女学園一年C組、長濱ねる」
能力名『不協和音』──。