AKB48G☆マジすか学園☆乃木坂46☆欅坂46☆櫻坂46☆日向坂46☆好きな 「かつブログ☆」 -227ページ目

#5

前田の悲しい叫びは、曇天の空に吸い込まれた。
「マジだってよー。知らねーな」

宮澤は、仲間のほうに振り返って笑った。

「そうかよ…わかったよ…」

前田は、静かに高ぶる。青い炎のように。

「マジってやつを……教えてやるよ」

そっと、眼鏡をはずす前田。

「おお!教えてもらおうか!おらー!」

宮澤が、殴りかかる。
しかし、それほど、キレはない。前田が見切ることは造作もなかった。

「はあ、はあ…ちくしょう」

宮澤の拳は空を切るばかり。


傍で見ていたサヤは、何か違和感を感じていた。

前田が、パンチをかわし、右ストレートをきめる。

吹き飛ぶ宮澤。

「はあ…はあ…、だめだ!勝てねー」

宮澤は、地に這いつくばったまま、前田に土下座した。

「すまない!もう、マジ女を狙ったりしない。許してくれ」

前田は、戸惑いを隠せずにいた。

宮澤は、おもむろに立ち上がり、握手を求めてきた。前田の目の前に立つ宮澤。

一瞬、宮澤の目の奥が、妖しく光った。

「あぶない!あっちゃん!」

サヤが、宮澤と前田の間にすべりこむ。

「ぐあっ」

そのサヤが、短くうめき、ひざまずく。

「え?」

何が起こったのか、まったくわからない前田。

「ちっ!シブヤもトリゴヤもこの手で倒せたのに。邪魔しやがって!」

少し、距離を置く宮澤。
そのときー

「そこまでだ!宮澤!」


「誰だ?」

声のする
校門のほうを宮澤は見やった。

そこには、サドの姿があった。

そして、そのとなりには、
いつもの制服を着た

学ランの姿があった。

#5

マジすか女学園ー放課後。
3ーAの教室を出る二人。

「今日も行くんでっかー?あつ姐!」

「はい。やっぱり、気になりますからねー」

前田は、今日も、学ランのマンションに行ってみるつもりであった。だるまも、金魚のフンよろしく、ついて行く。


「なになにー?どこ行くんやー?」

二人の間に、強引に割り込むサヤ。

「なんや、お前!あつ姐に、くっつくんやないでえ!」

「いいやん!うちのあっちゃんやー」

と言って、前田の腕にからみつくサヤ。振りほどくわけにもいかず、されるがままの前田。

「はなさんかーい!」

だるまが、無理やり、引きはがそうとする。

そのときー

「!」

3階の窓から、校門に入ってくる人影が見えた。

「学ラン?」

言うやいなや、前田は走り出していた。

「あつ姐!」



校門前にあらわれた、矢場久根死天王、宮澤と、矢場久根女子校生10名。

さっそく、マジ女の生徒と、いざこざが始まった。

「おらー!お前ら、カスには、用はないんだよ!ラッパッパだせよ!」

宮澤も、矢場久根生も、マジ女の生徒たちを歯牙にもかけない。

と、そこへ、ラッパッパ部員の、昭和、アニメ、ライス、ジャンボの四人。

「ようやく、お出ましか!ラッパッパ!」

お前ら、下がってろ、と矢場久根の生徒を、制した。

「ラッパッパに何の用だ?学ラン!」

昭和が、口火をきる。

「学ラン……か」

含み笑いをしながら、昭和に近づく宮澤。

「ぐわ!」

昭和が、うめきをもらし倒れた。

後ろから、見ていたジャンボには、何が起こったのかわからなかった。
「な、なんだ?」
(右手が動いた気がするが、至近距離のパンチ?)

呆然とする、残された三人。

そこへー

「学ラン!」

前田が駆けつけた。

サヤもついてきた。だるまは、少し遅れて追いついた。

「学ラン!なにやっとるんやー!」

「うるせーんだよ!このブタが!」

着くやいなや
宮澤が、だるまにパンチを入れる。

「なっ!」

驚く前田。

だるまは、吹き飛んだ。

「どうして…お前…ほんとにあの学ランなのか?お前のマジは…お前のマジは、いったい、どこに行っちまったんだよー!」

前田が、悲痛な叫びをあげた。

#5

四年前ー


柏木ユキ、中学三年。まだ、ブラックと呼ばれる前のことだった。

そして、
阿部まりあ、中学二年。柏木ユキの後輩。

二人は
区内の中学を、手当たり次第にシメてまわっている評判のヤンキーであった。

この日は、九校目の中学をシメたところだった。

「はぁ…はぁ…やりましたね!柏木先輩。やっぱウチら最強ですね」

「阿部、まだまだ動きに無駄が多すぎる!死角に瞬時に入らなければ。そんなことでは、本物には勝てないぞ」

「ということは、次は、篠田のいるS中学ですね」

「ああ、やつは本物だ。気合い入れていけよ!」
記念すべき十校目を狙う話をしているところに、さわやかな少年があらわれた。

「お前ら、いつまでこんなケンカなんかやってんだよ!」

「兄さん!」

阿部まりあの二つ上の兄、阿部まことであった。妹とは違い、サッカーに熱中する高校一年のスポーツ少年だ。

「意味のないケンカばっかしやがって!柏木、お前は、おとなしくしてたら、かわいいんだから、おしゃれでもしろよ!」
「うるせーよ」

柏木は、聞き飽きたという表情で、首を振った。
「兄さん、また、ふられちゃったね」

妹に笑われる兄。

「うるせーな!あきらめないのが、おれの専売特許なんだよ!」

「あんまり、しつこくして、イエローカード出されないようにね」

このようなやりとりが、日常だった、そんなある日、あの事件は起こった。


***********

「矢場久根……だと?」
ブラックは、矢場久根死天王という言葉に反応した。

「向こうで、お世話になったひとが、いま、矢場久根の新総長になり、指揮をとっています。マジ女を殲滅するために」

「阿部…」

「わたしは昔のわたしではありません。あなた以上のスピードを身に付けました。そして、いまは、アルファという通り名を使っています」

アルファは、続けた。

「あの事件で…兄を…兄をあんな体にしたあなたを…

絶対に許さない!」

ブラックは、何も言えなかった。

「同じように、あなたの大切なひとを…あなたが慕うあのひとを…倒します!」

そして、そのあとはー、とだけ言い残し、アルファは去っていった。

「時は来た…のか」

残されたブラックは、胸の十字架を右手で掴み、ぎゅっと、ちからを込めた。