#9
「そこの騒がしい四人を早く黙らせなさい」
マサナが、側近の隊員二人に命令する。
前田の復活を願い、叫び続けている、だるま、学ラン、歌舞伎シスターズの四人は、手足が縛られたままの状態で、鉄パイプと木刀で殴りつけられた。
「そろそろ、救護班を三階に向かわせます。不幸な出来事になる前に…」
「待て!」
アカネが、珍しく、大声で、マサナを制す。
モニターでは、前田が倒れたままの状態である。
「何も変化は見えないようですが?」
「いや、オレには、わかる!」
そのとき、前田の右手が、動いた。
そしてー
ついにー
「やったー!」
「敦子ー!」
「前田が、前田が…」
「あづ姐ええ…」
額から流れる血と涙と鼻水が、入り混じった顔の だるま。
学ランも歌舞伎シスターズも、歓喜に震えた。
前田がー
立ちあがったのだ。
「もう、動くな。本当に死ぬぞ…」
カノンは、驚きを抑え、死地から蘇ってきた前田を、諭す。
「もうすぐ、救護班が来るはずだ。といっても、もう、聞こえてないのか…」
前田は、立ち上がりこそはしたが、そこからは、動きがなかった。
口の端がかすかに動くのが見えた。
「…みんなの声が…また…聞こえた…仲間の…声が…」
「なんだ?」
「…みんなも…いっしょに…闘ってる…オレひとりが…オレひとりが、寝てるわけにはいかねー…
マジ女は
いつだって…
マジなんだよ!!!」
前田の叫びは、覇気をまとい、大気を揺るがした。
(みなみ…アレを…使うよ…)
前田は、祈るように左手の“誓いのしるし”を見つめ、それをそっと外し、髪を後ろに、まとめた。
「前田…お前は、とことんバカだな…今度こそ、完全なる敗北を与えてやるよ」
カノンが、発勁のための構えをとった。いつでも、撃てる体勢だ。
どこにも逃げる場所などはない。
そのとき
前田は、走り出した。
カノンの持つ大砲に向かって。
まっすぐに。
マサナが、側近の隊員二人に命令する。
前田の復活を願い、叫び続けている、だるま、学ラン、歌舞伎シスターズの四人は、手足が縛られたままの状態で、鉄パイプと木刀で殴りつけられた。
「そろそろ、救護班を三階に向かわせます。不幸な出来事になる前に…」
「待て!」
アカネが、珍しく、大声で、マサナを制す。
モニターでは、前田が倒れたままの状態である。
「何も変化は見えないようですが?」
「いや、オレには、わかる!」
そのとき、前田の右手が、動いた。
そしてー
ついにー
「やったー!」
「敦子ー!」
「前田が、前田が…」
「あづ姐ええ…」
額から流れる血と涙と鼻水が、入り混じった顔の だるま。
学ランも歌舞伎シスターズも、歓喜に震えた。
前田がー
立ちあがったのだ。
「もう、動くな。本当に死ぬぞ…」
カノンは、驚きを抑え、死地から蘇ってきた前田を、諭す。
「もうすぐ、救護班が来るはずだ。といっても、もう、聞こえてないのか…」
前田は、立ち上がりこそはしたが、そこからは、動きがなかった。
口の端がかすかに動くのが見えた。
「…みんなの声が…また…聞こえた…仲間の…声が…」
「なんだ?」
「…みんなも…いっしょに…闘ってる…オレひとりが…オレひとりが、寝てるわけにはいかねー…
マジ女は
いつだって…
マジなんだよ!!!」
前田の叫びは、覇気をまとい、大気を揺るがした。
(みなみ…アレを…使うよ…)
前田は、祈るように左手の“誓いのしるし”を見つめ、それをそっと外し、髪を後ろに、まとめた。
「前田…お前は、とことんバカだな…今度こそ、完全なる敗北を与えてやるよ」
カノンが、発勁のための構えをとった。いつでも、撃てる体勢だ。
どこにも逃げる場所などはない。
そのとき
前田は、走り出した。
カノンの持つ大砲に向かって。
まっすぐに。
#9
前田敦子と高橋みなみ。
二人での、最後のケンカのあとー
河川敷で、みなみは、介護士になる決意を、前田に宣言するー
前田もいっしょに、勉強する約束をしたー
『何それ?』
みなみが、おもむろに、青と赤のリストバンドをとりだし、赤いほうを、前田に手渡した。Aというイニシャルが入っている。
『誓いのしるしだよ。ほら』
『つくったの?みなみが?はははは』
『何がおかしいんだよ!』
『だって、いきなり女の子っぽいことするから』
『女の子だっつーの!
それじゃ、明日から、一緒に勉強な!約束、忘れんなよ!』
前田は、“誓いのしるし”を左の手首に、通し、笑った。
『わかったよ』
『それとさ、前にも言ったけど、もし、やむを得ず、ケンカするようなことがあっても、あのパンチだけは、絶対、使うなよ。相手が、再起不能どころか、万が一ってことになるからな。そして、敦子自身のからだも…あのときみたいに…。あの左のパンチだけは…絶対…ヤバいから…』
『わかってるって。あのとき以来使ってないし。アレは…』
『そっか…でも…、もしかすると、使わなきゃいけないときってのが、いつか、来るかもしれない…』
『どういうとき?』
『それは…絶対に負けちゃいけないとき、それから、大切な仲間を守るとき、そして、自分自身を守るとき、かな』
『みなみの三箇条ってやつ?わかったよ。そういったとき以外は、この“誓いのしるし”で封印しとくよ。アレは』
そう言って、前田は、左手を みなみに掲げてみせた。
『まぁ、そんなことがなければいいけどな…ケンカはもう卒業だ…』
と、みなみは、空を見上げて、言った。
二人での、最後のケンカのあとー
河川敷で、みなみは、介護士になる決意を、前田に宣言するー
前田もいっしょに、勉強する約束をしたー
『何それ?』
みなみが、おもむろに、青と赤のリストバンドをとりだし、赤いほうを、前田に手渡した。Aというイニシャルが入っている。
『誓いのしるしだよ。ほら』
『つくったの?みなみが?はははは』
『何がおかしいんだよ!』
『だって、いきなり女の子っぽいことするから』
『女の子だっつーの!
それじゃ、明日から、一緒に勉強な!約束、忘れんなよ!』
前田は、“誓いのしるし”を左の手首に、通し、笑った。
『わかったよ』
『それとさ、前にも言ったけど、もし、やむを得ず、ケンカするようなことがあっても、あのパンチだけは、絶対、使うなよ。相手が、再起不能どころか、万が一ってことになるからな。そして、敦子自身のからだも…あのときみたいに…。あの左のパンチだけは…絶対…ヤバいから…』
『わかってるって。あのとき以来使ってないし。アレは…』
『そっか…でも…、もしかすると、使わなきゃいけないときってのが、いつか、来るかもしれない…』
『どういうとき?』
『それは…絶対に負けちゃいけないとき、それから、大切な仲間を守るとき、そして、自分自身を守るとき、かな』
『みなみの三箇条ってやつ?わかったよ。そういったとき以外は、この“誓いのしるし”で封印しとくよ。アレは』
そう言って、前田は、左手を みなみに掲げてみせた。
『まぁ、そんなことがなければいいけどな…ケンカはもう卒業だ…』
と、みなみは、空を見上げて、言った。
マジすか学園2☆ #9
「あつ姐ええええええええええええー!」
「カノン砲、炸裂か…」
おしまいだな、とアカネは、腕を頭の後ろに組んで、ソファに体重をあずけた。
「発勁ー。“勁”とは気の力。それを発すること。気を体内で練ることを練功といい、その増幅された気というエネルギーを相手にぶつけるという離れ業。発勁には、流派によって、呼び方も打ち方も威力も様々ですが、カノンのそれは、猛スピードのダンプカーと正面衝突したものと同じような衝撃(インパクト)。前田の再起不能は、免れないでしょう。あるいは、もっと不幸な…」
「おい、待てよ、お前ら!勝った気でいるんじゃないだろうな!ふざけんなよ!敦子は絶対、立ち上がってくるんだよ!必ずな!」
学ランが、涙をこらえて、マサナとアカネにくってかかる。
大歌舞伎が、ふと、横を見やると、小歌舞伎が、うつむいて、ガタガタと震えていた。
「アスカ!何、目そらしてんだよ!ちゃんと見ろ!」
「だって…姉貴…見てられないよ!あれはヤバいよ!」
「バカやろー!前田が、誰のために闘ってんのかわかってんのか!?このなさけねえアタシたちのためなんだよ!無様に捕まっちまったアタシたちのために、命懸けで、闘ってんだよ!だから…だから、アタシたちが、諦めてどうすんだよ!前田を信じろ!前田の闘いを一瞬たりとも、見逃すんじゃねー!」
だまれ!と、見張りの側近が、鉄パイプで、大歌舞伎を殴りつける。
「くっ!こんなもん、前田の状況に比べたら、痛くもなんともねーんだよ!もし、前田が死んだら、アタシは死んでも、こいつらをぶっ潰す!こんな組織、全滅させてやるよ!」
「姉貴…」
涙で、顔をぐしゃぐしゃにしながら、モニターの向こうの前田に届けとばかりに、声がつぶれるくらい小歌舞伎は叫んだ。
「前田の姉貴ー!立ってー!」
「敦子!立てー!」
学ランは、歯をくいしばり、叫ぶ。口の端から血を流し、涙をこらえながら。
「前田ー!立ってくれー!」
大歌舞伎も、長い髪を振り乱し、絶叫していた。
「あつ姐えええええええええええええ!」
だるまは、壁に向かい、頭突きを始めた。ガツっ、ガツっ、と、何度も、何度も、繰り返し、打ちつけていた。大粒の涙を流しながら。
(あつ姐…あつ姐…)
自分の不甲斐なさへの戒めか、一種の願掛けなのかー
四人の悲痛な叫びは届いているのだろうか。
前田は、いまだ、ピクリとも動かなかった。
「カノン砲、炸裂か…」
おしまいだな、とアカネは、腕を頭の後ろに組んで、ソファに体重をあずけた。
「発勁ー。“勁”とは気の力。それを発すること。気を体内で練ることを練功といい、その増幅された気というエネルギーを相手にぶつけるという離れ業。発勁には、流派によって、呼び方も打ち方も威力も様々ですが、カノンのそれは、猛スピードのダンプカーと正面衝突したものと同じような衝撃(インパクト)。前田の再起不能は、免れないでしょう。あるいは、もっと不幸な…」
「おい、待てよ、お前ら!勝った気でいるんじゃないだろうな!ふざけんなよ!敦子は絶対、立ち上がってくるんだよ!必ずな!」
学ランが、涙をこらえて、マサナとアカネにくってかかる。
大歌舞伎が、ふと、横を見やると、小歌舞伎が、うつむいて、ガタガタと震えていた。
「アスカ!何、目そらしてんだよ!ちゃんと見ろ!」
「だって…姉貴…見てられないよ!あれはヤバいよ!」
「バカやろー!前田が、誰のために闘ってんのかわかってんのか!?このなさけねえアタシたちのためなんだよ!無様に捕まっちまったアタシたちのために、命懸けで、闘ってんだよ!だから…だから、アタシたちが、諦めてどうすんだよ!前田を信じろ!前田の闘いを一瞬たりとも、見逃すんじゃねー!」
だまれ!と、見張りの側近が、鉄パイプで、大歌舞伎を殴りつける。
「くっ!こんなもん、前田の状況に比べたら、痛くもなんともねーんだよ!もし、前田が死んだら、アタシは死んでも、こいつらをぶっ潰す!こんな組織、全滅させてやるよ!」
「姉貴…」
涙で、顔をぐしゃぐしゃにしながら、モニターの向こうの前田に届けとばかりに、声がつぶれるくらい小歌舞伎は叫んだ。
「前田の姉貴ー!立ってー!」
「敦子!立てー!」
学ランは、歯をくいしばり、叫ぶ。口の端から血を流し、涙をこらえながら。
「前田ー!立ってくれー!」
大歌舞伎も、長い髪を振り乱し、絶叫していた。
「あつ姐えええええええええええええ!」
だるまは、壁に向かい、頭突きを始めた。ガツっ、ガツっ、と、何度も、何度も、繰り返し、打ちつけていた。大粒の涙を流しながら。
(あつ姐…あつ姐…)
自分の不甲斐なさへの戒めか、一種の願掛けなのかー
四人の悲痛な叫びは届いているのだろうか。
前田は、いまだ、ピクリとも動かなかった。