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マジすか学園2☆ #10ー3

「みんな!気をつけて!」

前田が、叫び、身構える。

「ウガァ!ガァ!」
唸り声をあげ、
四つん這いで暴れまわり、
丸太のように太い右腕を振り回す、血みどろの野獣シノブ。つながれた鎖はものともしていない。

「うあっ!」

「くっ!」

バンジーとアキチャは、シノブの右腕にかすっただけなのに、ふきとばされた。

ムクチは、ヲタのケガの具合を診ていた。ヲタは完全に意識がなかった。

ウナギはというと、壁に寄り添い、為す術なく、震えている。


「あああああ!」

前田が、右の拳を、四つん這いのシノブのわき腹に叩き込む。驚いたことに、前田の拳のほうが、弾き返された。丸々と太った身体は、脂肪ではなく、筋肉の塊だったのだ。

次に、蹴りを入れてみるも、あっさり、はねかえされた。

いままでにも、タフな相手は何人もいたが、これほど、人間離れした相手は初めてだった。


「前田!頭さげろ!」

バンジーの声に、前田は、身をかがめる。
その上を、バンジーが、飛び越えていった。

バンジーの飛び蹴り。

シノブは、二本足で立ち上がり、バンジーの右足を軽々受け止め、そのまま、持ち上げた。
逆さ吊りになるバンジー。恐るべき怪力。

「くっ!バンジージャンプじゃねーぞ!こら!はなせ!」
吊られながら、なお、パンチを繰りだそうとする。

そのとき
ミシミシと、骨の軋む音が聞こえた。

「ぐあ!」

シノブが、バンジーの足首をつかんだ手にちからを込める。
苦悶の表情を浮かべるバンジー。

「ウガァ!」

叫び声を発すると同時に、シノブは、バンジーを投げ捨てた。空き缶をそうするかのように。

ぽい、と。

バンジーは、天井にぶつかり、そのまま、地にたたきつけられた。

「バンジー!」

アキチャが駆け寄る。

「危ない!」

危険を知らせる
前田の声は、アキチャには届かなかった。





「チームホルモン、もう少し、役に立つかと思ったが…ざまあねーな。まあ、仕方ねーか。あのシノブが相手じゃ…な」

アカネは、つまらなそうにモニターを見ている。

「ブレーキの壊れたダンプカー、いえ、装甲車とでも言いますか。前田軍団も、残りあと…3人」

マサナの瞳には、叩き潰されたアキチャとバンジーの無惨な姿が映っていた。

マジすか学園2☆ #10ー2

渋谷センター街にある某ファーストフード店。

ウィークデーにもかかわらず、店内は、混み合っていた。

そのなかに
マジすか女学園二年の大場ミナ、山内スズランの二人が、深刻な表情で、話をしていた。

「あー!やっぱり、ポテトもつけたほうがよかったかな?」

さらさらロングヘアのミナが、ハンバーガーとバニラシェイクをのせたトレイをテーブルに置きながら言った。


「そうだね。セットにすれば割安だし、クーポン使えば、安くなるけど…ミナは、最近太ったし、22時過ぎてるから、つけないで正解かな」

22時過ぎて食べると太るって言うし、と
黒縁メガネに
髪は、ピンク色のシュシュでポニーテールにしているスズランが淡々と答えた。


「ぐっ、なんでも冷静に分析しやがって!なんか釈然としないけど。まぁ、そんなことは、どうでもよくてだな。そろそろ決めようかと思うんだよな。おれたちの身の振り方を…」

「どのチームに入るかってことでしょ。わたしたちが入ることによって、マジ女の勢力図が、大きく変わるね。ラッパッパに入るか、前田につくか、もしくは…」

「お前の頭脳と俺様の拳があれば、マジ女のてっぺんを取るのだって簡単だ。でも、おれたちが目指すのは、もっと上。都内最大のやつらだ!」

「アンダーガールズだね。まあ、二人で潰すのは、厳しいだろうね、まだ。情報が足りないし、不確定要素が多すぎるよ」

テーブルの脇には、スズラン愛用の小型のノートパソコンがあった。
慣れた手つきで、キーボードを操作している。

「最近、太ってきて暴れたいのはわかるけど、圧倒的な戦力差はいなめないね。やりようはあるかもだけど。いまは、時期尚早かな」

「太ってる太ってる言うな!標準よりは、痩せてるんだよ!てかさ、いま、矢場久根とアンダーガールズに狙われてるじゃん。うちのガッコ」

「正確に言うと、前田軍団とラッパッパが…だけどね」

「おれは、ラッパッパに入りてーな。卒業式の優子さんには、感動したぜ」

「わたしは、前田かな…」

「そっか。お前が、そう言うなら…。で、そのココロは?」

ミナの問いに、スズランは、手元のノートパソコンを反転させて言った。
「また、やってるよ。アンダーガールズのやつら。死のゲームっての」

「お前、また、ハッキングしたのか。あの悪趣味なゲームを」

「情報収集だよ。よく見てみて」

パソコンのディスプレイには、アンダーガールズ新宿本部ビル内の様子が映し出されていた。
「四階のシノブじゃねーか。今回のかわいそうな生け贄は、どこのやつだ?

………

って、おい!前田じゃねーか!チームホルモンもいる」

「相当、前田が脅威なんでしょ。やつらにとって」
スズランが、黒縁メガネを外して言った。



「その話…詳しく聞かせてもらえませんか?」

ミナとスズランのテーブルの後ろのカウンターに座っていた少女が、すっと立ち上がり、声をかけてきた。

長い黒髪の少女がー。

マジすか学園2☆ #10

月明かりに照らし出された、部屋の一隅には、身の丈2メートルをゆうに越え、横幅も1メートルはあろう、体重200キロ超の巨体が、丸太のような両手両足首を太い鎖につながれ、天を仰いで立っていた。
髪はボサボサで、腰まで伸ばしっぱなし。顔や腕は生傷だらけで、血のあとが、全身に飛び散っていた。囚人のような服も、血まみれで、
化け物と呼ぶに相応しい様相だが、性別は女子で、人間である。名前は、シノブ。

両手両足と壁につながれている四本の鎖は、それぞれの鎖の長さが三メートルはあり、自由度はそれなりに高い。部屋から出なければ良しとしてるのか。

唸り声を上げて両の拳で、分厚い胸板を叩いている。こちらに気付いている様子はない。

「あ、あいつがもしかして十人衆か?」

ヲタが、振り向いて、前田に尋ねる。

「たぶん…」

前田が神妙に、うなずく。

「まるで、キングコングだな」と、バンジーが評した。

「いや、クラッシャーバンバンビガロだろ」

「そんな、マイナーなプロレスラー知らねーよ。クラッシャーバンバンビガロって、言いてーだけだろ」

「じゃあ、ボブサップ」などと
バンジーとアキチャが、くだらない言い争いをしているとき、

ウナギが、

「この、散らばってる犬の死骸って、ま…まさか…」

震えながら、言った。

ムクチが答えようとしたとき、
ヲタが、「ああ、あいつの仕業だろうな」と答えた。

生きたままの野犬が、シノブの餌なのだ。


「ウガァ!」

一瞬の出来事だった。

たしかに、油断は、あったかもしれない。

しかし、警戒していても、身を、かわせたかどうかは、わからない。

先頭にいたヲタが、シノブの電光石火の体当たりを食らい、コンクリートの壁に、ふきとばされた。

「ヲタ!」





本部ビル最上階、司令室モニター前には、ソファに座るアカネと、その傍らに立ち、ゲームを見守るマサナの姿があった。

「シノブのやつ、機嫌わるそうだな。まあ、あんま、機嫌いいってのは、見たときねーけど」

「とくに、彼女は、人間の匂いが嫌いですからね。久しぶりの人間との対面。野性が目覚めたのかもしれません。幼い頃、山に捨てられた折の記憶が…」

「野獣の一撃か…」

「フフ…、前田軍団、残り…あと5人」

マサナは、酷薄な表情で、ヲタの戦線離脱を宣した。