マジすか学園3☆#9ー9☆
東京ー
“兆し”は、あったんだよな…
今日は寝覚めは悪いし、靴の紐は切れるし、霊柩車は通るし、黒猫には横切られるし…
おれは、迷信にこだわるほうなんだよ…
あげくに、こんな戦闘機械みたいなやつと闘うことになるなんて…
こいつ、何で汗ひとつかかねーんだよ、ほんとに人間なのか?
おれも、マナツも汗だくだってのに…
なんて正確な動きなんだ…
ひとの弱点ばかり狙いやがって…
イヤなやつだ…
もう、顎がボロボロで文句のひとつも言えねーじゃねーか…
顎だけじゃなく、全身もか…
マナツ、そんな悲しい顔するなよ…
おれは、お前たちやマジ女のやつらに出会えてよかったよ…
闘う意味を知ることが出来た…
だから…
あとは、頼んだぜ…
「アイリ!」
マナツは、アイリの眼差しが、“サヨナラ”と告げたような気がして、思わず、声をあげた。
まったく、防御のことなど考えずに、アイリは、矢場久根死天王ーオメガに突進していった。
獅子の咆哮が、聞こえた気がした。
オメガは、アイリの突進を冷静に計算し、かわす。
かわした筈だったが、アイリの拳は、オメガの顔面をかすめていった。
喧嘩に勝つ方程式なんかないんだ、と言わんばかりにー。
アイリは、そのまま、倒れこみ、ちから尽きた。
その顔には悲壮感はなく、何故か、笑顔が浮かんでいた。
(おれは、迷信にこだわるほうなんだよ…)
アイリのそばには、四つ葉のクローバーが、風に揺れていた。
マジすか学園3☆#9ー8☆
前田に向かい、ナイフを持った少女が、一歩、前に出ようとしたとき、横あいから白い影が飛び出し、少女の腕を蹴り上げた。
天井の照明が反射し、きらきらとナイフは弧を描いて飛んでいった。唖然とする少女。
「自分が顔も心も醜いからって、無抵抗の人間に対し、ナイフを向けるなんてサイアクだね!」
白い制服を身につけたアヤメだった。いつの間にか、縄をほどき、自由になっていた。
前田も顔をあげ、手首の関節を外し拘束をとく。本当に意識を失っていたわけではなかった。
「作戦成功だな」
三十分前
“エリア”外のファーストフード店ー
『ディーヴァに真正面から立ち向かうのは愚の骨頂ニャ。隊員もいまや増えに増え、1000人とも1200人とも言われてる。まずは“エリア”の中枢に入り込みたい。それも、なるべく多人数に気づかれずに』
『どうやって入り込む?』
『あいつらは、隊に分かれてるニャ。縦の繋がりは絶対だけど、横の繋がりは案外薄い。隊員が獲物を捕まえた場合、大抵、自分たちの支部に連れていき処理する。手柄を独り占めというわけ。だから、最初に、ある隊に潜りこみ、その隊を叩き潰す。それから、“エリア”内を、将軍だけを狙い、潰していく。その将軍を倒すのが一番難しいんだけどね。時間をかければかけるほど、ディーヴァの追撃の手が広がるから、時間との戦いでもある』
『ゲリラ作戦ってやつか』
『制服を着たレジスタンスだニャ。作戦コード名は“白き虎”、いろいろ合図(サイン)も決めておこう』
『なんだか、慣れてるね』
『わたしは、敗残兵だから…』
そして、いまー
「こ、こいつら、狸寝入りやったんか!?」
「狸じゃないニャン、一般のひとを傷つけたくなかっただけだよ」
「アヤメ!大丈夫か?」
「大丈夫!急所はちゃんと外してたニャ、そっちこそ、大丈夫?」
「あぁ、合図(サイン)が見えたからね」
前田は、アヤメが倒れるときの合図(サイン)を見逃さなかった。やられたフリをするとー。
憤怒の形相で、ナイフを蹴り飛ばされた少女がふたりに襲いかかる。
「今度こそ、叩き潰したるわ!」
前田は、少女の伸ばした手を紙一重でかわし、腹部に拳を打ち込む。
一般人のいない広い場所で、何の憂いもなくのびのびと闘う前田。遮るものがない“風”は、容赦なく、相手を薙ぎ倒していった。
強い。
「さすがだニャ…」
(風は…、自由がよく似合うね…)
アヤメは、前田の闘いぶりを眺めながら、神出鬼没の素早い動きで、凶器をふりかざす相手の攻撃を避け、敵を翻弄していった。
数分で、ディーヴァの半数程が倒れ、散った。
そんななか、低い電動音と共に
入り口の自動ドアが開き、銀灰色(グレイ)の特攻服の少女が入ってきた。肩にかかりそうなストレートの黒髪。幼さの残る顔立ちに芯の強さが溢れ出ている。
「城さん…」「城さんや…」
隊員たちが気づくのも構わず、城はサンドバッグに近づき、リズムよくパンチを繰り出し、激しく叩き始めた。
全員の動きが止まり、視線がひとつに注がれる。
横に揺れていたサンドバッグが、徐々に縦に揺れ始める。それはパンチ力の凄さと重さを物語る。吊している鎖が今にもちぎれそうに悲鳴をあげている。
最後に一発、城は、強烈無比な右のパンチを放った。ついに、鎖が弾け飛び、サンドバッグがドサッと地面に落ちた。
城が何事もなかったように振り返る。
「前田、準備運動はもうええか?」
部下がやられていることに、何の痛痒も感じていないようだ。
「お前が、将軍か…?」
「城エリコや…」
口の端だけで笑う城。
暗に将軍だと認める。
そして
いつものルーティンワークのようにリングに向かった。
そびえ立つ鋼鉄の金網。
そこは処刑の場。
いままで、数多くの血を吸ってきた檻(リング)。
鋼鉄の扉を慣れた感じで開き
金網に囲まれたリングにあがる城。
すべてのロープには有棘鉄線。
よく見ると、いたるところに血のようなものがこびりついていた。
リングに立った城を見て、
ディーヴァの隊員が口笛を吹き、はやしたてる。
「城さんの公開処刑や!」「城さんは、ボクシングのオリンピック候補生やで!」「前田なんか手も足も出んやろ!」「なにわの城(ジョー)!」「すぐにノックアウトや!」
「前田、はやく闘(や)ろうや…」
リングの上から、城が、前田を見下ろして言った。
「前田、城のパンチ力、ボクシングセンスは本物だよ。わざわざ、敵の有利な場所に入る必要はない!ましてや…あんなの…アウェイすぎる…」
おどろおどろしくそびえ立つ鋼鉄の檻を見やるアヤメ。
「わたしは逃げないよ…、そんなことしたら、いままで闘ってきたみんなに笑われるから…」
決意は固い。売られた喧嘩から逃げるわけにはいかない。
前田は、リングに向かって、自ら歩を進めた。
隊員たちは少し驚いた。いつもは、無理やり金網のなかに押し込むことが多かったからだ。
「自分からこの金網のなかに入ってくる勇気は認めたるわ…、でも、すぐに後悔することになるやろ…、昨日の岸野みたいにボロボロにしたる!あいつは無抵抗でつまらんかったけどな!」
岸野リカを半死半生にしたのは、城だった。
前田が金網の扉を開け、ロープをくぐり、リングに降り立った。
とても狭く感じられた。初めてのリングでの闘い。周りには鋼鉄の金網。有棘鉄線だらけのロープ。ディーヴァの隊員たち。
そして、リング内の、将軍、城エリコの威圧感。
白いキャンバスは血で黒く染まっていた。
「これまで、何人のひとを無闇に傷つけてきた?」
「潰したサンドバッグの数なんか、いちいち覚えとらんわ」
ひとをサンドバッグとしかとらえていない城。残忍さがうかがえる。
リングの感触をあらためて確かめるように、トントンと軽いフットワークをみせた。
前田も、構えをとる。瞳には怒りの炎が灼熱する。
「よっしゃ、ゴング鳴らせ!」
隊員が城の指示に従う。
カーン!
と、広いフロアにゴングが鳴り渡った。
それは“死の遊戯”の始まりを告げる鐘なのか、それとも、どちらかの弔鐘となるのかー。
そのボクシングジムのあるビルの上空では、一羽の鷹が獲物を狙うかのように翼を広げ、ゆっくりと旋回を繰り返していた。
【マジ女side】
前田敦子
アヤメ
【ディーヴァside】
総帥 ????
弐将 ????
参将 ????
死将 與儀ケイラ
伍将 ????
六将 城エリコ
七将 上西ケイ
八将 ????
山本サヤカ