AKB48G☆マジすか学園☆乃木坂46☆欅坂46☆櫻坂46☆日向坂46☆好きな 「かつブログ☆」 -113ページ目

マジすか学園F☆#2ー4



【エリアK】内のとある場所──




「五人vs八百人…」

薄暗い室内に、
複数のモニターの光がずらりと並んでいる。

モニターの中では、前田たちが、圧倒的多数のディーヴァの隊員に囲まれている場面が映し出されていた。

そのモニターを見つめる、少女のつぶやく声が続いた。

「絶望的な展開ってやつやな…、アホらしいくらいに」

その少女は、西日本最大の組織ディーヴァを統べる総帥。

ただ、
少女の本当の名は、誰も知らず、また、素顔をはっきり見た者も、いなかった。ある理由から、通常、サングラスなどで顔を隠し、ケータイで話す際は、ボイスチェンジャーを使っている。
ディーヴァを立ち上げた当初から、そうだった。

正体不明。

故に、
少女は、いつからか、こう呼ばれるようになっていった。


『無敵』─と。


誰にも勝てない。敵対する者すらいない。
誰も、その正体を知らないのだから。
では、何故、これほど、巨大な組織、ディーヴァをつくりあげることが出来たのか。

それは─

この少女には、生まれつき、特別な能力(ちから)があったからである。

誰も、逆らうことのできない、恐ろしい能力(ちから)が──。


「結末(エンディング)が見えたら、物語(ストーリー)も…、つまらんなぁ」

そう言いつつ、総帥は、
モニターのある薄暗い部屋を出た。

次の瞬間、強い海風が、総帥の全身を打つ。銀灰色(グレイ)の特攻服が、激しくなびく。
そこは、豪華客船のように巨大なクルーザーの甲板上だった。先程までいた薄暗い船室から、総帥は、陽の当たる場所へ、足を踏み出した。
広々とした甲板の左舷を、ゆっくりと歩いていく。総トン数は十万を超え、全長は二百メートル以上はあった。
しばらく行くと、総帥は、
船尾付近で立ち止まり、小型双眼鏡(オペラグラス)を取り出し、陸のほうを眺める。


三百メートル程先に、
前田たちが、圧倒的多数のディーヴァ隊員に呑み込まれていく瞬間が、見えた。

総帥の脳裏に映像(ウ゛ィジョン)が浮かぶ。


「最初に沈むのが小歌舞伎か…、次が大歌舞伎、それから、学ラン、鬼塚だるま、そして…」

確信をこめて、低く、笑う。


「前田…、世の中…、“マジ”なんて、ないんやで…」




【エリアB】


福本アイナ。

ディーヴァの将軍であり、神殺し(エースキラー)の異名を持つ少女は、“波動”と呼ばれる、人が持つ固有の生命力(オーラ)のようなものを、読み取り、また、自らの“波動”を操ることが出来た。

相手の“波動”を読み取るということは、動きを完全に把握でき、見切ることが可能ということ。ゲキカラが攻撃しようとする拳にちからを込めれば、“波動”の変化がその拳付近にあらわれる。脚に“波動”の変化があれば、蹴りがくる。

それによって、
ゲキカラの動きは、見切られ、軽々とかわされ、アイナをとらえることは、全くといってよいほど、出来なかった。
さらに、アイナは、自らの全身の“波動”を自由自在に操り、特にそれを拳に集中させたものは、普通の拳に比べ、威力が倍増し、まるで、ハンマーのように、ゲキカラの全身を幾度となく叩きつけ、脳を揺さぶった。

うたれ強く、タフなゲキカラも、ついには、倒れるほか、なかった。

アイナが、地面に伏せたままのゲキカラに向け、吐き捨てるように、言う。

「どうしたんや…、『ぶっ殺(つぶ)す』んやなかったんか?」


“応え”が返ってこないので、アイナが、さらに続ける。


「初めてやろ?“波動”を纏った拳、くらうのは」


「波動……?」


先程も耳にした、アイナの発した聞きなれない単語─“波動”。ただ、その威力だけは、身にしみて感じていた。
“波動”をまとった衝撃は、いままで味わったことのない程の強烈な一撃だった。さらに、無痛症だった肉体が、前田やその仲間たちとの闘いを経て、徐々に、『痛み』というものを感じるようになっていた。それは、通常の感覚を取り戻し始めているということだったが、
この変化は、ゲキカラの不利に一層、拍車をかけていた。痛みが動きを鈍らせる。
さらに、アンダーガールズの凶獣シノブとの激闘やニューヨークでのカラーギャングとの争いのダメージが、まだ、完全に抜けきってはいなかった。

しかし、
そんなことは、お構いなし、と言わんばかりに、ゲキカラは幽鬼のように立ち上がる。いくら、拳をうちつけられようが。

視界が歪んだまま、それでも、返り血を浴びた拳を大きく振るう。何度でも。


「何回やっても、同(おんな)じや…」


言いながら、ゲキカラの拳を避ける。


「やっぱり、変わってもうたんやな…、伝説のラッパッパ…、最狂のゲキカラも…、いまとなっては…、時代遅れの代物(シロモン)か…、甘くなったもんや」


“波動”をまとった拳が、ゲキカラの腹部に、突き刺さる。勢い、身体がくの字になるほどに。

倒れまいと、膝にちからを込める。奥の歯を噛み締め、


「確かに……、変わったかも…しれない…」


いままで、しらなかった『痛み』というもの。
自分が受けた『痛み』、相手が受けた『痛み』、そして、自分が与えた『痛み』──。

それらを、初めて、知ったとき、自分が変わっていくのを感じた。それは、決して、わるいものではなかった。

ただ─

現在、全身に、これまで、味わったことのないほどの激痛を感じているゲキカラ。このままでは─


しかし、ここで、負けるわけにはいかない。マジ女が、ラッパッパが、負けるわけには─。絶対。



「──それでも、変わらないことは…、ある」


一瞬、ゲキカラの視線が、アイナを刺し貫いた。


ゲキカラの内側から溢れ出る“波動”が、全身を包み込んでいく様子が、アイナには、見てとれた。いままで、見たことのない“波動”の質と、溢れかえるほどの量。

一体、どこから攻撃が来るのか─

アイナが、そう思った瞬間。


アイナの身体は、後方に、大きく吹き飛んでいた。ゲキカラの血まみれの拳によって─。

倒れ込んだまま、顔をおさえ、驚愕の色をあらわにするアイナ。“波動”の残滓すら見えなかった。


「どうした?見たかったんだろ─」


“波動”を全身に纏ったゲキカラが、返り血を浴びた微笑で、見下ろす。



「──超激辛な…わたしを」



マジすか学園F☆#2ー3


とある救急病院の廊下──



カツコツと、
リノリウムの床を、踏みつけるように歩く少女。
パンプスから、黒いエナメル質のブーツに履き変えた少女は、怒りを抑えるのに、必死だった。自分自身の不甲斐なさに、つくづく、呆れる。怒りは身体中の痛みを、忘れさせていた。


(ラッパッパに…、二度目は…ねーぞ)


ラッパッパが、同じ相手に、二度、負けることは許されない。必ず、オトシマエはつける。

そう考える少女を、背後から駆け足とともに、必死に呼ぶ声があった。


「シブヤさんッ!」


切羽詰まった声は、舎弟のダンスのものだった。

「シブヤさん!どこ行くんですか?」

「トイレだよ!ついてくんじゃねぇ!」

視線は、前しか見えていない。


ダンスが、必死になるのにはそれなりに、理由があった。その原因となる、目の前の疑問を、そのまま、ぶつけてみた。


「そ、それなら…、どうして、トイレ行くのに、その『スカジャン』着てるんですか!?」


先程までのスーツ姿から一変。

ラッパッパ四天王の証。
パールピンクの光沢のあるスカジャンに。白い袖には、桜の刺繍。

救急で、運ばれてきたシブヤは、ほどなくして、意識を取り戻すと、
急いで、サークルの使い走りに、着替えとブーツを持ってくるように言い、適当な場所で着替え、医師の許しも得ず、現在、外へと、足を進めていたのだ。



一緒に運ばれてきたダンスは、シブヤより後に、目を覚ますと、すぐに、シブヤのもとを目指した。医師から、シブヤのほうが重傷だと聞かされていたからだ。
そして、シブヤの病室に向かおうとしていた矢先、シブヤらしき人物を見かけたのだった。

ダンスが呼びとめても、シブヤは、歩みを止めることはなかった。シブヤには前しか見えていない。すがりつくように、ダンスは、言う。


「ダメです!まだ、そんな身体じゃ…」


四天王の証のスカジャンにブーツ、濃いピンクのグローブ。どうみても、戦闘体制だった。


「おちおち、寝ちゃ、いられねーんだよ!」


堪えきれず、感情をあらわにするシブヤ。歩く速度は増していく。


「わたしには、わかるんだ…」

苦痛に、顔を歪め、

「わたしが、やられたってことが知れたら、勝手に暴走するやつが出てくる…、あいつらなら、きっと…」

自分なら、間違いなく、そうなるから。いままでも、そうだった。仲間がやられたら、どんなことをしても、その敵を討つ。それが、ラッパッパの絆。

「だから…、それを止めるのも、仲間(わたし)の仕事なんだよ!あの野郎は、わたしの獲物だからな」


「でも…、そんな身体じゃ…」


全身打撲に、肋骨にはヒビが入っていた。


「お前は、もう少し、ここで、休んでろ!」


「シブヤさんのほうが、ケガがひどいじゃ…」

「効いちゃいねーよ、あんなもん」

見えみえの強がり。だが、光宗の実力を肌で感じているからこそ、焦る気持ちは止まらない。

「だったら…、わたしも、一緒に行きます!」


「ばか野郎!十年早いんだよ!」


シブヤに一喝され、
しゅんとなるダンス。

そこで、シブヤは、ようやく、足を止め、振り返った。そこには、見たことのない穏やかな表情があった。


「それでも…、『十年後のお前』ってのを、早く見てみたいもんだけどな」


「シブヤさん…」


「これ、やるよ」


シブヤの手から、放たれた
桜色の小瓶がくるくると、宙を舞う。

まるで、桜の花びらのように。

ダンスは、あたふたしながら、顔面を壁に激突させ、鼻血をだし、ようやく、その小瓶を受け止めることに成功した。


「わたしにとって、たぶん、これが、最後の喧嘩になるだろう…、
ダンス…、お前は、卒業するまでに、それが似合うような女(ヤンキー)になれよ…

じゃあな、

未来で…待ってる」


そんな言葉を残しつつ、最後の扉を開き、
病院の外へ出たシブヤの姿は、あっという間に、見えなくなっていた。


ダンスは、ペディキュアの小瓶を、握りしめ、こんな言葉を思いかえしていた。


『たとえ、1%でも、勝つ“目”があるのなら…、それに賭けるのが、わたしたち…ラッパッパだ!』


マジすか学園F☆#2ー2




スーパーマーケット裏──


「さて、次は、あの人か…、あんまり、ひとりで、やりすぎると、後で、『あいつ』がうるさそうだけど」


既に、次の標的に思いを巡らし、倒れ伏したブラックと阿部マリアたちに背を向け、歩き始めるカヲル。

そのとき、ジャリ…という音が聞こえた。

振り返ると、うつ伏せになっているブラックの左の手が、アスファルトの砂を掴むように、ゆっくりと握られようとしていた。


「……、まだ、意識はあるということですか…、それとも、無意識?」


一応、警戒しながら、その光景を見つめるカヲル。


「無駄なんですけどね。わたしのあの一撃を受けて、いままで、誰ひとりとして、立ち上がった者はいませんから…、
そうですね、
これ以上、苦しまないように、楽にしてあげましょう」

嗜虐的な笑みをもらし、近くにあったビールケースを手にする。


「これを、頭に叩きつければ…、もう二度と─」


カヲルが、ビールケースを、高々と掲げたとき、ケータイの着信音が鳴った。
つまらなそうに、ケースを、あらぬ方向に放り投げる。

せっかちな『あいつ』からの着信と思ったが、
ディスプレイには、未登録の番号が表示されていた。

とりあえず、通話ボタンを押しながら、ケータイを耳にあてる。

『光宗カヲルだよね?』という第一声が聞こえてきた。


「トリゴヤさん…ですか?」


『別に、よく知らないアンタなんかに気安く呼ばれたくはないんだけどね』

電話の相手は、カヲルの想像通りだった。


「どうして、この番号を…、あぁ、お得意のサイコメトリーというやつですか」


『世間話をするつもりはないよ。いま、何処にいる?』


「いまですか?いま、ちょうど、ブラックさんとの勝負が終わったところです。伝説のラッパッパ四天王も大したことないですね。シブヤさんに、ブラックさん、…次はあなたの番ですよ。トリゴヤさん」


『どうせ、汚い手でも使ったんじゃないの?シブヤや、ブラックまでが、そんな簡単にやられるわけがない…、もし、本当なら…、絶対に許さない!』

「それは、想像にお任せします。ところで、トリゴヤさんは、いま、どちらにいらっしゃるんですか?」

一瞬の間隙。


『テメーの後ろダヨ!』


直後。

突然、ひとの気配を感じたカヲルが焦り、振り向く。


しかし、そこには、誰の姿もなかった。

「は…、はは…、冗談なんて、言うひとだったんですね」


「冗談じゃねーよ!」


今度は、ケータイを通してではなく、背後から、直接、響く声。

カヲルが再び振り返ったとき、すでに、トリゴヤの拳が一直線に、飛んできていた。
直撃は避けたものの、よろめき、後ずさる。

いつの間にか、
カヲルの背後に、すでに覚醒したトリゴヤが、佇んでいたのだった。顔半分を覆い隠す長く赤い髪という異形の姿で─。


「たーだーいーま…」


「…ッ!?」


カヲルは、どこかで、妖しい鳥の鳴き声を聞いたような気がした。トリゴヤを厳しく見据える。先程までとうってかわって、異様な雰囲気が、この空間に漂っていた。


「お前にも聞こえただろう…、“告死鳥”の鳴く声が…」


その言葉を発したのはブラックだった。かなりのダメージを堪え、なんとか、立ち上がっていた。負けられない。


「告死鳥…?」

ブラックのほうに、向き直り、
思わず、カヲルが聞き返す。


「その名の通り…、貴様に、死(敗北)を告げる鳥のことだ…」

得心したように、頷くカヲル。そして、何故、立ち上がることができたのかを考える。

「そうですか。かわせないと思った瞬間、急所を微かにずらしていた、というわけですね…、それでも、ダメージはかなりあるようですが─」


「貴様のような卑劣な人間に…、ラッパッパ(わたしたち)が、これ以上、負けるわけにはいかない…」


「なるほど─、そちらこそ、本当に、息の根をとめてほしいみたいですね」


攻撃態勢に入ろうとするカヲルから、素早く、
ブラックを庇うように、
間に、割って入るトリゴヤ。


「ブラック、大丈夫?」

満足に動けないブラックを気遣うトリゴヤ。覚醒したトリゴヤを見て、彼女の覚悟を感じとるブラック。


「…やつのスピードと射程距離には…気をつけろ…」



そんな二人を見つめる
カヲルには、不思議と、余裕が感じられた。堂々とした─。

一体、この少女は何者なのか?

それを、知ることの出来るのは──


「見てて、わたしの本気を」


そう言ったかと思うと、トリゴヤは、一瞬で、カヲルとの距離を詰める。
そして、
カヲルの頭を、右手でわし掴みにし、両目を閉じた。
トリゴヤの
得意とする相手の過去(こころ)を読み取る能力だった。深層心理にまで迫る。

直後。

トリゴヤは、何故か、苦しげに、うめくと、くずれ落ちるように、ひざまずいていた。その間、カヲルの挙動は、一切なかった。

「はぁ…、はぁ…、こんな…、こんなことって…」

急激に、息を荒くするトリゴヤ。

「どうした…、トリゴヤ…、一体、何が見えたんだ?」


余程、恐ろしい過去が、見えたのか。
カヲルは、ただ、微笑んでいた。


「何も…」


「何っ?」


屈辱と驚愕のないまぜになった表情で、トリゴヤは、つぶやいた。


「……、読(み)えなかった…、何も…」