AKB48G☆マジすか学園☆乃木坂46☆欅坂46☆櫻坂46☆日向坂46☆好きな 「かつブログ☆」 -115ページ目

マジすか学園F☆#2ー1


東京──


スーパーマーケット裏のバックヤードでは、依然として、ブラックと光宗カヲル、二人の─、
お互いが持つ並外れた動体視力とスピードにより、決定的な打撃を与えることの出来ない、ギリギリの攻防が続いていた。


「もう、いい加減、その冷静な仮面を外したらどうですか?」

軽く、息を弾ませながら、カヲルが挑発する。疲労感は多少、滲み出ていた。

「そろそろ…、余裕がなくなってきているようだな」

ブラックは、それをカヲルの拳同様に、さらりと受け流す。彼女の迅さ(スピード)は健在だった。

ぎり、と奥歯を噛みしめるカヲル。

体力(スタミナ)には、自信があったが、元ラッパッパ四天王の重圧によってか、知らず知らず、体力を奪われていた。

一旦、距離と間をとる。

バックヤードには、いろいろなものが置かれていた。そのなかの一角に目をとめ、カヲルは心の中でニヤリと笑う。

「わたしの勝ちですね」


そう言うと、カヲルは、隅のほうに置かれたビールの空き瓶の入ったケースが積まれているカーゴに駆け寄っていった。右の手を伸ばす。


「!」

ビール瓶を凶器にするのでは、という
ブラックの予想は外れた。

(まさか…)

次の瞬間、びっしりとつまったビール瓶ごと、黄色いケースが、青空を舞っていた。
こぼれ出たビール瓶が、地面に叩きつけられ、ガシャーン!と弾け飛ぶ。破片が、四方八方に散らばる。

「くっ!」

間一髪、それらをかわすブラック。

直撃すれば、かなりの大怪我(ダメージ)は、免れないだろう。
続けざまに、今度は、しっかりと狙いを定め、またしても、重々しい『ケース』をまるで、軽いボールのように投げつけてくるカヲル。

中身が入っていないとはいえ、
細長い華奢ともみえる腕なのに、なんという怪力だろうか。

次々と矢継ぎ早に投げこまれるビールケース。飛び散る破片。
動きの予測もつかない破片が、防御する腕をすり抜け、神速をほこるブラックの頬を切り裂いた。

その場にあった十数個のケースを投げ終えたあとには、
ブラックのまわりに、
キラキラと太陽の光を反射した、ガラスの絨毯が出来上がっていた。

結局、ブラックにビールケースが直撃することはなく、深いダメージを与えることはなかった。

「もう…、弾切れのようだな…」

頬から流れ出る血を、拳で拭うブラック。

カヲルは、まったく、動じることなく、言い放つ。


「これで、あなたの動きは封じました」

勝利宣言のような説明は続いた。


「ハイスピードを誇る車にとって、最も重要なもの、それは、ブレーキ。たとえ、あなたが、ブーツを履いていようが、素早い動きを止めようとするとき、また、方向転換するとき、必ず、地面を強く踏みしめなければいけない。しかし、このガラスの絨毯のうえでは、それもかなわない。さらに、ケースという障害物が動きを制限する。
それらの微妙な違いは、わたしたちの喧嘩では、必ず、命取りとなるでしょう」


「それが、目的だったのか…」


「少し、顔色が変わりましたね」


嬉しそうなカヲル。


「しかし…、それは、貴様にとっても同じことだろう…」


「残念ですが、同じではありません」

「どういう…意味だ?」


「すぐに、わかりますよ」


再び、カヲルから攻撃が仕掛けられる。素手による攻撃。
ジャリジャリと、二人が、ガラス片を踏みしめる音が、辺りに響く。

ブラックの、通常、ひとでは見切ることのできない動きも、破片によって、やはり、明らかに、スピードが落ちていた。

焦りは、すぐにあらわれた。
ブラックが、ガラス片に右足をとられ、ほんの一瞬だけ、バランスを崩す。

そこを見逃すことなく、カヲルの長い脚が、ブラックの側頭部をとらえた。
カウンター気味の衝撃に、
針のむしろの上を、ブラックが、すべり、転がっていく。
黒のスカジャンが、身体中が─、ガラスの破片によって、ズタズタに引き裂かれた。
それでも─、
全身の痛みをこらえ、ゆっくり立ち上がるブラック。


「もう、ボロボロですね。そのスカジャン。買い替えたほうがいいですよ」


「貴様…」

ラッパッパ四天王のスカジャンは、代々、先輩から受け継がれてきたもの。まさに、誇り(プライド)を傷つけられたに等しい。

瞬間。
ブラックの背中から、白き竜のようなオーラが浮かび上がったように見えた。


直後。

ブラックの姿が消える。音もなく。

カヲルが、初めて、その姿を見失った。

気づいたときには、顔に、ブラックの拳の感触があった。

勢いよく、吹き飛ぶカヲル。

しかし──


カヲルは、倒れかけた所に、ちょうど転がっていたビールケースに、手をかけ、アクロバティックに、身体を回転させ、バネのように跳ねあがり、かろうじて、着地を成功させた。


「それが…、ラッパッパの“マジ”ですか…」


険しい表情で、睨みつけるカヲル。

ブラックの視線も鋭さを増していた。
一触即発の状態。

おもむろに、
カヲルは転がっているビール瓶の細い部分を掴む。切っ先は鋭くとがっている。


「どうする…つもりだ?」


「どうすると思います?」


笑み。


その笑みが消えたとき、

ビール瓶は、カヲルの手をはなれ、

そのまま、ブラックの頭上を越えていった。

狙いは、ブラックではなく─、


先刻、カヲルにやられた、
隅に倒れているブラックの後輩、『阿部マリア』であった。


それに気づくや、
一直線に、ブラックが走る。地面に散らばるガラスの破片や、足に当たるビールケースも、気にせずに─。

そして、直撃する
寸前で、ブラックの手刀が、回転しながら落ちてくるビール瓶を、真横に薙ぎ払う。激しい勢いで、ビール瓶は、コンクリートの壁に激突し、粉々に、砕け散った。ブラックが、怒りを込め、カヲルのほうに振り返った瞬間(とき)、


「ぐ……」


ブラックの全身を激痛が駆け巡った。
カヲルの右拳が、ブラックの脇腹を深々と貫いていたのだ。

「────神崩し!」


カヲルの一撃必倒の得意技。ここまで、隠してきた超長距離射程の、槍のような一撃が、ブラックに突き刺さっていた。疾すぎる。一瞬より短い出来事だった。

疾風の女神は、その名の通り、『神崩し』の槍の前に、ただ、崩れ落ちるしかなかった。


冷酷に、見下ろすカヲル。


「ブラックさん…、あなたは、わたしの“本当の”射程距離(リーチ)と迅さ(スピード)を読み違えました。そして、最大の敗因は──」


倒れ伏しているブラックの、ビール瓶で傷ついた右手を見て、言う。




「───、あなたのその『甘さ』です」




マジすか学園F☆#1ー10.5


三十分程前──


【エリアG】では、
ついに、チームホルモンの五人が、多勢のディーヴァ隊員たちによって、周りを完全に、とり囲まれるという、窮地に陥っていた。五十人は、いる。かなり、奮闘はしたものの、とうとう、彼女らも体力の限界にきていた。

五人は、背中合わせになり、お互い、支えないと立っていられないくらい疲弊していた。緑のジャージは、泥と血と汗にまみれていた。

「はぁ…、はぁ…、もう、一ヶ月分くらい、喧嘩した気がするぜ…」

ウナギが、陸にうちあげられた魚のように、あえぐ。

「はぁ…、こういう場面、なんて言うんだっけ?」

アキチャの表情にも、飽き飽きとした色がみえる。

「………ティームホルモン絶体絶命」

ムクチが、ぼそりとつぶやいた。


「その通りや!もう、観念せぇや!」「散々、引っかきまわしてくれたなぁ」「もう、お前らに未来はないで!」

凶器を掲げ、威嚇するディーヴァの隊員たち。余裕がうかがえる。

そんななか、勝利を確信した
『ディーヴァ』コールが、いきなり、沸き起こった。

「ディーヴァ!ディーヴァ!」
「ディーヴァ!ディーヴァ!」
「ディーヴァ!ディーヴァ!」



「うるせ────────ッ!」

ヲタが腹の底から叫ぶ。その声は、一瞬で、勝利のコールをかき消した。

「てめーら!いい加減にしやがれ!こっちはなぁ、こんなに人数少ないってのに、そっちは、何倍の人間がいやがると思ってんだ!卑怯だと思わねーのか!
それに、てめーらの頭(あたま)、総帥とかいうやつは、おもてにも出てこねー!いったい、何してやがんだ!正々堂々、勝負しろ!」


「ハッ!総帥が出てこられるまでもないわ」
「総帥は、うちらにしたら、もはや“神”やからな」「そうや、総帥は“絶対”なんや!」


まるで、新興宗教の信者のように、総帥を崇める隊員たち。何かに縛られているように。



「じゃあ、お前ら、その“総帥”のこと、どれだけ知ってるってんだ?」

横あいからの
バンジーの思いもよらない問いかけに、ディーヴァ隊員たちは、それぞれに顔を見合わせる。


「お前、知っとるか?」「いや、よう知らんわ」「まだ、会うたことないし…」

結果。
この多勢のなかで、
誰ひとり、総帥のことを詳しく知っているものはいなかった。


「どうやら、噂は本当らしいな。ディーヴァの総帥は、隊員(下っ端)はおろか、将軍にさえ、直接、顔を見せたことがないという。出身もわからなければ、名前すら不明だってな。いつも、どこにいるかもわからない。しかし、いや、それ故に、組織は、恐怖で縛られている」

規律は絶対。違反者には制裁が待っている。どこにも逃げ場はない。


「そんなん、どうでもいいやろ!」「ディーヴァを立ち上げたんは、総帥や!」「関西を、西日本を制覇したんは、総帥のおかげなんや!」「そうや!そうや!」

動揺を示すディーヴァに、

「へっ!もう、いいだろ!カモンカモンベイビーだぜ」

ヲタが無理を承知で、強気をみせる。

「待て、ここは、“あの作戦”でいこう」


バンジーが、先走りそうなヲタに向かって言う。


「なんだ?そんないい手あんのか?」

「こうなったら、……占いだ」


「は?」

目が点になるヲタ。

「占いだよ、ホルモン占い、……いつやるんだ?」


「いまでしょ!!!」

ウナギ、アキチャ、ムクチが、口を揃えた。


「いや、絶対、いまじゃねーだろ!それに、ホルモン占いって…?」


ヲタが、わけもわからず、慌てていると、


「何を、ゴチャゴチャ言うとるんや!」「もう、ええやろ!いてまえ!」「ぶっとばしたるわ!」


機先を削がれ、静観していた
ディーヴァの隊員たちも、とうとう、しびれを切らし、一気に襲いかかってきた。

身構えるチームホルモン。


その瞬間。


プルルルルル─


一斉に、ディーヴァの隊員たちが持つ携帯電話から、ある特定の着信音が鳴り響いた。メールの一斉送信の受信。攻撃の手が止まる。

「本部からや!」「作戦変更か!」「緊急招集やて!」「エリアKや!急げ!」「ちっ!こいつら、命拾いしたな!」

メールを確認した後、
それぞれ、捨て台詞を残しながら、あっという間に、ディーヴァ隊員たちは、蜂の子を散らすように、その場から姿を消してしまった。

ズルズルとすべり落ち、座り込む五人。

「ふぅ…、なんとか、助かったな。いまのうちに体力回復しておけ」

バンジーが、ためた息を吐く。時間を引き伸ばす作戦はかろうじて成功だったようだ。こんなところで、くたばってはいられない。

「やつら、一体、どうしたってんだ?」


「もしかして、前田が敵の本丸に突入したんじゃねぇか」


ウナギの質問に、アキチャが応えた。


「………エリアK」


ムクチがまた、ぼそりとつぶやく。


「どうやら…、そこに、前田が、いそうだな…、よし、おれたちも、エリアKに行くんだ!たとえ、足でまといになってもな!最後のちから、振り絞るぞ!」


ヲタが、最初に、立ち上がる。


「おお!!」

と、元気の良い声が響いた。


「なぁ、ひとつだけ、聞いてもいいか?」


ウナギが、立ち上がりつつ、ヲタに向かって、言う。


「なんだよ?」


「そのエリアKって、何処(どこ)にあるんだ?」




マジすか学園F☆#1ー10☆

わたしは、叫んでいた。

『みなみ──!』

ただ、ただ、子供のように泣き叫んでいた。

『嘘だろ…、嘘だろッ!みなみ!』

信じられなかった。信じたくなかった。


『わたしのせいで…、わたしのせいで、“みなみ”は─、ああああああああああああああああああああああああ!』

そのときの
わたしは、病院の処置室の前で、
大親友(マブダチ)が死んでいくのを、ただ、泣き叫びながら、見ていることしか出来なかった。

ほかに、何も、出来なかった。

何も─。


正直、そのあとのことは、あまり覚えていない。

それからのわたしは、まるで、抜け殻のようだったから。

魂を引きちぎられたかのような痛みと絶望。

そのあとに待っていたものは、寒々しいくらい、ただ、空虚だった。

虚しかった。

自然と
学校へは
行かなくなった。


街をふらついていると、喧嘩をふっかけられることもよくあった。

このまま、殴られて、死んでしまえば、いいのに。でも、気がつけば、いつも、相手が地面に倒れ伏していた。

そのたび、わたしは後悔した。


喧嘩が原因(もと)で、大親友(マブダチ)の“死”を招いたというのに。

わたしは、のうのうと生きている。

わたしは、常に、後悔していた。

そして、同時に、

怖れてもいた。


自分自身の“本能”を

制御できなくなってしまうことを──



【エリアK】


港湾地帯の海沿いを、
歩きながら、語り続ける前田の背中からは、表情を窺いしることはできなかった。それに、つき従うように、だるま、学ラン、歌舞伎シスターズの四人が、前田の独白を聞きながら、ゆっくり歩みをすすめていた。初めて聞かされた詳細な過去に、張り詰めた重い空気が辺りを流れていた。


「でも、それは、もう吹っ切れたんやなかったんですか?」

沈黙を破り、初めて、だるまが口を挟んだ。

前田が足をとめる。

「あのとき、あつ姐は、こう言うたやないですか?『わたしは孤独(ひとり)じゃないんだよな』『吹っ切れたよ』って…、それやのに…、それやのに、いきなり、“マジ女”をやめるやなんて…」


「そうだな…、そのとおりだ…、わたしは、もう、あの『事故』のことは、吹っ切れてる…、あの頃─『事故』の直後─と違って…、
“マジ女”に転入し、お前たちと出会い、ラッパッパの先輩たちとも、たくさん、拳を交わした。拳で会話が出来た。
そして、自分が変わっていくのを感じた」


暗く、誰も寄せつけようとせず、過去に縛られ、孤独に沈んでいた。そんな前田敦子が、“マジ女”に来て、ようやく、その重苦しい過去を吹き飛ばすことができたのだ。


「わたしは、そんな“マジ女”が好きだった。“マジ女”の先生や先輩、後輩たちが好きだった。仲間が好きだった。
“ダチ”が好きだった。みんなが…

だから、わたしは…、“マジ女”をやめたんだ」


「どうして?」という言葉を四人が同時に飲み込む。


「さっきも言ったように、わたしには、ずっと、怖れていることがあった。それを、最近、特に、強く感じるようになっていたんだ」

前田は、背中を向けたまま、語り続ける。
固唾をのんで、前田の背中を見つめる四人。


「わたしが、怖れていること、それは、喧嘩で、仲間が、傷ついたり、そのなかで、また、誰かが“いのち”を落としてしまうような…、
そして、そうなったとき、昔のように、また、わたしは…、いや…

わたしが、本当に、怖れていること、それは─」

前田がうめくように、つぶやく。

「わたしが…、“マジ”じゃなくなることだ…

わたしが“マジ”じゃなくなってしまったら、もう…、“あいつ”には会えないような…
合わす…顔が…、ない気がして…」


幻でもいい。何だっていい。

死んだ後の世界が─、天国なんてものが、本当にあるのなら。
そのときは、必ず、
会って、言いたい。


ひとこと。


ごめん…と。


身を切るような激白に、四人は、痛いほど、共感し、
また、深く理解を示し、その言葉をしっかりと受けとめていた。

自分自身が変わっていく恐怖。

“マジ女”のためを思い、“マジ女”に迷惑をかけることのないよう、学校に別れを告げるしかなかった。

どんなにか悩んだに違いない。苦しんだに違いない。

そして、ひとり、無謀にも、大阪まで、敵の本拠地まで乗り込んできた。この前田の行動に、四人は、胸が熱くなるのを覚えた。


学ランは、前田の傷ついた背中に近づき、そっと、右肩に手をのせた。

「敦子…、心配すんな。お前は、いつだって、“マジ”だ」

その上から、大歌舞伎も手を重ねる。

「もしも、アンタが、“マジ”じゃなくなったとしても…、ウチらがいるじゃないか」

「そうです!わたしたちがいます!いつもそばに!前田のアネキが、わたしたちを変えてくれたように。わたしたちが、また!」

小歌舞伎も手を重ねた。

最後に、だるまの大きな掌が、包みこむように重なった。

「あつ姐が…、うちらに、“マジ”の意味を、教えてくれたんや。仲間のためなら、身体張って、いつも、“いのち”懸けて…」


四人の“想い”が、右肩から、ひしひしと伝わってきた。


「お前たち…」

多くの言葉は必要ではなかった。

前田が振り向くと、皆、傷だらけの顔で笑っていた。

ここまで来てくれた。以前にも増して強くなって、こんなところまで。四人の覚悟が伝わる。


「忘れてたよ…、お前たちもわたしと同じ…、“バカ”だってことを─」

前田にも、笑顔がこぼれる。

「──来てくれて、ありがとう…、でも、わたしは…、もう…」


とまどいをみせる前田の気持ちに、気づいたように、
学ランが頷き、

「そういえば、お前に渡さなきゃいけないものがあるんだ」

お前が変わってなくてよかった、と言いながら、
懐から、何かを取り出した。

それは、前田が校長に手渡したはずの
退学届だった。


「Atsuko Maedaは成績優秀者だから、やっぱり、受理できねーってさ。返してくれって頼まれた。あ、それから、校長からの伝言だ。必ず…、ディーヴァに勝って、帰ってこいってよ」

驚きを隠せない前田に退学届を渡しながら、

「そう簡単に、うちの校長が、退学者を出すとでも思ってたのか?」


「そうかもしれないね、少年院(ネンショー)行っても、何事もなく戻ってこれたりするし。いまだかつて、ひとりの退学者も出してないってのは、校長のポリシーなのかもな」

大歌舞伎が、納得したようにうなづいていると、学ランが、付け加えた。


「でも、負けたら、全員、退学だってよ」


「どっちなんだよ、それ!」

重苦しい空気が、風に流され、
皆が、つかの間の笑顔を見せる。
そんななか、だるまが、思い出したように、懐に腕をつっこんだ。


「あつ姐…、忘れもんです」


「なんだ?勝利の手羽先か?」

学ランが、冷やかしをいれる。

しかし、だるまの手のなかのものを見て、
前田は、目をみはった。

「それは…」


だるまが、手にしていたものは、
マジすか女学園の
真紅のスカーフだった。

卒業式に、大島優子から受け取ったものに違いなかった。

「これで…、絶対に、負けられなくなったな」

前田は、それを、しっかりと受けとり、その“てっぺん”の証を首に巻いた。“てっぺん”の重圧(プレッシャー)は永遠に続く。“てっぺん”が“てっぺん”であるが故に。


「わたしは、マジ女の“てっぺん”前田敦子だ。
もう、決して、ウジウジとした弱気な自分には戻らない。
ディーヴァの総帥(あたま)が、“アイツ”の死に関わっていようがいまいが、関係ない…、わたしは…、わたしの“マジ”を貫く…、それだけだ!」

前田は、あらためて、仲間の前で、決意した。

そのとき。

ゾロゾロと、隠れて、待ち構えていたディーヴァの隊員たちが、建ち並ぶ倉庫の陰からあらわれた。みるみるうちに、囲まれていく五人。おそらく、上西ケイが敗れる前から、【エリアK】にディーヴァの総戦力を集めていたのだろう。手には、木刀や鉄パイプといった凶器を携えた荒くれ者たち。その数、八百人以上。関西最大最強の組織が牙をむく。

ディーヴァ総帥の高笑いが、聞こえてくるかのようだった。
おそらく、カメラを通して、この情景をモニターで見ているに違いない。

呆れるくらいの戦力差。
普通の感覚であれば、戦意喪失し、逃げ出しても不思議ではない状況だった。

にも関わらず、五人のなかに、怯む者はいなかった。
前田は、視線をめぐらし、この人数に対しても、臆することなく構えをとる。
そして、開戦を告げるかのように、“いのち”を預けあえる仲間に向け、こう言った。


「背中…頼むぜ」





#1 『最終局面(ラストステージ)!エリアK突入!』