マジすか学園F☆#1ー10.5
三十分程前──
【エリアG】では、
ついに、チームホルモンの五人が、多勢のディーヴァ隊員たちによって、周りを完全に、とり囲まれるという、窮地に陥っていた。五十人は、いる。かなり、奮闘はしたものの、とうとう、彼女らも体力の限界にきていた。
五人は、背中合わせになり、お互い、支えないと立っていられないくらい疲弊していた。緑のジャージは、泥と血と汗にまみれていた。
「はぁ…、はぁ…、もう、一ヶ月分くらい、喧嘩した気がするぜ…」
ウナギが、陸にうちあげられた魚のように、あえぐ。
「はぁ…、こういう場面、なんて言うんだっけ?」
アキチャの表情にも、飽き飽きとした色がみえる。
「………ティームホルモン絶体絶命」
ムクチが、ぼそりとつぶやいた。
「その通りや!もう、観念せぇや!」「散々、引っかきまわしてくれたなぁ」「もう、お前らに未来はないで!」
凶器を掲げ、威嚇するディーヴァの隊員たち。余裕がうかがえる。
そんななか、勝利を確信した
『ディーヴァ』コールが、いきなり、沸き起こった。
「ディーヴァ!ディーヴァ!」
「ディーヴァ!ディーヴァ!」
「ディーヴァ!ディーヴァ!」
「うるせ────────ッ!」
ヲタが腹の底から叫ぶ。その声は、一瞬で、勝利のコールをかき消した。
「てめーら!いい加減にしやがれ!こっちはなぁ、こんなに人数少ないってのに、そっちは、何倍の人間がいやがると思ってんだ!卑怯だと思わねーのか!
それに、てめーらの頭(あたま)、総帥とかいうやつは、おもてにも出てこねー!いったい、何してやがんだ!正々堂々、勝負しろ!」
「ハッ!総帥が出てこられるまでもないわ」
「総帥は、うちらにしたら、もはや“神”やからな」「そうや、総帥は“絶対”なんや!」
まるで、新興宗教の信者のように、総帥を崇める隊員たち。何かに縛られているように。
「じゃあ、お前ら、その“総帥”のこと、どれだけ知ってるってんだ?」
横あいからの
バンジーの思いもよらない問いかけに、ディーヴァ隊員たちは、それぞれに顔を見合わせる。
「お前、知っとるか?」「いや、よう知らんわ」「まだ、会うたことないし…」
結果。
この多勢のなかで、
誰ひとり、総帥のことを詳しく知っているものはいなかった。
「どうやら、噂は本当らしいな。ディーヴァの総帥は、隊員(下っ端)はおろか、将軍にさえ、直接、顔を見せたことがないという。出身もわからなければ、名前すら不明だってな。いつも、どこにいるかもわからない。しかし、いや、それ故に、組織は、恐怖で縛られている」
規律は絶対。違反者には制裁が待っている。どこにも逃げ場はない。
「そんなん、どうでもいいやろ!」「ディーヴァを立ち上げたんは、総帥や!」「関西を、西日本を制覇したんは、総帥のおかげなんや!」「そうや!そうや!」
動揺を示すディーヴァに、
「へっ!もう、いいだろ!カモンカモンベイビーだぜ」
ヲタが無理を承知で、強気をみせる。
「待て、ここは、“あの作戦”でいこう」
バンジーが、先走りそうなヲタに向かって言う。
「なんだ?そんないい手あんのか?」
「こうなったら、……占いだ」
「は?」
目が点になるヲタ。
「占いだよ、ホルモン占い、……いつやるんだ?」
「いまでしょ!!!」
ウナギ、アキチャ、ムクチが、口を揃えた。
「いや、絶対、いまじゃねーだろ!それに、ホルモン占いって…?」
ヲタが、わけもわからず、慌てていると、
「何を、ゴチャゴチャ言うとるんや!」「もう、ええやろ!いてまえ!」「ぶっとばしたるわ!」
機先を削がれ、静観していた
ディーヴァの隊員たちも、とうとう、しびれを切らし、一気に襲いかかってきた。
身構えるチームホルモン。
その瞬間。
プルルルルル─
一斉に、ディーヴァの隊員たちが持つ携帯電話から、ある特定の着信音が鳴り響いた。メールの一斉送信の受信。攻撃の手が止まる。
「本部からや!」「作戦変更か!」「緊急招集やて!」「エリアKや!急げ!」「ちっ!こいつら、命拾いしたな!」
メールを確認した後、
それぞれ、捨て台詞を残しながら、あっという間に、ディーヴァ隊員たちは、蜂の子を散らすように、その場から姿を消してしまった。
ズルズルとすべり落ち、座り込む五人。
「ふぅ…、なんとか、助かったな。いまのうちに体力回復しておけ」
バンジーが、ためた息を吐く。時間を引き伸ばす作戦はかろうじて成功だったようだ。こんなところで、くたばってはいられない。
「やつら、一体、どうしたってんだ?」
「もしかして、前田が敵の本丸に突入したんじゃねぇか」
ウナギの質問に、アキチャが応えた。
「………エリアK」
ムクチがまた、ぼそりとつぶやく。
「どうやら…、そこに、前田が、いそうだな…、よし、おれたちも、エリアKに行くんだ!たとえ、足でまといになってもな!最後のちから、振り絞るぞ!」
ヲタが、最初に、立ち上がる。
「おお!!」
と、元気の良い声が響いた。
「なぁ、ひとつだけ、聞いてもいいか?」
ウナギが、立ち上がりつつ、ヲタに向かって、言う。
「なんだよ?」
「そのエリアKって、何処(どこ)にあるんだ?」