某フリマサイトのトラブルが、最近いろいろニュースになっていた。
高額な商品を買ったのにゼリーが届いたとか、正しい商品を送ったのに返品で別物が返されたとか。
運営の対応もだいぶひどい、と指摘されていた。
性善説で運営されすぎている気はするし、泣き寝入りのユーザーも多いようだ。
個人的な感想としても、そこまでひどい目に遭ったことはないが、だいぶめんどくさい取引相手が多いな、という印象はあった。
以前はよく出品していたのだが、最近あまり使わなくなったのはそのせいだ。
とはいえ、不要なものを売る、というのはすぐれたエコシステムだと思う。
スマホを乗り換えたので、ひさしぶりに不要になった端末を売ってみたのだが、あいかわらずめんどくさかった……。
私は出品スタイルとして、必要な情報を最低限きっちりと書き、安めの価格で出品する。
基本的には24時間以内に売れるし、今回も売れた。
見る人の少ない早朝に出品して、しばらくたったころだ。
つぎつぎと質問が飛んできた。
本日中に発送できますか?
──はい、可能です。
運用中は充電につないだままでしたか?
──いいえ、3日ごとくらいです。
めんどくさいとはいえ、まあべつに異常な質問でもないので答えていたが、最後がひどい。
ただでさえ安値の出品に対して、1割以上の値引き交渉を仕掛けてきたのだ。
値引きしてくれるなら買ってあげますよ、という態度。
私はそういうのが嫌なので安く出品しているんだが、と内心思いつつ価格交渉は黙ってクリアする。
交渉とか駆け引きというものが、私はほんとうに苦手だ。
そんなことにかける時間は人生を無駄にしている、とすら思っている。
しかし「商人」にとっては、重要な存在理由の一端になる。
セールスマンの極意は、「いらない」と言う相手に「買わせる」ことだ。
いっぽう私は「いらない」と言ったらいらないのであって、食い下がられるとイライラしてくる。
そこをなんとかじゃねえんだよ、と。
とはいえ、彼らのやり方や能力を、全否定するわけではない。
むしろ私のような性格のほうが、一部の女子にとっては指弾すべきものとなりうる。
私は小学校の女の先生から「相手の嫌がることをしてはいけません」と教わって以来、相手が「いやだ」と言っている以上すべてアウトなのだと考えていた。
いや、いまでもある程度そう考えている。
しかしそれは、すくなくとも一部の女子にとっては都合がわるい。
生物の世界を見ても、相手の能力や必死さを選別するために、とりあえず「拒否しておく」という選択肢はよくあるのだ。
語弊があるのであまり言いたくはないが、いわゆるセクハラ問題はこの微妙な分水嶺を問うものが多い気がする。
つるし上げられる人間がだれか、という問題は大きいのだが、それにしても「多少の強引さ」ですらセクハラとして指弾されている印象が、まれによくある。
彼らを擁護するつもりがまったくないことを、まずは申し述べておかねばならない。
相手が嫌だと言ったら、やめればいいだけだ。
しかるに、ある種の「強引さ」を、すべてハラスメントとしてシャットダウンしないほうがいい、という現実問題もある。
尊敬する落語家の志ん生師匠が、こんな噺をしていた。
いや、やめて、と言いながら女は、好きな男の胸に自分から飛び込んでいく。
いや、やめて、と言いながら女は、嫌いな男がのたうちまわるダメージを与えて逃げていく。
要するに「形だけの拒否」を、どこまで理解できるかだ。
そういう人々に「売りつける」ことが、セールスマンにとっては重要なスキルとなる。
どこからが必要な強引さで、どこからがハラスメントか。
その空気が読めればなんの問題もないのだろうが、残念ながら世の中には空気の読めない人間が、けっこういる。
私は「読めない」わけではないのだが、その方面にできるだけコストをかけたくない、と思うタイプだ。
いやだと言ったらいやだし、1万円と言ったらその商品は1万円、それでいいではないか。
「そこをなんとか」する「駆け引き」を好んでするのが「商人」だ。
彼らが絶滅すればいいと思うこともあるが、絶滅しないので、そういう社会に適応しなければならない。
そんな人間が、フリマをするとどうなるか。
残念ながら、いらんストレスを感じるハメになる。
相手も安いことは理解しているだろうし、購入の意思も感じる。
応じてくれたらラッキー的な気持ちなのかもしれないが……。
値引きは難しいですかね?
などとすり寄ってくる感じは、もしかしたら「値引き交渉しないと死ぬ病」なのかもしれないな、とすら感じた。
今回にかぎって、なぜか連続で飛び込んでくる値引き交渉の波。
なにかね、この世界線には値引きしなければいけないというルールでもあるのかね?
イライラしはじめたタイミングですぐに、たぶんサイトを見る人が増えてきたのだろう、別の人が即決で買ってくれた。
私は静かにお礼を伝えて、速やかに発送した。
とある休日の朝、数時間に起こった出来事だが、なんだか必要以上に疲れた。
やっぱりフリマは控えよう、と思った。