※※ この本を読んで一言 ※※

さすが米澤穂信さんの安定の面白さ&読みやすさ。

本格ミステリー作家さんと思っていたのですが、出発点は青春賛歌だったんですね。

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米澤穂信さんの本を読むのもこれで5作品目になります。

 

そしてこの本は仕事帰りに本屋で何気なく本を見ていた時に、たまたま目につきました。

実写映画化されるほど有名なのは知っていました。

実際に本を見て薄い本なので読みやすそうと思って買いました。

 

映画の告知内容から高校生が登場すること以外知らなかったので、どんな内容なのか楽しみにして読み始めました。

 

日常系ミステリーに独特の雰囲気の高校生が解決するの青春モノで、読んでいても人が殺されるという雰囲気は一切感じず、終始安心して読めました。

 

それを特に感じるのは終盤、通常ミステリー小説であれば過去を知る糸魚川先生に話を聞く直前で糸魚川先生は殺されているところですが、この物語ではそれはなかったです(笑)。

 

それにしても序盤に描写された武道場がひとつだけ古い理由や、カンヤ祭と呼ばれる所以など、いろいろな描写が終盤に回収されていく様子はさすがは米澤さんです。

 

登場人物はやや現実離れした記号化された高校生で小説的と言えばそうなんですが、それでもギリギリこういう人っているかもと思えるのも面白く読めるポイントのひとつかもしれません。

 

主人公の奉太郎はどちらかと言うと“やれやれ系”なキャラクターの感じがしますが、そんなに嫌味な感じではないです。

 

それに奉太郎のやれやれ系な言葉は基本的に心情表現で語られており、言葉として発する「 」の中では結構気を遣って話しており、他の登場人物とも軋轢は生じていませんし、さらに少しずつ変わっていく奉太郎がうまく表現されているのも読者にも嫌味な印象を与えないのでしょうね。

 

日常系の謎というのは、もしかしたら意識しないだけで自分の身の回りに無数の謎が転がっているのではないかと思いました。

 

しかし自分の身の回りを見ても・・謎らしきモノもは見当たりません(笑)。

なかなか小説のようにはいきませんね。

私が気がつかないだけかも知れませんが。

 

読み終わってから調べて知ったのですが、この「氷菓」は米澤さんのデビュー作だったんですね!

私はてっきり新本格ミステリーの作家さんだと思っていたので、日常系ミステリーがデビュー作とは意外な感じがします。

 

既読の米澤さんの作品では「折れた竜骨」がお気に入りですが、この「古典部シリーズ」も今後も読みたいなと思いました。

 

最後の感想になりますが、過去に読んだ青春モノと言えば恩田陸さんの「六番目の小夜子」、長沢樹さんの「消失グラデーション」、古野まほろさんの「天帝のはしたなき果実」、法月綸太郎さんの「新装版 密閉教室」、行成薫さんの「名も無き世界のエンドロールを思い出します。

 

それぞれ面白さが違う作品ですが、この作品群の中では「氷菓」が一番日常的で、一番平和で、一番心穏やかに読める作品でした。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆☆

登場人物 ☆☆☆☆

謎    ☆☆

日常系  ☆☆☆☆☆