行成薫さんの作品を読むのは初めてでどんな話か楽しみにして読みました。

 

どんでん返し系のミステリー小説ではなくこれは青春小説?と思える内容です。

 

文章は会話形式が多くてとても読みやすかったです。1ページの文字数も少なくサクサク読めます。

 

その分、トリックのすごさとかどんでん返しはありません・・ってこれはどんでん返しを期待して買ったんですが(笑)

 

この物語は世界がひっくり返るというよりも、時系列を入り乱れさせて、断片的なエピソードの中に散りばめされた伏線がラストで一気に回収されると言う感じです。

 

輸入したリンゴは手榴弾だったり、リサが持ち込んだ車はヨッチをひき殺してから、しばらく経ってから持ち込まれたと分かったときは驚きました。

 

ただキダちゃんが轢かれそうになった黒のステーションワゴンはなぜ出てきたのか私は理解できませんでした。読み直せば分かるものなのでしょうか。

 

話の筋は最後近くまで全容が分からないものでした。

 

もっともプロポーズ大作戦とか、ヨッチが高校生以降出てこないことから、何となく想像はつき、ではリサが最終的にどうなるのかと思いながら楽しく読めました。

 

後味は悪いというか、「さみしい」終わり方でした。誰も幸せになりません。

 

物語の中では3人だけの世界が終わりエンドロールが流れても、それでも周りの世界は変わらず動いていく・・「1日あれば世界は変わる」と幾度も出てくるセリフですが、それはマコト達の個々の「世界」であって、「社会」という「世界」の枠組みはちょっとやそっとじゃ変らない、個人ではどうしようもないと言えるのではないでしょうか。

 

ところで作者の行成さんはまだ30代と若いんですね。この物語自体が2012年に発表されたものなので20代でこの物語の構想はあったでしょう。

 

そしてやはり頭がよく、普段からいろいろ考えていらっしゃるのでしょう。
 

これは行成さんの頭のよさと関係あるのかもしれませんが中学、高校のマコトやヨッチの言うことが説教くさく哲学的で、人生を諦観していることが何だか若者らしくなく、キダちゃんよりもよっぽど仙人らしいと言えます。
親のいない家庭環境を私が理解していないせいもあるのかもしれませんが、いくら何でもここまで若者らしくなくてもと思います。

 

そして「1日あれば世界は変わる」や「完璧主義者は欠陥品」、「死ぬ必要がないから生きているけど、生きる必要が無くなったら死ぬ」などの印象に残る名言的な言葉を登場人物に語らせるのは、私の場合は読んでいてちょっと冷めます。

 

どうでもいい事ですが、読んでいてこの文体どこかで見たことがあるな~と思いましたが・・何となく伊坂幸太郎さんの書き方に似ている気がしました。

 

会話の掛け合いや会話の後の言外のセリフや心情描写が特に・・気のせいかもしれませんけど。

 

そして「人生」や「生き方」のテーマは私が読んだ伊坂さんの作品「アヒルと鴨のコインロッカー」と「 重力ピエロ 」に近いものも感じるのでなおさらそう思うのかも知れません。

 

先にも述べた「人生とは何ぞや」とか「生きている意味は何か」のような題材は小説では普遍的なテーマであるので、たまにこういう本を読んで自分の今までの人生を振り返り、現在の自分、そして未来の自分を考えてみるのもいいかもしれません。

 

(個人的評価)
面白さ      ☆☆☆
登場人物   ☆☆
人生の儚さ  ☆☆☆☆☆
名言度    ☆☆☆☆