伊坂幸太郎さんの本を読むのはこの作品が初めてです。
どんでん返し系の小説という事で楽しみにしていました。
なお私が読書の先輩にこの本を読みたいというと、すぐに貸してくれました。
前半は先の展開が読めなくて、いつになったら面白くなるのかと思いながら読んでいました。
後半で現在の河崎=ドルジと判明してからは、怒涛の解決編に突入で、一気に今までの謎が解けてきました。
本屋の襲撃の理由や誤って広辞林を盗んだ理由、本屋の江尻の新聞記事など本当に数多くの伏線があったんですね・・参りました。
そして伊坂さんの文体も何となくポップで読みやすかったです。
ただ伊坂さんのそのポップな文体のせいなか、河崎=ドルジはどんでん返しとしてはややインパクトに欠けました。
ドルジの人柄はほのぼのとしてとても好感がもてます。そんな彼の生まれた国のブータンに行きたくなりました。
さすが「幸せの国」といわれているだけのことはあります。
対してドルジと行動を共にする琴美の河崎に対しての常につっかかる物言いは、読んでいる途中、少々キツイものがありました。
これでは琴美の性格が活発で気が強いというよりも、ただいやらしい性格をしているだけと思えます。
ですが琴美の未来を見ながら死んでいくシーンは、悲しくて切なく、そして美しく、この物語の中で1番印象に残る場面でした。
”3人が主役の物語”の3人とも(ドルジはあいまいですが)死亡し、途中で物語に巻き込まれた椎名もこれから進路に悩むことでしょう。
せめて3人が生まれ変わってまた出会い、椎名自身が納得できる人生が歩めればと願わずにいられません。
ところで、伊坂さんの作品を読むのは初めてですが、映画「重力ピエロ」はもう何年も前に映画館で見たことがあります。
うろ覚えですが、タイトルの”重力ピエロ”について、サーカスの空中ブランコを見て、「重力はなくす事ができる」ってみたいな事を言っていたところから取ったらしいので、「タイトルは無理にとってつけた感じ」と思ったものですが・・
そして「アヒルと鴨のコインロッカー」を読み終わって、タイトルについては全く同じ感想が思い浮かびました。
コインロッカーは最後にちょこっと出ただけであまり意味があるとも思えません。物語の中で鴨とアヒルは日本人と外国人のたとえで出てきましたが、いまいち印象に残っていません。
伊坂さんの2作品(本1冊、映画1本)だけでタイトルの付け方がワンパターン・・とは思いませんが、次にまた伊坂さんの別の本を読んだときはっきりするかも知れません。
(個人的評価)
叙述トリック ☆☆☆
インパクト ☆☆
椎名の脇役度 ☆☆☆
ブータンの好感度 ☆☆☆☆☆