今回は恩田陸さんの代表作の一つと言われ、そしてデビュー作である「六番目の小夜子」を読んでみました。

 

いつも通り、内容などの情報が入らないようにして読み始めました。

 

私が読んだ今までの恩田さんの作品(特に「Q&A」)には明確な解答はないので、読みおわっても分からないことだらけです。

これが恩田ワールドなのでしょう。

そしてデビュー作ですでにその世界観ができていたのですね。

 

そもそも私がこの作品をミステリー小説と捉えて読み始めたせいで、読んでいて”何なんだこの作品は??”と混乱しました。

不可思議な現象が起こる点では”ホラーものか?”と言えばそれも違うと思います。

 

ではこの作品は何かと言えば、ちょっと不思議なことが起こる青春小説、もしくは得体のしれない何かに巻き込まれながらも高校生が強く生きる青春賛歌です(汗)。

 

若者たちは成長し、自分の足で人生を歩みつづけるという希望のある終わり方だからうやむやでもいいんです(笑)。

というかうやむやのまま回収されない事が多すぎるので、そうでも思わないとスッキリしなさすぎます(笑)。

 

結局、サヨコを続けたがっている存在はなんなんでしょうか。

 

ラストの「再び、春」の描写からすると「桜の木」もしくは「学校の校舎」かなと思ったりしました。

また“桜の木の下には死体が埋まっている”という都市伝説もあるので、実は死んだ「二番目のサヨコ(碑に書いてあった「津村沙世子」)」が桜の木の下でサヨコを続けたがっているのかなとも思います。

 

または「学校というシステム」、もしくは「学校という概念」が、生徒たちに続けさせようとさせているのか・・

 

結局何も分からずモヤモヤします。

 

他にも読み終わってツッコミどころや疑問点はたくさんあります(笑)。

むしろたくさんありすぎるので今回はツッコミどころや疑問点を書くのをやめました(汗)。

 

さて上でこれは青春小説と書きましたが、この物語を読むと秋や由紀夫たちの高校生活がとてもキラキラと描かれています。

(ただし加藤のようなあまりにも不憫な高校生活はかわいそうです。)

 

普段の私は過去に戻ったっていいことなどないと思っているのですが、もし高校時代に秋ほど冷静に状況を分析できていれば、もしかして私の人生も変わったのかな~と・・ちょっとだけ過去に戻りたいなどとあり得ない事を思ってしまいました。

 

作中の高校生と比べるのはナンセンスなことは分かっているのですが、私が高校生の時は作中の登場人物のように現在や将来の事を真剣に考えていなかったと思います。

また友達ともいろいろなことを真剣に話をしていなかったと思います。

そして何の疑問も持たず部活をして授業を受けて、大学入試を受けてそして大学に行きました。

 

もしかして悩んだことなど忘れただけかもしれませんが・・今にして思えば、小説のような大きな事件などなく、大きな喜びも悲しみも失望もなく、将来への不安なんて考えず、のほほんと過ごしていたのだな~とあの時の自分を恥ずかしく思うとともに、そんな過ごし方ができた高校生活は幸せだったんだな~と思います。

 

デビュー作だけあって読んでいて目につくこともありますが、それでも完成度は高いと思いますし、デビュー作で恩田ワールドがすでにできあがっているのがすごいです。

これはその恩田ワールドを堪能できる1冊だったと思います。

 

(個人的評価)

面白さ    ☆☆

青春小説   ☆☆☆☆☆

うやむやさ  ☆☆☆☆☆

恩田ワールド ☆☆☆