法月綸太郎さんの作品は「 頼子のために 」に続き2作目です。
これが法月さんの24歳(!)の時に賞レースの選考の作品だそうですね。

 

頼子のために 」が本格ミステリー小説という感じだったので、これも楽しみにしてました

 

 

なお読む以前にまず驚いたのは目次です。5章まである中で、1つの章の中に項目?(サブタイトル?)が2~3ページに1つあり、その数合計147で目次が長いことでした。

 

 

これには何か意味がある、もしくは目次の中に何か言葉が隠されてるのではと思い、一生懸命探してしまいました(笑)。

 

この作品を読まれた方の何人かは同じ事をしたのではないでしょうか。

 

そして読み終わった直後は・・なにか“新本格”をこじらせたらこうなるというのを見せられた気分でした(笑)

 

 

そしてこの作品を読んだ他の方達がどういう感想を持ったのかインターネットで調べてみたら、だいたい同じ感想を持っているようなので安心しました。

 

 

やたらセリフが芝居がかっていて、演劇の舞台を見ている気分になります。

 

1980年から1990年の高校生でもこんな話し方はしないと思うのですが・・
そして登場人物のセリフがやたら哲学的だったり、地の文がやたら堅苦しい言葉の羅列だったり・・やたらの連続です。

 

なので途中で実はこれは演劇のお芝居の中での話で、ここからが現実!みたいた展開になるのかと思ったりもしました。

 

 

それに結局誰が殺したのか全て憶測でしかない・・というより何も解決していないのでモヤモヤします。

 

 

吉沢か梶川が殺したのか、もしかかしたら午後6時まで新聞部に残っていた工藤だったかもしれないし、これまた午後6時まで放送部に残っていた降旗かもしれない・・と言ったふうで何が真実か明らかにされません。

 

 

物語的になぜこんなことになるかと考えた時、「ミステリー小説の中での最高意思決定者(笑)」である探偵が不在、と言うより工藤の立ち位置がよく分からない存在だったから・・と漠然と思います。

 

 

ただし・・おそらく法月さんもこういうことは百も承知してたでしょう。

 

となると法月さんはわざと青臭い登場人物、芝居がかったセリフ回し、探偵が何度もピンチに陥るベタな展開の物語を書いた!!・・

 

・・ではなぜか?と考えながら他の方の感想を見ていたときに、「エヌ氏調査報告書~法月綸太郎氏に関するエトセトラ~」のページを読んで、モヤモヤが少し晴れました。

 

 

実は殺人事件の本編自体が工藤の作った小説(作中作)で、A(本編の作者、工藤に該当する人物?)が好意を抱いているB(女性で吉沢に該当する人物?)に本編の小説を送り、BからAへの返事がコーダの部分であるというものです。

 

 

それならば芝居がかったセリフなども納得できます。

 

本編の中で工藤は吉沢の事を好きだと言う描写もあり、告白の意味で小説を送ったが、Bにしてみたら「結局わけがわかりませんでした」であり、「私は貴方のことを同級生の一人としか考えていません。」とすげなく断られる・・・・

 

となるとこれは本格ミステリー小説というよりも青春小説ということになりますね。

 

私が購入した「新装版 密閉教室」の表紙の一番上に小さく「A DAY IN THE SCHOOL LIFE」と書いてあるので、この作品は実際には本編の作者(工藤?)の青春の1ページだったということでしょうか。

 

そしてその青春の1ページは法月さんの実体験を基にしているのではないかと勘繰ってしまいます。

 

工藤も法月さんも新聞部で、ともにミステリー小説マニアで法月さんも高校生でミステリー小説を執筆していたでしょうから、共通点も多いですし。
もちろん殺人事件は頭の中での話ですが、好きな女性にミステリー小説を送って玉砕したのかも知れませんね(笑)。

 

ただ一読者の私からしたら、それはそれとして置いといて、もう少し明確な解答がほしいです。

 

 

だからと言ってつまらないと言うことは全くなくて、殺人の舞台設定の「密室」に関しては引きつけるものがあり、最初から最後まで目が離せませんでしたし、上でベタな展開と言いましたが、目まぐるしく変わる展開も飽きが来ないようになっており、本格ミステリー小説として楽しく読めました。

 

 

さてここからどうでもいいツッコミになります。

 

 

1つめは芝居がかっているにしても度を超してます(笑)。

 

そして工藤はそのせいで生意気でこしゃくな感じがしますし、真部の第一部での独白は後半に渡辺信子という理由が判明しましたが、第一部での独白のときは本当に意味不明でポカーンとしてしまいました。
さらに大神の中町の自殺の説明や工藤犯人説を唱える場面に至っては芝居がかりすぎて、犯人ではないかと疑ってしまいました。

 

2つめは大きな謎であった机と椅子の消失は、工藤の冴えた推理で見つけました。しかし同じフロアの別の教室に分散されていたというのに、そのクラスの生徒が気がつかないことが変です。

 

 

自分のクラスに机が8組も増えてたら、まずそこの生徒が工藤より先に気がついて先生なり警察なりに報告すると思います。

 

しかも6クラスに分かれて置かれていたらどこかのクラスの生徒が気づくはずですが。
しかしそんなことしたら工藤の推理を披露する場が1つ減ってしまいますけどね。

 

いろいろ批判めいたものを書きましたが、私にしてみれば読後にここまで考えさせられるのはあまりないので、印象深い作品になりました。

 

 

(個人的評価)

 

面白さ ☆☆
読後感 ☆
トリック ☆☆☆
青臭さ ☆☆☆☆