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本・漫画・映画のレビューブログ。
本は月に10冊ほど、漫画は随時、
映画はWOWOWとTSUTAYAのお気持ち次第(笑)

ナイト ミュージアム
¥1,670
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ナイトミュージアム ベン・スティラー主演

あやふやな夢を追い続け、職を点々とする主人公。
息子に愛想を尽かされないよう、覚悟を決めて、博物館の夜間警備員の仕事に着く。
だが、その博物館は、夜になると展示物に命が宿る不思議な空間だった。

遅ればせながら見ました。
ベン・スティラー超好きなんで面白かった。
安心して楽しめた。
ストーリーは単純明快、離婚した妻の元にいる息子に、
父親の意地、父親の尊厳を見せようと奮闘する話。
まー、それはスパイスみたいなもんで、メインは、
「あれっ!?展示物が動くよ!面白いねっ」
のみ。

んで、その、”のみ”が非常に夢溢れてて好きだ。
ティラノサウルスの骨格は、わんちゃんのように遊びたがりだし、
お猿はいたずら、小生意気。
アメリカ開拓民や、ローマ兵士は血気盛んで向こう見ず。
個性豊かで陽気な仲間と、ケンカあり、仲直りあり、パーティあり。

ミニミニ開拓民とローマ兵が好きだな。
ちっちゃいだけで、血気盛んな困ったちゃんが、可愛く思える。
最後は、ナイスガッツ!だし。

あー、でも、こう書くと、なんてハリウッド伝統にのっとった映画…
いろーんなヒトビトが、一箇所で一気に生きてる社会だから、
こういう作りになるんかなー。
んで、どれも、人間側に引き込んだ性格設定だよね。

だってきっと、日本で作ったら、ティラノはわんちゃんキャラにならないよね。
おごそかで、人好きするけど、絶対に人が踏み込めない一線を持ってるキャラになると思う。
和製だと、人以外や、自然は、それそのものの生命で、
仲良くなっても、完全に人側に引き込めるものじゃない、屈しない、おごそか、みたいなとこあるじゃん。
なんか変な言い方だけど。


死ぬことと見つけたり〈上〉 (新潮文庫)/隆 慶一郎
¥580
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死ぬことと見つけたり〈下〉 (新潮文庫)/隆 慶一郎
¥620
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死ぬことと見つけたり 隆 慶一郎著

武士たるものは、どう生きるべきか。
斉藤杢之助、中野求馬の人生を描く。
佐賀藩を舞台にした、男たちの生き様を綴った作品。


葉隠を元にして、隆 慶一郎が書き上げた傑作。
非常に残念ながら、隆さんは、志半ばにしてお亡くなりになられたので、
クライマックスが永遠にないです。
でも編集後記で補完されてるんで、一応結末は知れます。

葉隠自体は読んだことないケド、
これはすごく楽しめた。
無茶だ。
だがカッコいい。
それに尽きる。

主人公は斉藤杢之助。
この男が、佐賀武士の見本らしいんだけど、ひっじょーおに無茶。
目的を果たすためには、協調も自分の命も関係なし。
ただただ、武士の本分を遂げるためだけに生きてる。
守るべきものは佐賀藩。
そのためには、究極の手段をこともなげに選ぶ。
事情を鑑みて、など一切無し。
目的をとにかく遂げるのみ。

むちゃくちゃなんだけど、芯が通ってるし、絶対ぶれない、
なんでも必ずやり遂げる様がカッコいい。

好きなエピソードは、天草の乱で、フライングして、一騎打ちを仕掛けるところ。
これは、藩が勝つためでもあるけど、自分が戦いたかったからでもあるよね。
その、相手に敬意を表した一騎打ちが爽やか。

そして、僧に化けて、お経を唱えるところ。
奇天烈な作戦だけど、これは効くわ。
んで、何かあったら、斬り込む覚悟だし。
一見すると山田風太郎的奇策だけども、印象深かった。

んだが。
この滅私奉公っぷり、まさに、生きる道具…
生き様はカッコいいけど、藩のため、”ワタクシ”は初めからないんだなぁ。
それが彼の生きる道だからいいんだけどさ、
そこまでして守り抜くものってなんなんだろうね。
親子三代命を賭しても、三代目の若殿さまは、全然なってない殿様で、
でも、そんなんでも世襲制だから、リーダーなんだよねぇ。

まぁ、その問いは作品中にも出てくるんですけど。
戦国時代なら、こういう武士こそ、誉だったんだろうなぁ。
やらなければ、他の藩に攻め入られるんだもん。
藩、そこに住む人々を守るため。
殿様だって、へたれじゃ速攻潰されるしさ。

でも、太平の世に突入すると、ゆるゆると存在価値がなくなってくんだなぁ。
だって、武力で戦う相手がそんなにいないから。
一揆の農民とか、幕府とか、でもそんな、毎日じゃないし。
真っ直ぐに、忠実に、命を完全燃焼して生きようと思っても、その場所が無い。
中野求馬の生き方ならアリだけど。
なんか、下巻に向かうに従って、そんな切なさがある。

あと、女性の扱い方がひどい(笑)
女性軽視ってわけじゃないだろけど、むしろ、隆さんはマイノリティにとても優しい作家さんだけど、
生まれた時代的なもんなのかなぁ。

杢之助の妻が可哀想だ、普通に。
どんな境遇でも夫を愛し、また、その俗人っぷりで、夫のヒーローっぷりを引き立てる役なんだけど。
まず、最初がいかんよね(笑)
初めての場所は、巨大猪狩った直後の、洞穴の中ですから…
そのままなし崩しに結婚、
でも、夫は”生ける屍”を自称(つまり、藩のために使う命だから、いつでも死地に赴く)してるから、
すぐにフラフラいなくなるし。
それに対して意見すると、『所詮武家の嫁にはなれぬ女だ』とか、書かれるし。
で、結婚してるのに、杢之助の生涯唯一憧れの人ではないんだよねぇ。
真剣に惚れた相手は別にいるから。
まぁ、実際を知らないから、ずーっと惚れ続けていられる、てのもありそう。

あ、でも、娘は好きだ。
娘、最強の剣士だから。
このエピソードはすっごい面白かった。
女剣士ってだけで馬鹿にされ、いじめ吹っかけられてるけど、
全力でそれに対抗するところとか、弱いけど、気の利く兄ちゃんとか、
美男の婚約者とか。
これだけで話かけちゃうじゃんね。

と、物語として抜群に面白いです、これは。
破天荒なヒーローの生き様。
目的、守るべきもの、果たすべきもの、を何に据えるか、って超重要な問題をクリアすれば、
とにかく、それを遂げるために全てを賭すってのはカッコいいね。
本当にその覚悟があればなんでも出来る。
でも、そこまでして守りたいもの、果たしたいものってなんだ。

あと、これ読んで、武士漫画の道志郎は、意外にリアル武士だ!と思いました。

 
新・少林寺三十六房/リュー・チャーフィー
¥3,845
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新・少林寺三十六房 リュー・チャーフィ主役じゃないけど主役級。

フォン・サイヨは、能力はあるがお調子者の向こう見ず。
圧制者に反抗し、家の危機を招いてしまう。
私刑から逃れるため、少林寺三十六房に入門させてもらうが。

少林寺三十六房の正確な続編ていうとこれ。
そして、このシリーズの最終作。
リュー・チャーフィが、サンダ和尚役で登場。
無茶はしませんが、画面を締める頼もしい存在感を示しています。

んだが、この話の主役はフォン・サイヨ(役名。俳優名はシャオ・ホゥらしい)。
にやけた顔のお調子者。
めちゃ強いが、甘やかされていて、まず人の話を聞かず、ゴーイングマイウェイ。
だが気がいいのか、仲間や先輩にも愛される。
まぁ、気がいいというか、自慢屋だけど実際強いし、あっけらかんとして悪意は無いし、
皆を積極的に盛り上げてくれるからだろうね。
トリック・スター的というか、孫悟空というか、
憎めないところがいい。

そして、サイヨのママ。
美女かつ、クンフーの天才。
愛らしい、ピンクのチャイナ服で、がっつんがっつん敵をなぎ倒すのが小気味いい。
強く、美しく、命を賭しても息子やダンナを守る、妻・ママ・女の鑑なんだけど、
そんなことはほっといて、クンフー・マスターな美女はヨシ(笑)
前2作、守られる女しか出てこなかったのに、
今作で初めて、少林寺のクンフーをマスターした女性が出てくるわけです。
見ごたえありますよ。

家族愛、友人愛が、今作の要。
トラブルメイカーの息子を守るママ、兄ちゃんたち。
自信家だけど、憎めない同輩ときゃーきゃー盛り上がる、同門の仲間。
1作目が傑作だったので、それには少し劣るけど、
これはこれでアリ。

このシリーズの見所のひとつ、無茶修行はあまり出てきません。
てか、出てくるけど、
「先輩がた、こんなので苦労してるの?俺はひとりで出来るぜ、そりゃー」
な、展開ばかり。
サイヨ最強すぎ。
でもメンタルこども過ぎ。

主役の魅力がイマイチなのが、一番の問題じゃなかろーか。
サイヨっていう役自体はまあいいとして、役者が、自分自身の魅力を存分に生かしきれなかったか、
それほどのカリスマ性がなかったんだと思う。
主役じゃない、リュー・カーフィ目立ってるしね。
目力。

でも、ラストシーン見ると、あ、面白かったなぁ、と思える。
ラストがいいんだよね。

負傷したサイヨ含め、同門の仲間で、
「やった、やった!勝った!」
と無邪気に跳ね回る。
ほんっとーに跳ね回ってるの。
雨後の蛙か!?ってくらい、跳ね回ってるんですわ、これが。
ちょ、きみら、無邪気すぎ!みたいな。

大立ち回りをしたあげくに、このあほさ。
んで、サンダ和尚がくると、速攻仮病。
この、素晴らしい体格をした、武術家たちが、この無邪気さ。
それが実は、一番の見所だったんではなかろーかと。





続・少林寺三十六房/リュー・チャーフィー
¥3,333
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続・少林寺三十六房 リュー・チャーフィ主演。

仕事を悪辣な輩に奪われた主人公は、仲間を代表して少林寺に潜入。
三十六房でクンフーを教えてはもらえないものの、サンダ和尚の言いつけを守りながら、
修行を盗み見て強くなっていく。

続、ですが、あんま続ってません。
リリース時期を見ると、少林寺三十六房と同じ年なので、
リュー・チャーフィ主演の少林寺もの、って意味で”続”なんだろね。

前回サンダ和尚役で、少林寺三十六房の創始者を演じたリュー・チャーフィが、
今作は、お調子者の若者を熱演。
かなりファニーな役どころ。
真面目で芯の通ってるサンダ役の印象が強いせいで物足りないけど、
こんなあっかるくて、ノリのいいリュー・チャーフィもアリ。

前半は、いかにして、少林寺に乗り込めるのか!?が、非常に面白おかしく描かれ、
その道化っぽいやりとりに笑う。
後半は、無茶を言い渡された、と思っていたのが、実はいい修行になっていた、
という、これも、往年の少年漫画的展開。

特に、足場を組め、といわれて、1年以上も頑張った作業が、後半で存分に生かされる展開はスカッとする。
よくぞ伏線回収してくれました!な。

肝心の少林寺無茶修行は健在ですが、
前作ほどのオドロキはなく。
普通に「すげー!」な武術修行。
つくづく、こんなお坊さんが量産されてたら、
そりゃ行政もおいそれと手を出せないよな、と思う。

てか不思議なんだけど、日本の僧兵といい、なんでお坊さんが戦うんだろうね?
宗教の弾圧者と戦うためなのか?

強くなって悪を倒すぞ!
と、単純な筋書きはそのまんまなので楽しめます。

あと、こゆの見てると、中国のお国柄もしのばれる。
あれ、これ香港だったけ?
まあいいや。

前作と共通するのは、虐げられた漢民族が、いかに抵抗して勝利を勝ち取るか、なんだよね。
んで、虐げる立場の、この中では満州族なんだけど、ステレオタイプ的に悪いわけ。
んで、その悪さの内容が、中国的だなぁ、と。
自分が思いつく悪さなんだから、逆を言えば、自分が圧制者の場合に行うであろう行動のはず。
そーすると、今のチベット問題とか…
おそろしい。
大陸は過激です。
少林寺三十六房/リュー・チャーフィー
¥3,280
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少林寺三十六房 リュー・チャーフィ主演

漢民族が虐げられる時代。
家族、友人を殺されたサンダは、少林寺へ入門し、
武術の達人になって目的を果たす。

お久しぶりです。
キマグレ、キマグレンな更新で申し訳ないことです。
特に、いない間も覗いたり、ペタってくれた方に感謝です。
ありがとうございます。

ところで今一番アツイ映画は何か!
クンフーです、少林寺三十六房ですよ!
WOWOWがやってくれました!
70年代の、クンフー・エンターティメントの良作だとか。
むしろ傑作。

ベタベタなストーリー、無茶な展開、
常に上半身裸で、油でテカテカマッチョ強調!
気持ち悪い!
だがハマる!
京劇風な眉毛だろうが、目がキランキランしている主人公にハマる。
ラストでは大ファンになってしまう。

この映画は筋立てはどうでもいいんですよ。
圧制者に対抗するヒーローものだから。
少林寺の修行の無茶ッぷりがすばらしーの。
B級最高!
B級大好き!
なんにも考えず、ただただシンプルに楽しめるなんて最高じゃないかー。

主人公サンダは、少林寺になんとか入門して、そこで修行していくんだけど、
そのためには、三十五の房を回って、ひとうひとつ鍛錬を重ね、
技を身につけていくんですね。

第一の房では、ごはんを食べるために、池に浮いた丸太の上を軽やかに渡らなければならない。
きみは忍者か。
池ポチャするとごはん抜き。
まったくなってない主人公サンダは、夜密かに修行するわけです。
その回あって、秘儀を会得すると、お師匠様がおもむろに現れ、
「やったな、サンダ。最早この房にいてはならん」
とか言うわけ。
ストーキングしてたんですか!
何故夜中の練習を知っている。

他には、腕を鍛えるため、二の腕にナイフをつけて、水桶を運ぶ鍛錬。
腕が下がると、胴にナイフが刺さるから、死ぬ気で腕が強くなる。
とか、
頭を鍛えるために、ひたすら、砂袋に頭突きしていく。
とか。

ムチャな!

こんなおもろい映画、他にないです。
ムチャだけど、少年漫画的にアツくて、なんかハマッちゃうの。
B級好き以外にはオススメしないけど。

んで、これって、ドラゴンボールの元ネタだよね!?
少林寺の修行僧の服が、まんまクリリン。
おでこのポツポツもそう。
あと、桃白白が出てくるよ!
服と、身のこなし、ポージングがまんまなの!
絶対、これ元ネタだよ~~
鳥山明も好きなんだ、これ。
悪役の服、鶴仙人みたいだったもん。
チャオズ帽子出てきたもん~~

といった点でも楽しめます。
だから、B級好きとドラゴンボール好きは見るべき!
ほんっと面白い。

秘密の花園/ケイト・メイバリー
¥1,349
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孤児になった少女メアリーは、引き取られた先のお屋敷で、閉じられた庭を見つける。
枯れて眠り続ける庭を、使用人の弟と、お屋敷の息子と共に
甦らせようとする。

アグニシュカ・ホラント監督 秘密の花園。

あの有名な小説の実写映画。
イギリスの美しい自然、上流階級の生活の中で、
こどもの成長が描かれます。

なんか昔から大好きな作品。
映像の美しさもだけど、なにより、愛に飢えているふたりのこどもの葛藤が好きなのかも。

お屋敷の息子コリンの歪みっぷりがまた、もの凄くへヴィなんだもんさ。
行き過ぎた愛情のために、一度も外に出たことも、自分の足で歩いたこともなく、
お屋敷の地下、ベッドの上で10歳まで成長した少年。
ひ弱でワガママで、でも、痛いほど純粋な部分も持っている。

軟禁というか、監禁というか。
父親は殆ど顔を見せず、世話係も、常にマスクと手袋で、痛々しく扱う。
この病的なスレスレ感がもうね。
あと一歩で、危険な世界へ行ってしまう!みたいな。
健康な成長を阻害されてる不自然さと、
普通の生活を知らないために、好きなこを引き止めるために高飛車に話し、
ヒステリーを起こすしかない、感情表現の下手さと。

それが、10歳の生っ白い少年なもんだから、危険さ割り増し。
あと一歩、踏み外したら危ない!みたいな。
激しく歪んでるけど、あと一歩で踏みとどまってる感が強烈な魅力。

それが、メアリーという、こちらも感情機能不全の少女の乱入によって、
少しずつまともな方向に向かい始め、
すっかり、表情も柔らかく、そのへんのこどもと変わらないようになってからもどきどき。

メアリーに淡い恋をしてることに少し気付く場面。
メアリーと、もうひとりの友達、使用人の弟ディコンを写真に撮ってあげるんだけど、
「見詰め合って!」
って自分で指示出したくせに、ふたりがいつまでも視線を離さないものだから、
段々危機感が募ってきて、
「離れろ!早く!」
と叫ぶシーン。

コリンはメアリーのおかげで、屋敷の外の世界を知って、
自分で立ったり歩いたりする力を取り戻したと言っても過言ではない。
恩人であり、精神的に依存してもいる、そして淡い恋の相手でもあるからこその危機感。
それを、鑑賞者は分かるから、なおヒヤヒヤ。
コリンの歪みっぷりを前半とっくりと見せられたからね。

そしてラスト。
妻を失った悲しみから10年間立ち直れず、半年は旅に出たまま戻らない父親を呼び戻すため、
こどもたちは”魔法”を使う。
焚き火をして、その周りを呪文を唱えながらめぐるだけの、もの。
でも、コリンの必死さが胸を打つ。
魔法だなんて、不確かで実のないものに頼ることしか知らないのがあまりにも哀れで。
必死になればなるほど痛々しい。

と、全編ヒリヒリ感を根底に流しているけど、
結局はハッピーエンドに落ち着くから、あー、良かった、ほっとした。
となるし、「いい話だったなー」とかなるけども、
コリンの強烈な歪みっぷりて、現代人の心の問題作品の、歪みっぷりにも通じるんだよね。
大分古い、児童文学作品なのに、それがより強烈だから、
昔の作品てあなどれねーなー、残る作品って、キワいもん多いよなーとか思ってしまった。

そんな、前面には出ないけれども、薄氷を踏むようなヒヤっと感を味わえるのも
監督の手腕ではないかと。
要所要所、コリンの精神性を案じさせるシーンが上手いんだよね。
さっきの、写真のシーンだって、「離れろ!」と叫び続けるのに、ふたりはけして目を離さない。
そして、鑑賞者も落ち着かなくなってくるまで引っ張って、場面転換。
結局、ふたりが視線を離しました、てシーンはナシ。
このスッキリしない余韻。

そういう心理描写が、美しい庭園や、寂しいヒースの丘に囲まれた、古めかしいお屋敷で繰り広げられる。
綺麗だけど物悲しい雰囲気がまた、好き。

うめえなもう
ザ・クロマニヨンズ
アルバムCAVE PARTY収録。

今日このうたがとても好きなので書く。

なーにーこーのーうーたー!!
そのまま過ぎて好き過ぎる。

すすむ~
すすむ~
ごはんがすすむ♪

だけだもんね。
まぁそのおかずは自分の足や背中という、
シュールなんだか何かブラックなんだかよくわかんないんだけども、

うめえなもう
うめえなもう

とかシンプルなフレーズで繰り返されるとどうでもよくなってくる。
てか、
「米最高じゃね?」
だけで作ったんでないかと思ってしまうくらいのストレートさ。

いいな~
メッセージどころか、瞬間の感情を切り取っただけのようなシンプルさ。
どシンプル過ぎて、ヒロト&マーシー以外には逆に作れないような感じが好きだ。
世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す/ヒュー・マーロウ
¥3,711
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宇宙開発局に勤めるハンサムな博士は、美しい若妻と結婚したばかりである。
らぶらぶでドライブ中に、UFOが現れ、謎のメッセージを残していった。
それから次々とUFOが現れ、地球は絶対的危機に陥る!

いやいや。
いやいや。
B級カワイイ(笑)
アメリカンばんざーい!美男美女ばんざーい!レトロSFばんざぁーい!
…なSFで、ここまでリアルレトロだと、逆に楽しめるってもんです。

普通にB級パニック映画なので、UFOの激強さと、地球の危機に素でハラハラしました。
UFO最強ですから。
光線びぃーむっ!で、ニンゲンおさらば、建物おさらば。
誘拐されたら、脳みそがなんか透ける光線で、記憶奪われちゃうから。
こえー。

べたべた(というか、これがUFOものの原型なのか?)な、銀色の円盤といい、
どう見ても着ぐるみーずな、もたもた歩く宇宙人といい、
あまりのチープっぷりにきゅんきゅんする。
しかも、合成、結構頑張ってるんだな。
初期の技術で頑張って、頑張って、やってる感がとても微笑ましく、
現在の個人作成のネットムービー見てる気分です。

主人公の博士が、昔のアメリカ映画らしく、壮年の美形で、頭が良く地球を救う
白人バンザイ!ヒーローバンザイ!な展開がまた、レトロ感を誘う。
美味しいとこ全部取りだからね。
妻も、気丈な妻っぷりを見せるも、基本的に飾り物だからね。

とか突っ込みつつ、最強宇宙人に対応すべく、対抗技術開発にいそしむ姿に見入ってしまった。
強大なものに協力して立ち向かう姿は見応えがあるね。
オチもなかなか、シュールで良かった。
書いちゃうけど、実は宇宙人はみんな年寄りなんだな。
あっ、そーくるか、みたいな。

にしても、この宇宙人のデザイン、キモカワイイっす。


サン・ジャックへの道/ミュリエル・ロバン
¥3,786
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コリーヌ・セロー監督 サン・ジャックへの道

聖地サン・ジャックへの巡礼の旅。それは全て徒歩で行わなければならない過酷なもの。
遺産相続の条件として、巡礼強制参加の仲の悪い3兄弟を始めとして、
メッカ巡礼と勘違いして参加する少年、恋のために参加する少年など、波乱万丈なロードムービー。

フランスからスペインまで1500キロ。
飛行機も鉄道もあるこの現代にオール徒歩。
しかも、巡礼なのに、神を信じているものはほとんどおらず。
罰当たりなわりに頑張っちゃうのは、それぞれに理由があるから。

現代的な個々人の問題が、集団生活と過酷な旅の中で明らかになり、解決していく、
ベタっちゃベタなロードムービーだけど、好き。
ていうか、こういうロードムービーこそ好き。

1500キロもひたすら歩くという、無茶ッぷりがまず、いいじゃないか(笑)
だだッ広い草原や、山道をただ歩く。
ひたすら歩く。
2ヶ月間毎日、歩くことが仕事。
単純きわまる苦行。
仕事も勉強もせずにただ歩き続ける、踏破することを目指す、
そのシンプルさから見えてくるものがあるから。

群像劇だけども、一応主人公のグループは、仲の悪い3兄弟。
どれだけ仲が悪いかというと、取っ組み合いのケンカをするほど。
4,50代のおっちゃん、おばたんがつかみ合いの大喧嘩をするのは中々迫力。

長男は社会的・経済的成功者だけども、アル中の妻を抱え、体のあちこちにガタが来てる。
次女は高校教師だけども、性格がきつく、次男を軽蔑している。
次男は、アル中気味の無職人で、長男にたかって生きている。

あー、なんて大人気ないヒトビトなんだ、と呆れながら見てしまう。
けど、この超利己主義、自分勝手、まさに個人主義の国フランス的なひとびとが、
歩き続ける生活の中で、他人と寄りそうことを学んでいく。
他人の問題を考える、思い遣ることを覚えていく。

彼らに影響を与え、関わりあっていく他の巡礼者たちのうち、
アラブ人の少年二人がとても印象深い。
ひとりは、恋する同級生と一緒に旅したくて参加した少年。
その親友は、いいように言いくるめられて、メッカ巡礼だと思って参加。
この少年のピュアさに胸を打たれる。

はじめは、ピュアというより、ちょっと頭の足りない様子で、「大丈夫か!?このこ」なんだけど、
本当は、ものすごくお母さん思いのすごくいい子なのが、各エピソードで描かれる。
メッカ巡礼じゃないことを本当はわかってたけど、親友のために参加を決める。
すごく貧しくて、お母さんの溜めたなけなしのお金を使って。
まぁ、何故お母さんがお金を出してくれたのか、っていうのはラストへの伏線なんだけど、
息子にいい思いをさせてあげたい、字を覚えさせてあげたい、信心深い、いいお母さんなんだよね。
「メッカ巡礼」で、病気の平癒と、あなたが字を覚えられるように祈ってきてね、と送り出す。
お母さんは病気だから。
少年は病気の詳細は知らないけど、
字が読めるようになって、いい仕事に着いてお母さんに楽をさせてあげたいと望んでる。

後半は、
彼に字を教えることで、次女の高校教師は優しさを覚えていく。
少年達はアラブ人のために、差別を受けるんだけど、
旅の仲間への理不尽な差別に、長男は仲間をかばうこと、人を思い遣ることを知る。
次男も恋をして、成長する。

兄弟たちの問題はそれなりに解決していくんだけど、
彼らに変化を与えたきっかけでもある少年には、不幸が待っている。

この結末がなんとも理不尽で切ない。
最も純粋で、非が無いような人間が、一番大切なものを亡くしてしまうという。
結局はハッピーエンドになるんだけども。

美男美女も天才も出てこず、ふっつーのヒトビトの人生のアレコレ、
それにまつわる社会の問題も描かれる。
まず、巡礼の旅なのにまともな信仰者がいないこと、すでに、観光ツアーと化していること。
フランス人の、外国人問題。
特に差別、就職問題。
少年二人は、よれよれの服に小さなスポーツバッグで参加するのに、
他の参加者は綺麗な格好で、荷物が重すぎるから途中で捨てるブルジョワッぷり。

でも、けしてそれが表に出すぎず、静かに心に残るように工夫されてる。
人間模様もへヴィ過ぎず、監督の暖かい目線や、ファニーなエピソードで楽しく観ることが出来る。
「メッカはまだかなっ!」
とかいう、前半の少年とか。
「メッカじゃなくてキリスト教だよ!?」みたいな。

フランスからスペインの景色も素晴らしいんだけど、
主人公達の心象風景として描かれる夢の風景が、シュルレアリズムの絵画のようで綺麗。
広い平原。手を振る黒い女。馬に変化する。荒野の真ん中で酒に溺れていく女。
こういう、シンボリックで絵画的な映像はさすがヨーロッパセンス。




日本人の思い/ほぼ日刊イトイ新聞
¥1,575
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日本人の思い ほぼ日刊イトイ新聞

ほぼ日サイト上の人気コンテンツを書籍化。
「あなたはモテますか?」など、単純な質問に対する答えを集め、
日本人総数の思いを浮かび上がらせる。

これはね、読むのにけっこー時間がかかります。
なんせ、かなりボリューム。枕になりそだ。

この答え=日本人の思いの平均、なんてことはもちろんないケド、
(ほぼ日ユーザーだっていう、フィルターが既にかかってるしね)
男女別、年齢別、都道府県別にグラフ化されたまとめが結構面白い。

これだけのボリュームの質問と答えがあるからこそ、
今の日本人のある側面が見える、よーな気がする。
自己評価が低く、わりと適当で、常に疲れているとか。
自分は本当はこうだけども、世間一般は自分とは反対の人が多いだろう、と思っているとか。
なんとなく思い描いていた”日本人像”と、実際はちょっと違うんじゃないか?と思えてくる。
お遊びだ、面白いな、と読みつつ、
でもほんとは意義深いんじゃね?
ちょっと、現代日本人の気質に詳しくなっちゃったぜ、えへへ。
などとこっそり思うことも可。

ほぼ日サイトのまったり、もったり、ちょっと知的感に溢れていて、穏やかに読めるけど、
もう少しエッジの効いた質問も見たかったかなぁ、と思う。
ちょぴっと意地悪問題ね。
あんまり穏やかなものだから。

都道府県別の回答グラフが思いのほか面白かった。
これが不思議と、個性の強い県があるもので。
各県ごとに何人が答えているのか分からないから、個性の強い数人のせいなのか、
ほんとに県気質のせいなのかわかんないけど。
山梨県。
かなり質問の答えが極端で、激しく気になる。
自分に自信があるようでいて、あともう一歩でへたれてる感じ。
山梨県はなにものなんだ。
何か、非常にユニークな個性を持っているようだ。
山梨県出身の有名人とかわかんないけどね。
フジファブリックの志村くんぐらいだ。

でも一番の読みどころは、回答者のお答えメールかも。
きみらは何かのプロか?!と思うような、やけに面白いメールばかり。
文章のうまい人が世の中には多いのか、それを拾う選者がいいのかは定かではない。

基本的に凹んでいるひとや、
ぎょっとするような体験をしているのに、飄々としている人、あまりにもバラエティ豊か。
想像力のある作家さんなら、これをネタに小説かけちゃいそうなユニークなものが多い。
字が小さくて読みづらいけど、雑誌の体験談のちょっと上品&インテリ版みたいなふう。

ネット→書籍化にあたって、お答えメールのセレクトは少し変わったらしくて、
リアルタイムで読んでいたときのお気に入りメールが無かったのがちょっと残念だったな。
「わたしはモテます」って答えた女の人で、
結婚して落ち着いてからは、近所のこどもにモテモテで、3歳児にナンパされたって話、
めっちゃ面白かったんだけど。
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