ナショナル・シアター・ライヴ「ワーニャ」 | First Chance to See...

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 チェーホフの傑作戯曲「ワーニャ伯父さん」をアンドリュー・スコットの一人芝居として上演する。それも、現代に翻案して上演する。

 

 

 アンドリュー・スコットは私も大好きだし(ナショナル・シアター・ライヴ「プレゼント・ラフター」も良かったよねえ)、現地での評判は上々、チケット完売で大人気だったのは知っている。が、「ワーニャ伯父さん」の戯曲そのものに思い入れたっぷりな私としては、不安がないとは言い切れない。何せ、ナショナル・シアター・ライヴ「シラノ・ド・ベルジュラック」の時にはまんまと私の中の戯曲原理主義マインドが発動し、心の中でたびたび「違うだろーーー!」と叫んじゃったからな。今回は大丈夫かな、と、ドキドキしながら映画館に向かったところ、

 

 この一人芝居、この翻案は正解! 素人の勝手な言い草なのは承知の上で、でも私が思うところの「ワーニャ伯父さん」のコアとかツボをはずしてない! これなら、ワーニャの妹が結婚した相手の職業を大学教授から映画監督に変更したのも許す!!!

 

 アンドリュー・スコットが8人の役を演じ分けることについては、彼の役者としての技量が素晴らしいことは言うに及ばず、人物の入れ替わりを上手に演出しているなあとも思った。さらに言うと、そもそも「ワーニャ伯父さん」を一人芝居として翻案して上演することに「アンドリュー・スコットの演じ分けショー」以上の意味があるのかとの懸念もあったが、設定上では複数の人が舞台に立っているはずだけど実際には一人の役者しかいないため、むしろ戯曲に出てくる登場人物一人一人が抱える孤独が際立つ感じさえした。今回の「ワーニャ」を観てみるまでは考えもしなかったけど、そういう意味では「ワーニャ伯父さん」って案外一人芝居向きの戯曲だったのかも……?