古稀を過ぎたジジイの戯言になるかもしれませんが、最近、徐々に氾濫する略語に付いていけなくなっています。新しい言葉というのは、いつの時代も生まれていて、年寄りがそれに苦労するのは常だと思います。
「ティックトックでバズってるんだってさぁ。」と電車の中で耳にしたときは、外国語かと思いましたからね。さて、そうはいっても私自身も医療業界で働いていて、診断名にDxを使ったり、骨折をFxと略して記載したり、また処方をRpともRxとも書いて指示してきたりしてきました。しかし、近年このxが大文字のXと表記されての略語があふれるようになってきて、なかなか付いていくのが大変になっています。
DX はDigital Transformationです。医療業界のみならず、社会全体で取り組まれているテーマですよね。デジタル庁河野大臣は、10月13日の記者会見でマイナンバーカードと健康保険証の一体化を進めて、2024年度秋には今の健康保険証を廃止すると明言しています。このカードは運転免許証とも一体化する計画も出されています。利用においては、電子証明書をスマホに搭載して、オンラインでの申請や決済が可能となるように整備するとされています。私たち医療者にとっては診療情報の電子化が進み、将来的にはEMR(Electrical Medical Record)となり、ご本人の医療や介護についての情報が一元化され、薬物にしても検査や画像の情報も、同時に医療の支出の状況などもカードから取り出せるように管理体制が整えられようとしています。こうした情報は使い方が問題です。本当に、国民のためにこの情報を使うのか、また逆に偏った統制を強める心配はないのか、すべてを国が知ることができる体制を恐れる人たちが存在することはある意味、当然かもしれません。
また、政府は GX:Green Transformationを謳い、省エネや再エネ、リサイクルなどエコ活動を推進し、経済成長を維持しながら環境に優しい社会・企業への転換を推進しようとしています。こんなの、可能なのかなと、昨今のエネルギー費用の高騰をもろに浴びて、私は密かに危ぶんでおります。
さらにSX:Sustainability Transformationも使われています。サステナビリティは「持続可能性」という意味ですが、2015年に国連総会で採択されたSDGs(Sustainable Developmental Goals)でも使われています。企業も社会もその持続可能性を変革し、短期的な経済的利益の追求ではなく、中長期的な目線で環境や社会(SDGs)に配慮・貢献しながら、ステークホルダーみんなで企業価値向上に取り組もうというふうに使われています。
これらの事例では、Xはトランスフォーメーションとして使用されています。つまり、変革や変化ですが、小手先の「変更(change)」ではなく、規模の大きな、基本を変えるような大きな変化を意味しているようです。新たな価値創出やビジョンの実現に向けて、社会や企業のビジネスモデルを変革する意味合いになるのでしょう。
別の使い方もあります。CXはCustomer eXperienceで、直訳すると「顧客体験」となりますし、EXはEmployee eXperienceで、直訳すると「従業員体験」となります。これらは、主にサービス業における顧客やスタッフのあらゆる体験価値のことを意味しているようです。これを通じて、従業員の満足度やモチベーションの向上、エンゲージメントの強化を図るといったように用いられるようです。優秀な人財がのびのびと仕事を行い、結果として職場の生産性が上がることを意図している考え方なのでしょう。
FX:Foreign eXchange これは単純に「外国為替」「外国為替証拠金取引」のことですね。
Xにはトランスフォーメーション(変革)と、エクスペリアンス(経験)、そして、エクスチェンジ(交換)といった意味があるのでした。
こりゃ、大変です。頭を現役にしておくには、まだまだ目を見開き、耳をそばだてて、生活する必要があるようです。