学会の会場は、ヒルトン・ロンドン・メトロポールホテルでした。広いロンドンの中心からすれば北西に当たるエリアにあり、広大なハイド・パークの北側です。地図を見ると、近衛兵の交代儀式で有名な国王のバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)や王室のプリンス・オブ・ウェールズ一家がお住まいのケンジントン宮殿(Kensington Palace)があるのが分かります。

 

 ヒースロー空港から市内への移動で入り口となるパディントンと会場は地下鉄の一駅分で、私は赤丸のパディントン駅の近くに宿を取り、青の矢印のように、毎日、歩いて会場に向かいました。

 

 通常、臨床分野での学会といえば、ある疾患について、新しい原因がみつかったとか、違う検査が必要だとか、この手術方法の方が優れているとか、それぞれの医師が治療における研究成果を発表するものとなります。しかし、この学会では、骨粗鬆症やサルコペニアで、そうした中身の発表もあるのですが、臨床というより、公衆衛生の立場から、今社会がどんな状態で、治療の現況はどうか、そしてそれはどんな影響を社会に与えているかを分析し、専門職種はどのような活動を求められているかが多く語られる場となっていました。したがって、予防や市民教育をどうすればよいかといった風に、公衆衛生や医療経済的な視点の発表も多く含まれているのが特徴です。

 

 特に、骨や筋肉の健康をテーマにしたセッションは、私にとっては刺激に満ちたものでした。それは常日頃の臨床の中身を見つめ直し、改革を進める必要を迫ってくるものでもありました。私も臨床家の一人として、骨粗鬆症の患者さんを診ています。その患者さんは同時に、がんを患っていたり、心臓病があったり、膝や腰に痛みを抱えていたりするのです。この人にどうアプローチするべきかということです。

 

 一つの分野に集中しての対応は不十分となり、時に、異なる分野の医師から真反対のアドバイスを受けたりして、患者さんを混乱させる事態を招くことも生まれてきます。ある程度、勉強もして、全体を理解した上で何を優先し、何を後回しにするかなど検討した上で、適切な対処を本人の希望や予定ともすりあわせて、実行する方法が望ましいと思われます。

 

 それには、整形外科といった狭い分野の専門性からのみ患者さんを評価し対応するのでは不十分となります。老化による病態を全面的に診て対応できる診療科として、小児科や婦人科があるように、老年科の医師がある程度総合的に診てくれると良いと思うのですが、総合診療科にしても、その数は十分ではありません。ことに、身体機能に影響を与える侵襲を伴う治療においては、その意義を十分に検討・協議して、十分な理解の元で進めていかねばならないと思っています。

 

 現地では英語でのやりとりですから、集中しています。しばらくするととても疲れているのに気付きます。ホテルに戻る途中、すぐ近くの公園に入ってみました。

 

 

 

 公園の入り口には、撮影しているカメラマンと動物のオブジェがあります。

 

 

 

 リスも遊んでいて、癒やされました。

 

 

 夕食にはイギリス名物のフィッシュ・アンド・チップスを買ってきて部屋食にしました。10ポンドでした。おいしく食べました。