今回のロンドンへの出張で参加する学会は、以下の三つの団体が合同で開催するものです。

 

1) 骨粗鬆症と運動器疾患の世界会議

World Congress on Osteoporosis and Musculoskeletal Diseases(WCO)

2) 世界骨粗鬆症財団

the International Osteoporosis Foundation (IOF)

3) 欧州骨粗鬆症・変形性関節症の臨床・経済研究会

the European Society for Clinical and Economic Aspects of Osteoporosis and Osteoarthritis (ESCEO)

 

 それで、The 24th Edition of the WCO-IOF-ESCEO Congressという風になっています。要は運動器に関する総合的な学会で、整形外科の学会のように手術を主題にしていないところが違うところです。大きく広い範囲で捉えているため、以前から参加したいと狙っていた学会で、今回タイミングが合ったので参加を申し込みました。日本語にしたら、どんな名称になるのでしょうね。ちなみに、昨年は5月4日~7日にスペインのバルセロナで開催されていますが、参加はできませんでした。

 

 私は研究者ではありません。専門分野があり、学問的な発表を積み上げているということは全くないのに、なぜ、こうした学会に参加するのでしょうか。現在、私が興味を持って追いかけている学会やテーマといえば、緩和ケア、ホスピスケアといった終末期に関するケアについてと、高齢者の運動器を中心とするケアの中身やその体制となります。それは、グループを運営し、将来の構想も検討する立場の人間にとって、とても参考になるからです。世界のさまざまな国でその分野でどんな課題があり、それに対してどのような業績が生まれているのか、将来、どんな方向へ進めていこうと模索を始めているのか、こうした情報を得ることは、一歩先に日本での議論を予測する上の大きな参考になります。

 

 もちろん、各国により高齢化の状況や医療制度や医療の質も異なりますので、なるほどと学会で聞いて感じたとしても、それをそのまま持ち帰って導入というわけにはいきません。

 

 それでも、何が議論の対象となっているかを知ることはとても勉強になるのです。例えば、今話題になっているアドバンス・ケア・プラニング(ACP)に関しては、それを文章化したものとしてのアドバンス・ディレクティブ(事前指定書:AD)として、1990年代から情報を持ち、学習をしてきました。社会医療研究所所長であった故岡田玲一郎氏が主宰された北米視察ツアーで、カナダのトロントにいたウィリアム・モロイ博士と出会ったのは、1993年のことです。彼が進める「Let Me Decide 自分に決めさせて」という事前指定書と、それを開発するに至る研究結果からさまざまなことを学びました。

 

 日本にいても大概の情報は入ってきます。しかし、学会の現場では生の声として世界の動向を知ることができるのです。これは、経営者として何らかのアドバンテージがあると考えていますし、同時に、一人の医師として勉強になるので、未だに機会があればこうして出かけているのです。

 

 ロンドンに向かう方法はいろいろありますが、大阪からの直行便はありません。したがって、今回は羽田に向かい、羽田から直行便を使うことにしました。しかし、ロシアによるウクライナの軍事侵攻により、2022年からヨーロッパ線での各社の航路はロシア上空を迂回する飛行経路を採用するようになっているのです。そのため、飛行時間にすると、2~3時間長くなり、今回の飛行時間は14時間半という長さになりました。さすがに長かったです。

 

 

 朝7時関西空港発の羽田便。外は大粒の雨。乗り込む列で、ふと目にとまったTagがありました。 

 

 

 

 読めますか? “Fragile old bag requires careful handling”とあります。「このカバンは古いので、丁寧に扱ってくださいよ」と訳せば良いでしょうか。出発の連絡を家族にしていなかったので、個々で、行ってきますとSNSでメッセージを送りました。その時、「Fragile man requires careful handling」と付け加えておきました。そうです。年寄りは大事にしなければいけないのです。

 

 羽田では同じターミナル2なのですが、国際線乗り継ぎまでの距離の長いこと。朝の散歩の距離ほどはありました。ラウンジで少し時間があったので、朝食に食べ納めだなと温かいうどんを食べました。おいしい和の味を楽しんで、ゲートに向かいました。

 

 乗り込んでから、映画を見ようとリストを眺め、巨匠スピルバーグの昔の有名な映画をミュージカルにリメイクしたというThe Color Purpleを見ました。何とも厳しい親や夫の指示から逃れられなかった女性が、徐々に本来の権利を得て、生き別れとなっていた妹や子どもたちとも出会うことができるという話ですが、あまりの男たちの横暴さに、気分が悪くなるほどの演出でした。それでも、食事を楽しみ、お酒も飲んで良い気持ち。その後ももう一本映画を見ましたが、まだ、半分も経過していません。

 

 仕方がないので、PCを出して、有料のインターネットにつなぎ、メールを確認したり、資料作成の続きをしたりしているとようやく眠くなってきたので、目をつぶり、しばらく眠りました。でも、2時間程度でした。それから本を読み、何とか時間をつぶしていると、着陸態勢に入るからシートベルトをするようにというアナウンスがあり、とても嬉しく思いました。

 

 窓の外では、イギリスの景色が近づいてきます。いよいよ着陸です。

 

 

 

 空港での入国審査は機械で一時的なチェックを受け、係員から確認のような質問があって終了とスムースに終えることができました。次は、市内への移動です。

 

 ヒースロー空港からは、地下鉄での移動を考えました。以前ロンドンに来たときのパスのようなOyster Cardが手元にあったので、これに課金して使えるようにしました。それから降り立ったターミナル2の表示を参考に、地下鉄のホームまで降りたとき、それが、ピカデリー線であることに気付きました。目的地のPaddingtonへ行くにはエリザベス線を利用しなければなりません。仕方なく、ホームから改札に戻り、係員に尋ねて、ようやく、Heathrow Expressに乗り込むことができました。Paddingtonまで止まらず、20分ほどしかかからない最速の方法です。これが片道25£(ポンド)です。円安の今、1£が192円にもなっています。つまり、4800円くらいするんですね。20分ほどしかのらない鉄道が4800円って、日本なら、大阪から京都に新幹線で行くような値段でしょうか。ともかく、これで無事にPaddington駅に到着。良い天気で、それほど寒さは感じず、少し前の大阪といった感覚でした。ここからは、ホテルまで歩いて5分程度のはずと、携帯を頼りにホテルを見つけ、チェックイン。時刻は4月10日の午後5時半くらいでした。

 

 やれやれと荷物を解き、しばらく滞在する部屋を自分なりに整えます。シャワーを浴びて、さぁ、ご飯です。一人だと、これがなかなか難しいのですが、ホテルの隣のイタリアンレストランに飛び込み、まずはビールを頼み、メニューを眺めてサラダとパスタを注文しました。

 

 本を読んでいるうちに眠くなり、おやすみなさいです。

 

 ここまでが報告です。

 

 10日は散歩をするなどして、ゆっくり過ごしました。

 

 11日の夕方から、厳しい日程が待っています。

はたして、書けるかどうか、自信がありませんが、日記のようでなくても、学会のまとめとしては、記録を残そうと思っています。