☆★神戸の下町 湊川★☆ サンドリオン グループCendrillon group代表 波戸岡 正章 公式ブログ -163ページ目

恩人 14

試合会場を出て、一緒に観戦した友人と別れた。
新幹線の最終まで一人でタクシーに乗って30分だけ中洲に行くことに。

ずらりと並ぶ屋台の横を歩き、良さげな雰囲気の店の空席を見つけた。

暖簾をくぐり、生まれて初めて熱燗を頼んだ。

冬とは思えないくらい、体中が一気に熱くなった。
天ぷらの盛り合わせを頼んだが、本当に美味しかった。

まだ残っている熱燗。

時計を見たら新幹線の時間ギリギリだった。

呑めない熱燗を一気に飲み干して、タクシー乗り場まで走った。

そして、水を買い新幹線に急いで飛び乗った。

頭が痛くなり、水を飲んで気を休めた。

空席だらけの車内。
流れる車窓を眺め続けた。
その時、電話が鳴った。

バクスターとペドロのプライベートマネージャーである方からだ。

タラップに行き電話に出た。

試合の内容を鮮明に伝えた。すると隣には神戸にいたペドロが。

改めて感謝の意を交換しあった。ペドロは昇格が決まった直後、大粒の涙で叫んでいたらしい。



少し前の新幹線に乗った選手たちは新神戸駅に到着した。

新神戸駅の改札では500人以上のファンたちで選手たちを労った。

お前も一緒の新幹線か?と電話で聞かれ、違うと答えた。
すると、新神戸駅が大変な事になっていると言う。
その出迎えの先頭がペドロだった。

それを聞いた瞬間、タラップから車窓を眺めて通話していた私は、腰が砕け膝が崩れ落ち、しゃがみ込んで泣いた。


本当に嬉しかった。

電話を切り、窓際の席に戻りシートを倒し、残りの水を飲んで高まる興奮を抑えた。

そして、新神戸駅に到着するまでの間、バクスターと出会った小学六年生の頃から今までの出来事を全て思い返した。

出会ったのは震災直後のチャリティーイベントだった。
本当に懐かしい。

あの時、彼に日本語で
マケナイデガンバッテと話しかけられた。


あれから10年後。
こんなカタチで再開し、一年間彼たちの仕事を追い掛けた。


私も自分に出来る事で、神戸の為に頑張ろうと強く思った。

彼も帰国の際にまた必ず神戸に来ると約束してくれた。


思い返すとキリがなく、また涙が出てきた。

そして、新神戸駅に到着した。



すぐにタクシーに乗り、三宮に向かい、いつものメンバーと合流した。

全員揃って、強く抱き合った。

暫く、市内某所で飲んでいた。
コーチ陣も合流し、昇格を心から祝った。

途中、バクスターから電話があり、彼は興奮した口調で喜び叫んでいた。

その後、試合を終えた多くの選手たちと遭遇。

三宮のど真ん中で涙を浮かべながら強く抱き合った。


教え子たちはついに結果を出した。
さっきバクスターから電話があったと伝えたら、選手たちは静まり返ったように思い返した。

恵まれた一年間だった。

そして解散して、また一人で夜の三宮へ繰り出した。

その日、あまりの嬉しさに呑めない酒を呑みまくった。

そして、バーで朝を迎えた。

バーに朝刊が届いた。

朝刊のトップ記事に、神戸昇格の文字と、大きな写真が。


ここでようやく昇格したんだなと実感した。



暫くして2007シーズンに向けて、チームは始動した。



15へ続く。

恩人 13

残り10分が本当に長く感じた。
こんなに長い10分間は人生で初めてだったし、これからはもう無いだろう。

最後の最後に厳しすぎる試練が待ち受けていた。
J1に上がる資格があるか無いか。
それを確かめるかのような最終関門。


疑惑のゴールとまで言われたシーン。


後半ロスタイム。

ロングボールから神戸ディフェンダーのクリアミス。
次々に襲いかかる福岡の攻撃陣。


ペナルティエリア内上空にクリアボールが入り、最大のピンチ。

GK荻がハイボールの処理をするが、競り合いギリギリで触る。

マイナスに入ったボールはゴールライン上へ。

ライン上に残っていたDF北本が胸でクリアし、GK荻が最後の力を振り絞りライン上のボールを気持ちだけで掻き出した。

しかし、まだピンチは続く。

掻き出したボールのクリアが小さく、それを福岡攻撃陣が執念で襲い掛かる。

ボレーシュートをDF柳川が顔を蹴られながらも頭でクリア。

背後では荻も体勢を整え反応。
ゴールをアピールする福岡の攻撃陣。
まだピンチは続く。

柳川のクリアに飛び込む福岡の攻撃陣より三浦淳宏が僅かに早くボールに反応し、少しだがゴールからボールを遠ざけた。
そして田中英がトドメのクリアになんとか成功。

与えてはいけない失点を全員で体を投げ出して守りきった。

分厚い壁のようなものが見えた。

これがバクスターの絆サッカーだ。

命を張ってゴールを守る執念と覚悟。



そして結実の時は来た。
試合終了のホイッスル。
入れ替え戦
2分けで昇格を決めた。
結局、ラスト7試合で勝利は無し。
しかし、見事に昇格を決めたのだ。

ゴール裏へ走り出す選手たち。間違いなく、ファン全員が泣いた。

感動した。

J1でプレーする事がどれだけ大変な事か。
その有り難みを感じた。

バクスターの命懸けの仕事の結果がついに出た。

私も正直言って、頭抱えて泣いた。


どうしても手に入れたかったものが、ついに。
こんなに苦しいものなのか。

球団は地域の財産。
やっと彼の言っている意味が分かった。

J1という当たり前が、こんなに辛いものとは。
技術云々より、完全に気持ちだけで戦っていた。
お互いを信じ、尊敬しあう。

それをプレーから感じれて、とても嬉しかった。ロッカーに引き返した後、記念撮影の際にイングランドのレプリカとスペイン国旗を手に持った。

選手は一緒に戦っていると信じていた。

それにしても素晴らしい師弟関係に恵まれた集団だ。

今までのヴィッセルに無い財産を手に入れた。

神戸を2度も昇格させた名将スチュワート・バクスター。
色んな事を考えさせられた。
色んな感動を神戸の人達に与えた。

本当に感謝している。




14へ続く。
サンドリオン グループCendrillon group 代表          波戸岡 正章  公式ブログ-9d7950d5.jpg

恩人 12

2006シーズン。
色んな事があったが、こんなに成長と結束が見れた。
まだ終わっていないのだが、とても素晴らしい時間を過ごせた妙な充実感があった。

そして命を懸けたバクスターの仕事の結末を見守る必要があった。


志半ばで現場を離れなければいけなかった恩人の為に、選手・スタッフ・サポーターの気持ちは一つだった。


神戸は後半開始直後から怒涛の攻撃で流れを掴む。
そしてついに試合が動いた。

三浦淳宏が左サイドで粘って上げたクロスが中央に。

そこで競り合いになり、相手ディフェンダーが苦し紛れに弱いクリア。

そこに走り込んだFW近藤がダイレクトボレー。

GK水谷が反応するも、近藤のパワーが勝り、ついに均衡を破った。

ゴール裏は久しぶりの歓喜で泣き出す輩まで。

発狂しまくる人々で、ぐちゃぐちゃに。

しかし、そこから試合終了までの間、福岡の猛攻を耐える我慢、いや拷問のような時間が続いた。
緊張も極限に達し、試合を見るのが怖くて、気が狂いそうなくらい汗が出た。


終盤、福岡がJ1の意地を見せた。
猛攻を繰り返し、ついに同点に追いついた。

しかし、このままではアウェイゴールで神戸の勝ちになる。

更に福岡は攻勢にでた。
最後の最後まで苦しませられる。

もう、これはサッカーじゃない。
カウンターの応酬で選手は疲労がピークに。

もう気持ちだけで戦っていた。



13へ続く。