やっぱり映画が好き -11ページ目

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

主人公のリー青年の表情が好印象。"若づくり" ならぬ "老けづくり" のジャッキーがナイス。そして修行シーン多めがたまらなく嬉しい。ブルース・リーリスペクトの "ワンインチパンチ" を要所で繰り出すのもグッド。過去作観てなきゃチトわかりにくいのはご愛嬌。鑑賞後談話したくなる娯楽作ここにあり。

 

物語構成はいたって凡庸。ガールフレンドの親が地元の有力者から借金してて、その返済のために一肌脱ぐ。これって吉本新喜劇によくあるパターン。そう考えると、ガールフレンドの父親に借金取りのチンピラ集団が襲いかかる局面で、リー少年がカンフーで撃退する。おまけにチンピラは "覚えてろよ" と捨て台詞を吐いて退散する…まさしく吉本新喜劇やん。安心安全で観れるファミリー向けな内容、そこがいいんじゃない。

 

凡庸の中にカタルシスを見せる。リーは中国からやってきた異国の人。いわばマイノリティであり、社会で虐げられる確率は高い。イジメの対象となる彼にもカンフーの腕前があり自負していたところにライバルが現れる。リーは自信を失いかけるも師匠と再会してリベンジを目指す。ここで特訓シーンへ突入、この運びがシンプル且つ愚直にリーの心情とシンクロしていく。

 

惜しむらくは、リーの家庭教師アランをコメディリリーフとしてもっと活躍させて欲しかった。リーの屋上デートのサポート演奏のみならず、クライマックスのトーナメント試合で観客席からアランの見せ場を用意できたはず。少々強引かもしれないが、アランと亡き兄の存在を被らせる設定を設けて、リーが乗り越える壁をより明確にできるんじゃないかな。

 

ジョナサン・エントウィッスル監督はNetflixドラマ「ノット・オーケー」を製作している。アラン役のワイアット・オレフはこの作品でも活躍しているので今作は縁故出演なのかな。しかし作風を比べるとかなり異なる。こういうの、エントウィッスル監督自身ヒット作を意識して路線変更したのか?周囲(主にプロデューサー)からの圧力で改変された結果なのか?すごく気になるんです。でもね、娯楽作品としては黒帯級です。エントウィッスル監督の次回作、期待してるよ。押忍。

 

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アンデスの高地に住む老夫婦。村とは程遠い土地でしきたりを守りながら生活する。ふたりは都会に出ていった息子が戻ってくることを願いながら老いに憂いていく。2017年製作のペルー映画。U-NEXT AmazonPrime にて配信中。

 

雄大な自然を背景に、度重なる不運な出来事に静かな憤りを描いていく。自然と共生する人は貴重な恩恵によって糧を得る。容赦無いトラブルは避けられぬ事態として受け止めなければならない。それは諦めではなく、覚悟である。ラスト場面の女性の行動はまさにそれであろう。

 

撮影や編集の巧さと相乗するように老夫婦の木訥とした所作が絶妙であり、そこに麗しさを感じる。説明的台詞は無いがふたりの風貌で異国の生活がしみじみと伝わる。ここに便利や効率、最新トレンドなどは皆無であり、心地良さとはいったい何か、豊かさとは何か、が問われている。

 

私たちはこのふたりを悲観するのか、それとも賞賛するのか。私たち自身の日常を見つめ直さない限り、このテーマは一過性にとどまるだろう。ミニマムライフを奨励しているのではなく、驕らない姿勢に清廉な生き方を見いだす。アンデスの彼の地は、私たちが住んでいるモノに溢れた街を憂いているかもしれない。

 

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最新作「ANORA アノーラ」で賞レースを席巻したショーン・ベイカー監督の初期作品。突然元カノからあなたの息子と宣告されて幼子を預かる事態になった黒人青年ラッキーは、不法移民である事情から警察にも相談できず、否応なしに子守をしながらブランド品の紛い物をキャッチセールスする商いに勤しむ。なかなかうまくいかない仕事と私生活に落ち込んでしまい、手を焼く幼子は本当に血が繋がっているのかDNA鑑定を思案する…

 

ラッキーが様々な苦難に心折れる表情を見せる。この画が良いんです。幼子には悪意は無い。大人に身を任せる言動には理性や慎みといった思慮は無くて当然、その成り行きに翻弄される事態は大人の覚悟となる。そこに意味や理由は必要なのか。ラッキーが懇意にしているレバノン人のショップ店長が、終盤嘘をつく。彼の嘘はラッキーにとって救われる希望を見せてくれる。因果という言い訳に価値は無く、家族という定義では測れない心の繋がりを提示する。

 

ショーン・ベイカー監督がオスカー獲得した際のスピーチで、映画館の大切さを訴えていた。私は賛同する。今作は彼の初期傑作選企画として映画館鑑賞できた。"別に映画通じゃないし" "敷居高いし" と思わないで、まずは好きな作品から足を運び、気になる他の作品を選んでみる。そこに当たり外れはあるけど、外れてもどこかイイトコ探してみるのも映画鑑賞の楽しさでありましょう。それこそ毎度クラファンってな気分で映画館を応援するためにチケットを買う。この積み重ねによって映画興行がサスティナブルに向かってるよ、きっと。

 

今作の録音状況は正直劣悪であるけど、それが一興となりスタッフの苦労が伝わり、逆にリアリティを帯びてくる。少々メタ化した解釈かもしれないが、マイノリティの暮らしを映し出す物語に貢献している。大切なのは、製作側の情熱、そしてセンスを貫く姿勢にある。ショーン・ベイカー監督しかり、作り手から伝わってくる "気付き" は、やっぱり映画館で体感してほしい。

 

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