やっぱり映画が好き -12ページ目

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

スペインからアメリカに移住するために飛行機に搭乗したカップル。ニューヨークの空港に着いた入国審査で思わぬ事態に発展する。男性はたったひとつの秘密を女性に明かさないままだった…緊迫の77分間、移動を強いられる身元調査の部屋や棟内の工事の音が観客をもざわつかせる。

 

男性の秘密を第三者から暴かれた時、女性に猜疑心が生まれる。なぜ?でも信じる。何かの間違い?いや理由があるはず。職員からの容赦ない言葉は、女性の揺れ動く心情とともに尊厳を軽んじられる。この国では人権は保証されないの?真実を説明する言葉を誤る男性はどんどん追い詰められていく。

 

別室で詰問された男性は、女性と再会した時彼女のたったひとつの質問を誤魔化してしまう。逃げたのだ。その岐路を迎えてからの職員の最終結果を告げられた局面でふたりの心の繋がりは…それは私たちの判断に委ねる。心が折れてしまったのか、それともアメリカという不自由な国に見切りを付けてパートナーとの親密度を意識するようになったのか。どちらをとってもアメリカという残酷な国には夢や平穏があるのか訝ってしまう。

 

私たちは国際情勢という形で日々ニュースに接している。それは経済や文化、または紛争というカテゴリに分化されていくが、公権力が本来根ざすのは民の生活を守ることであり、排除や暴力を仕掛けたり扇動したりするべきではない。しかし現状では為政者が人権を軽視する、非人道行為が平然と進行する。この心騒めく世の中を憂うあまり、平穏を乱しているのは誰か?という陰謀論のようなきっかけで民が隣人に刃を向けてはいけない。まさに自身の責任を遠ざけたい権力者の思う壺と感じる。その縮図が、移民と法治というテーマとなって今作に込められている。

 

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ニューヨークの街中で小学生の中国系少女が学校のバスケ部の資金のために募金活動する。なかなかうまくいかない少女はゴミの中から宝石を拾い、お店で鑑定してもらうもガラクタだと相手にされない。次に思いつく行動は…。17分の短編作品。2023年製作。Netflixにて配信中。

 

正しさと間違い。どちらを選択するかはその時の状況によって変わる。選択した間違いを正当化する時、良心の呵責は生まれないのか。無力な女の子の行動の果てに優しさがあると気付く私たちは彼女の間違いを許す。正論=良心ではない。間違いが許される社会こそ豊かさを育むのではないか、そこに着眼した今作は短編ながらもうまくまとめている。まだ無名のロイド・リー・チョイ監督の長編デビュー作「ラッキー・ルー」に期待高まる。今回は短編だから短評です。これ以上語ると楽しめない。間違ってないよ。

 

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釜山で漁業によって財を成した資産家の娘が、小学校の下校中に誘拐される。警察は一緒に下校した友達に事情を聞くもなかなか手掛かりは掴めない。犯人から身代金要求の電話がかかってこない中、母親は方々の占い師に頼るもことごとく娘は死んでいると告知される。諦めきれない母親は貧しめの占い師キム(ユ・ヘジン)を尋ねると、"犯人からの電話は15日後、事件はコン刑事(キム・ユンソク)が解決する" と予言する。そんなコン刑事は警察の同僚から冷遇される疎まれし存在だった…2015年製作。U-NEXT AmazonPrime にて配信中。

 

組織から煙たがれるコン刑事と真面目で無欲なキム導師が協調性なくタッグを組む。誘拐された娘を捜索するふたりと自身のプライド優先の警察組織が衝突する社会の不条理が、占いというスピリチュアルな設定と重なって "倫理" と "超常現象" のあり得なさがいかに弱者の妥協を強いているかを表出させている。

 

ここで問われるのは、誘拐事件に携わる捜査陣営による被害者の命と犯人逮捕の手柄を天秤にかけてしまう "生死を問わない" 倫理の喪失。占いによる定められた運命と依頼者からの金銭を等価交換する超常現象のビジネス化。どちらも正論という立場で白黒つける絶対的な規律は存在しない。それは事件解決する局面において警察と犯人、どちらが善なのか悪なのか、見た目と内実の倒錯が今作のテーマであり、そこから "現実" と "超自然" の対義にも繋がっていく。

 

ここからネタバレあります。ご了承くださいませ。

ユーモアを加味した事件捜査の塩梅が巧い。コン刑事の上司のバーコード髪は海原はるか・かなた師匠を連想させる。コン刑事たちが無事事件解決してヘリコプターで凱旋する場面でも、あ、そこもやるの?ってな、しつこさも好きです。

 

ラスト、実話モノに定番の後日譚 "テロップ"&登場人物ご本人 "スナップ" 写真(勝手に略称 "テロスナ" )を伏線回収としてオチに持っていく手法にニンマリ。でもこれは安易に出来ない奇策だけどね。

 

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