『養生訓』 湿気に気をつける(巻六9) | 春月の『ちょこっと健康術』

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おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

居所(おりどころ)、寝屋(ねや)は、つねに風寒暑湿の邪気をふせぐべし。風寒暑は人の身をやぶる事、はげしくて早し。湿は人の身をやぶる事おそくして深し。故に風寒暑は人おそれやすし。湿気は人おそれず。人にあたる事ふかし。故に久しくしていえず。


湿ある所を、早く遠ざかるべし。山の岸近き所を、遠ざかるべし。又、土あさく、水近く、床ひきき処に、坐臥すべからず。床を高くし、床の下の壁にまどを開きて、気を通ずべし。新にぬりたる壁に近付て、坐臥すべからず。湿にあたりて病となりて、いえがたし。或(あるいは)疫病をうれふ。おそるべし。文禄の朝鮮軍に、戦死の人はすくなく、疫死多かりしは、陣屋ひきく、まばらにして、士卒、寒湿にあたりし故也とぞ。


居所も寝屋も、高くかはける所よし。是皆、外湿をふせぐなり。一たび湿にあたればいえがたし。おそるべし。又、酒茶湯水を多くのまず、瓜、菓、冷麪を多く食(くら)はざるは、是皆、内湿をふせぐなり。夏月、冷水を多くのみ、冷麪をしばしば食すれば、必(かならず)内湿にやぶられ、痰瘧、泄痢をうれふ。つつしむべし。


居室や寝室は、つねに風・寒・暑・湿の邪気を防ぐようにすべきである。風・寒・暑の邪は、人の身体を傷つけることが、はげしくてすばやい。これに対し、湿は、人の健康を損なうことが、遅くて深いものだ。それゆえに、風・寒・暑を人は容易に恐れるが、湿気には案外恐れることがない。ところが、湿に当たると、深く身体に入りこんでしまうため、容易には治らない。


湿気の多いところから、早く遠ざかるべきである。山を流れる川岸の近いところから遠ざかるほうがよい。また、低地で水に近く、床の低いところに座ったり寝たりしてはいけない。床を高くして、床の下の壁に風通しの窓をあけて、気の流れを通すことだ。新たに塗ったばかりの壁に近づいて、坐臥してはいけない。湿気に当たって病気になり、治りにくいものだ。あるいは伝染病にかかることもあるから、気をつけなけれなければならない。文禄の役(1592年)で、朝鮮軍に戦死者よりも疫病で死んだ者が多かったのは、陣屋が低くまばらに設営され、兵士が寒湿の邪に当たったためだといわれている。


居室も寝室も、高くて乾燥しているところがよい。すべて外湿の邪を防ぐためである。一度湿邪に当たると、治りにくいので、注意が必要である。また、酒や茶や湯水を多く飲まないようにし、瓜・果物・冷たい麺類を多く食べないようにするのは、すべて内湿の発生を防ぐためである。夏期に、冷水を多く飲み、冷たい麺をしばしば食べると、必ずや内湿によって臓腑が傷つき、痰瘧(熱病)や泄痢(下痢)になる。大いに用心すべきである。


今日は北海道を除いて雨模様の天気ですね。このように湿度の高い日に、冷たいものや甘いものを摂りすぎると、湿邪にやられやすいので気をつけましょう。 「脾を養って梅雨~夏を乗り切ろう」「梅雨~夏は「湿」と「思」に気をつけて」 「脾の働きと脾を養う食べ物」 もご参考にどうぞ。


湿気の多い日本家屋は、たいてい床が高くなっていて、床下の通風もよくなるよう工夫がされています。これは、建物自体の傷みを防ぐためだけじゃなく、身体の健康のためでもあるんですね。


外邪についてはこちら↓

No.27   「病気の原因 外邪 その2」 風邪・暑邪・湿邪

No.28   「病気の原因 外邪 その3」 燥邪・寒邪・火邪


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