おはようございます
梅雨と夏の養生法、今日は、脾胃を守るために注意してほしい「湿」と「思」について。
脾は湿に弱いという性質を持っています。それは、「東洋医学講座 No.5 五行論 その2」 の自然界における五行を見ていただけるとわかるように、五季には五気が強くなる傾向にあって、五気の状態は五臓にも影響するからなんです。つまり、長夏・湿気・脾はいずれも五行の土に属し、長夏には湿気が強くなり、脾に影響しやすいということ。
湿気が強くなると、湿邪となって身体に入り込みます。また、必要以上に水分を摂り過ぎて、汗もかかずにいると、体内の水分が湿邪に変わります。湿邪は重たいので、気の流れを阻害しやすく、病状を長引かせる傾向にあります。
「脾胃をととのえるツボ」 にもちょっと書きましたが、体内に湿がたまると、身体が重だるい、むくむ、舌がぽってりと広がって縁に歯形がつく、食欲がなくなる、おなかがゆるくなるなどの症状が出ます。陰陵泉は、去湿の要穴、すなわち湿邪を取り除く特効穴として重用されるツボなんですよ。
『養生訓』の「夏季の薬」 に登場した李東垣(り・とうえん)は、李杲(り・こう)ともいいます。『黄帝内経素問』の『陰陽応象大論篇』や『平人気象論篇』などを引用して、「脾胃の気の不足は百病の始めである」という『脾胃論』を展開。そのために「補土派」と呼ばれました。
湿気の多い国に住む日本人は脾が弱くなりやすい、という風土的背景もあって、東垣の「補土派」を支持する日本の医師は多かったようです。その影響か、益軒先生も『養生訓』の中で、脾胃に関してかなり多く記述されていますね。今日の夕方には、脾胃の好きなものと嫌いなものについて、2件アップしますよ。
脾胃は「後天の本」と言われ、五臓六腑の真ん中にあり、後天の精気の元となる水穀の精微を生むところです。後天の精気は、腎にある先天の精気を補充する大切なものです。先天の精気は生命そのもの。脾胃が弱っては、先天の精気を補えず、死に至ってしまう。だから、脾胃が大切。これが「補土派」の考え方の基本です。
脾の働きについてはこちら→「東洋医学講座 No.11 五臓の生理 その4」
腎の働きについてはこちら→「東洋医学講座 No.13 五臓の生理 その6」
李東垣は、著書『脾胃論』の中に、「医王湯」とも呼ばれる「補中益気湯」の処方を記しています。補中の中とは、脾胃をさしますから、脾胃を補う薬ですね。人参(ニンジン)、黄耆(オウギ)、蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)、柴胡(サイコ)、当帰(トウキ)、升麻(ショウマ)、陳皮(チンピ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)が入っていて、胃腸の働きをよくして、体力を回復させます。現代でも、病院で最もよく使われる漢方薬ではないでしょうか。
さて、「春は「怒」に気をつけて」 でお伝えしたように、肝は怒に弱かったですね。そして、脾は思に弱い。思とは、思い煩うこと。こうしたことは『養生訓』の「気から百病生ず」 にも登場していました。感情の高まりは、行きすぎると五臓を傷つけ、病いを生じるのです。
梅雨時、うっとうしい天気が続きますが、くよくよと思い悩んだり、あれこれ心配してとり越し苦労することのないように、また水分の摂り過ぎにも注意して、脾胃を守りましょうね。
今日もいい1日になりますように。