常に「相手ベクトル」で、相手のほしいものを提供しましょう。
大学時代に、私とA子とB子の3人で、食事に行ったときのことです。
席に着くと、A子とB子が、次のようなやりとりをはじめました。
A子「B子と食事をするのはすごく楽しいんだけど、ひとつだけお願いがあるの」
B子「なに?」
A子「たまには、私にメニューを見せてほしいな。B子はいつも、『これと、これと、これと、これを頼もう』って、注文をひとりで決めちゃうでしょう?」
B子「あ、ごめんなさい。でもね、私は何度かこのお店に来ているけど、みんなは、初めてだから、私が料理を選んであげたほうが、みんなも喜んでくれると思って」
B子は、「みんなのため」と思って、メニューを決めていました。
ですが、「友だちのため」といいながら、B子の行動は、「自分本位」で物事を考え、自分の「したいこと」だけをして、「相手がどう思うか」にまで気が回っていなかったのです。
親切にしているつもりなのに、どこかで境界線を超えてしまい「余計なおせっかい」になっていたのですね。
「相手のため」を思ってとった言動が、実は、「相手の迷惑になる」ことがあります。
講師仲間のTさんは、当時、数ヶ月間、体調が思わしくありませんでした。
じっくりと考えた末に、大手メーカー研修のお仕事をお断りしました。
「Tさんが仕事を断った」ことを聞きつけたのが、先輩講師のOさんでした。
O先輩は、「Tさんが研修を断った理由」を尋ねようともせずに、「私が手伝うから、引き受けたほうがいいよ。
せっかく大手メーカーから依頼があったのだから、断るのはもったいないよ」と、何度も、何度もTさんを説得したそうです。
やがてTさんは、O先輩の申し入れを「しつこい」と感じはじめます。
あまりに何度も説得してくるので、「O先輩の本心は違うのではないか?私のことを助けたいという気持ちより、自分がこの仕事に関わりたいと思っているだけじゃないか?」と、不信に思うようになったそうです。
もしもO先輩が、Tさんのことを本当に思っていたのなら、もっとTさんの意思を尊重したはずです。
自分の考えを押しつけるだけのようなことはしなかったでしょう。
相手の表情や、身振り手振りから「相手の求めるもの」を察知する力は、男女関係にかぎらず、人間関係の基本です。
「相手ベクトル」で考えられる人は、魅力ある人として、人の心に残ります。
そのためにも、親切心を働かせるときは、「それは自分ベクトルになっていないか?」つまり、自分本位の振る舞いになっていないか?「相手ベクトルになっているか?」言い換えると、相手のニーズに適っているか?を、常に考える習慣を身につけましょう。
相手の表情や、身振り手振りから、「相手の求めるもの」を察知しましょう。