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本当に百貨店のROIは低くなったのか? ~Jフロントのパルコ買収に見る

今日のニュースで、個人的に疑問に思うことがあった。

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■見出し:Jフロントリテイリングがパルコの買収に乗り出す

■目的:消費者が集まる都市部の集客で相互補完が見込めるから
    傘下のイオンとも相乗効果が見込める
    顧客の年齢層が異なり、相互補完的な関係が期待できる

■課題:もう百貨店では投資に見合ったリターンがとれない
    新店を自力で出す負担に見合った収益を得るには時間がかかる
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出店余地がないとなると、業態を超えたM&Aには納得がいく。
規模の経済を享受しようとする意図も分かる。

但し、それはトップライン(売上)を意識した場合に限るのでは?と。
目標値をどこに置くかにも依拠すると思うが、この買収の力点は、
「相互に呼び込めていなかった顧客を還流させる=店内回遊率が高まり売上が増える」
という意味だと、ひとつ解釈ができる。

しかし、思うに、そもそも百貨店、ひいては、場所ビジネスの本質って、

既存顧客にいかに利用してもらえるか/商品を買ってもらえるか

だと思う。

だとすると、単純な売上増を狙ったM&Aを繰り返すことにどんな意味があるのかな、と。
規模の経済で、仕入原価を抑えられるのは分かるが、
値下げ以上の価値を顧客に本当に届けられるのか?については疑問が残る。

つまり、”もう百貨店では投資に見合ったリターンがとれない”ため、
M&Aを駆使した売上規模の拡張論は、どこか逃げている気がするのだ。

個人的には、百貨店は、まだまだアイデアをひねり出す余地が十分にあると思っている。
フロアごとに”色”が違い、品揃えも違うし、捉え方によっては、遊園地よりも楽しいとも思う。

アイデアの良し悪しはさておき、例えば、デジタルのチカラを使えば、こういうことができうる。

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■アイデア①:「来店促進プラットフォーム」の開発
アメリカでShopkickというソリューションがある。
具体的には、下記URLに任せるとして、日本にもスマポやショッピなどの類似サービスもある。

http://jp.techcrunch.com/archives/20111121visa-teams-up-with-shopkick-to-dole-out-retailer-reward-points-at-the-point-of-sale/

何かというと、顧客の来店頻度をもとに、”顧客層やレベルをあえて差別”するやり方。
航空会社のマイレージシステムにも似ているが、
顧客やその購買履歴に”あえて差を与える”と、逆に顧客は来店頻度を上げようとするのでは?
とのインサイトの読みに基づいたやり口。
戦闘力と同じ。
他人よりも劣っている自分がいて、しかも、戦闘力を高められる機会があると知ると、
色んな意味で、人は自ずと自分を高めようとするはず。

■アイデア②:「店内回遊アプリ」の開発
コロプラのようなゲーミフィケーションを活用した集客ソリューション。
百貨店には、”各階のフロア”という最強の武器がある。
既存顧客のユーザーエクスペリエンスをしっかりと把握すれば、
どうすれば顧客が再来店を増やしてくれるのか?をホリスティックに考えられる。

■アイデア③:「商品陳列をデジタルサイネージへ」
青山に、Duveticaストアがオープンしたのは記憶に新しい。
あそこの商品情報サイネージ。単純にすごくわくわくする。
買いたいと思った商品を来ているモデルを、客観的に眺められるからだ。
つまり、自分のカラダ、自分のライフスタイルに合っているか否かを即座にイメージできる。
そして、商品情報サイネージを、ARで顧客の”試着”に使うのも手だ。
(店舗在庫のない)まだ入荷してない商品やレアモノを
具体的な街のシーンを呈示してバーチャルで試着してもらうことによって販売機会も増やせるし、
逆に言うと、店内在庫を極小にする方法にもなりうる。
さらに、(サイズの問題は置いといて)顧客が実際に試着する時間をなくせるとすると、
UNIQLOでよくある試着順番待ちも減らせる=顧客のイライラ時間を減らせるため、
また来てみたくなる店・場所にもなるのではないか。
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要するに、百貨店側には、
「顧客がわざわざ出向いてみたくなる要素の検討」
まだまだ欠けているように思えるのだ。

ライバルは、もはやリアルな百貨店や専門店だけではない。
ZOZOTOWNやロコンドなどの通販サイトも競合になる。

巣ごもりを是とする顧客を、
”いかに家の外へ出かけてもらい、購買機会を持ってもらえるか”。
ここが焦点だとも思う。

こうしたことを議論した上でのM&Aの決断だったのだろうか?
デジタル領域も含め、本当に議論し尽くしたのだろうか?

死に体になっている産業や業態にこそ、チャンスが眠っていることだってある。
なぜなら、チャンスを変化にした瞬間に、顧客からの印象が、単純に、
「おっ、新しくなったんだー。変わったんだー。へー」
というポジティブなリアクションになりやすいから。

今日のニュースには、表面的なことしか書いていないのもあると思うが、
自戒の意味も込めて、ピンチをチャンスに変換できる能力を磨いていかないといけない。

消費文脈や存在意義の変換

それだけで救えることだって、まだまだ沢山ある。

嫌われタクシー社会の転換? ~メッシュビジネスの実現

先週、タイ出張に行ってきた。10年ぶりのタイ。
空港も街の風景もクルマの種類も何もかも変わっていた。
鉄道網も整備。心なしか、トゥクトゥクの数が減ったような気もするが。

ホテルのコンシェルジュなんて、ウェルカムドリンクを出してくれる勢い。
ずっとあったことかもしれないが、こう環境が整ってくると見え方が変わってくる。

タイの勢い、アジアの上り調子。これは本当にスゴイと改めて実感。

一方で、変わらないこともあった。タクシーの多さだ。
日本ほど多いというわけではなさそうだが、
タイの交通状況や環境を汚染している印象も受ける。

但し、考えようによっては、タクシーは”金脈”にできる。それも、”物流の金脈”。

何かというと、

・国土が狭い状況で
・道路整備も発達していない場所で
・タクシーが多い状況は
・新しい物流ビジネスを生める(タクシーが公共物でない限り)

という気づきだ。

そういえば、インド駐在の先輩に聴いたことがある。

「インドの配送網や道路整備は最低。宅配便届いたと思ったら、注文から数週間後。
 おまけに、商品はビリビリに破れてる」

おそらくそれは、宅配便会社が抱える配車数が少ないせいか、
回転率ビジネスが回っていないのだろう。

だとしたら、こういう考えはないか。

ユニリーバが考えた訪問販売新ビジネス「ヒンドゥスタン・リーバ」のように、
タクシーが沢山ある状況は、道路整備状況に関わらず、”配送におけるメリット”だ。
タクシー会社同士がボランタリーチェーンを組んで、宅配便事業を営めば、
タクシーのアイドリングタイムも少なくなる。
タクシー運転手は、地図のプロだし、目的地に的確に届けられる。

その際の課題点は、端的には
・依頼主とタクシー運転手との位置/時間マッチング
・その際の決済システム
となる。

一方で、タイのスマートフォン所有率やFacebook利用率は高い。
つまり、上記の課題点を克服するに足る情報インフラは整っている。

考えてみたら当然のことかもしれないが、
タクシー運転手が副業できたり、さらに地図を覚えられたりできる機会も提供できる。

日本でもこういうのできる気がする。

タクシーが多いと、排気ガスが悪いだの何だのってネガティブな意見が相次ぐが、
視点を変えてみると、ビジネスチャンスだっていっぱい眠っているもの。

そんな刺激をくれたタイ。

勿論、現地のプラナーたちのクオリティの高さ、人から学ぼうとする姿勢、
人から知恵を盗もうとする意欲は相当だった。

海外に一歩出てみると、
日本にいると気づきもしないことが気づけたりする。

まだまだ頑張らないといけないことは山ほどある。

"Delight is Contagious"-喜びは伝播しやすい

最近のことではないが、「Sneakpeeq」というサイトと出合った。

http://www.sneakpeeq.com/


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簡単に言ってしまえば、ソーシャルを活用した共同購入サイトなのだが
面白いのが、Sneakpeeqには、商品ページに商品価格が書いてない点。

ユーザが興味のある商品のプライスタグをPeeq(覗く)して、初めて商品価格が分かるというもの。
また、新規ユーザーは、1日20回しかPeeqできない仕組み。

何が言いたいかというと、この”プライスタグ”をめくって、
商品価格を確認させるというユーザーエクスペリエンスの設計思想が
極めて素晴らしいということだ。

買い物をする時、衝動買いでも何でもいいが、顧客は必ず”プライスタグ”をめくる。
それを確認して商品を買うかどうかを決めることだって往々にしてある。

こうしたリアルライフに潜んでいるちょっとした経験や購入を後押しするであろうtips体験を、
オンラインの世界で再現させて購入意欲を盛り上げるという手法は非常に重要だ。

”Replicate”(複製、再現)という言葉をよく見かけるが、
オフラインで生活している中で、何気ない行動・意識・行為みたいなものを
オンラインで再現すると、まだまだ色んな可能性が眠っているようだ。

考えてみると、

・クルマに乗る時
・タクシーに乗る時
・靴を脱ぐ時
・手を洗う時
・料理をする時
・TVを観る時
・寝る時

等々、Internet of Things(モノのインターネット化)ではないが、
”Internet of Moments”(刹那のインターネット化)みたいな瞬間をとらまえる余地は
まだまだありそうだ。

こうした現象を捉えていくと、その底流に流れている思想は、
「Delight is Contagious = 喜びや快楽は伝播しやすい」という
一つのインサイトだと思う。

単純に、喜怒哀楽のうち、喜びほど伝播しやすい、自分ごと化しやすいモノはない。
それはオフライン、オンライン問わずだ。
この言語化されていない/できない領域をもっと真剣に考えてみると、
広大なマーケティングやビジネスの可能性が開けているとも言える。
Sneakpeeqはこの重要な視点を教えてくれている。

”Internet of Moments”改め、”Internet of Delights”に隠れている可能性。
モノ自体、サービス自体、UIやUEX自体を考える前に、
「そういえば普段やってるかも」「普段やっていて気持ちいい」といった当然のことや、
誰もが気づいていない瞬間を発掘する視座はオンラインの世界を考えるうえで、とても大切。

普段の観察力を磨くしかないな…

そんなこんなで、2012年の最初の1ヶ月が過ぎようとしている。

「大衆の死角」をうまく見つけるためには?

今年のクリスマス。
街に出て、映画も観て、フランス料理も食べて、チキンも食べてと、
いわゆるクリスマス消費を謳歌してみた。

街には人集りが沢山、みんな思い思いのクリスマスを過ごしているんだなと、
普通にイルミネーションとかを見ていたのだが、
そんな時、ふと思ったことがある。

それは、

「クリスマスで外出している人たちってある一定方向に、盲目的に向かい過ぎてないか?」

ということだ。

例えば、人気のイルミネーション。
交通整理がなされる等、人の流れを一方向に制御するスタッフがいたり、
いわゆる、行列のできる店や行列のできる場所に出向こうとする人が沢山いたり。

人気のレストラン、人気のアトラクション、人気の映画、人気のスポット。
年の催事には、とかく”人気””行列のできる”といった形容詞が付く商品・サービスが
どうやら人気らしい。

しかし、それって結局、
消費や行動の、ある一側面しか切り取っていないのではないか?と強烈に思うのだ。

例えば、クリスマス当日のこと。
イルミネーションに出掛けていた際に、ちょっと疲れたと思い、
近くのスタバに逃げこもうとすると激混みだった。
近隣の他のありとあらゆるカフェも、大混雑。

そんな時、ちょっといつもとは違うルートを辿ろうと思い、
ひとたび、路地裏やちょっとした脇道に入ると、がら空きのカフェがあったり、
がら空きのファーストフード店があったり、どこか新鮮な雰囲気に遭遇した。

つまり、大衆が一方向に流れるのを”わざと”遮ってみると、
「大衆の死角」というべきものに遭遇するのだ。

心理学的には、「大衆雪崩現象」と呼ばれるものがある。
人気があるものや人集りができているもの等に、人は安心感・信頼性を寄せるため、
みんなが向かう方向に向かいやすくなる、という現象だ。

一方で、昨今、この「人気」という現象をつくりだすのは一苦労なのも事実。
とすれば、「大衆の死角」というべき心理を具現化したアプリやサービスって、
もしかして成立するのではないか?と。

例えば、OpenTableと呼ばれるレストラン予約サイトがある。
レストランの混み状況などを”リアルタイム”で教えてくれる優れものだ。

http://www.opentable.jp/start.aspx?m=201

こうしたサービスを使えば、「大衆の死角」が簡単に見つかるようになり、
同時に、その人にとって新しいセレンディピティーの境地が開かれるとも思う。
とんねるずの番組で、「きたなシュラン」というのがある。
店構えはものすごく汚いが、その実、味に関しては至極一品のお店を紹介する番組コーナー。
個人的には、こういうお店に出合ってみたい欲求が高い。

”人気””行列のできる”というシグナリングは、
良くも悪くも、生活者の思考力を弱めている気がするのは自分だけだろうか。

あえて、”不人気”、”汚い”、”行列のできない”といった
モノやコトとの出合いを模索するのも、思考の豊かさを象徴する出来事だとも思う。

こういう出合いを促すようなアプリやサービスって、
捉え方によっては、まだまだ開発余地があるもんだな。

「Club Recovery」 - will.i.am DJ LIVE@tokyo

先週、待ちに待ったwill.i.amチャリティーライブに行ってきた。

「Club Recovery」@Tokyo, shinagawa

グラミー賞を何度も受賞しているアーティストの生ライブ。
それを至近距離で見ることができただけでも幸せだった。
選曲のセンス、ボコーダーを駆使しての盛り上げ方、観客との一体感の醸成など、
これぞエンターテイメント!という誰しもがうなずける世界が目の前で繰り広げられていた。

以前に行ったシルク・ド・ソレイユで体感したような、
カラダの芯に訴えてくるような、抵抗しがたいあの感覚。

ライブが持つ魔法なのだろう。
普段の時空間を一瞬だけでも歪めて、未知なる共感世界の中に引きずりこんでいく。
よく考えてみると、ライブって、興奮渦巻くブラックホールだ。

※その時の映像↓ウィルがChris Brownのyeah×3を選曲して歌うという最高の瞬間!

■will.i.am DJ LIVE@tokyo 14/12/2011

https://www.youtube.com/watch?v=Hf8VMIOY_1o

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閑話休題、同じくして、12月1日に、シカゴ近郊のショッピングモールで
T-Mobileの新しいフラッシュモブCMがフライトされていた。

■T-Mobile's Home For The Holidays Surprise

http://www.youtube.com/watch?v=vcmfCXwAFs4&feature=youtu.be

この演出自体は、数年前から”Life's for sharing”というタグラインで
彼らがコミュニケーションを行なっているものだが、
今回のCMを見ても、何度見ても思うことがある。

「フラッシュモブの周囲に、沢山の笑顔が生まれていること」だ。

広告、いや、コミュニケーションって
究極的にはやっぱりこうあるべきなんだな、と
本当に気付かされる。

ウィルのライブもそうだが、人に向かってメッセージを発信したり、
インタラクティブの世界に参加してもらう際の必須条件として、
”笑顔”なる共感覚を発生させないものは、
本源的にそれはコミュニケーションではない。

今回ウィルのライブに行って、元気をもらっただけじゃなく、
人と人との間に、「共感の磁場」を発生させることの重要性、
これを心底学んだ気がした。