ロバート・ワイズ,ジェローム・ロビンズ監督

 

理由なき反抗」とのつながりはナタリー・ウッド1)です

 

 

ニューヨーク,マンハッタン島のウェストサイドで対立するジェット団(ポーランド系),シャーク団(プエルトリコ)。それぞれのグループの関係者トニーとマリアが恋に落ち,最後は悲劇的な結末を迎えるという,「ロミオとジュリエット」を元にしたお話,ミュージカル映画です。

 

 

急に歌い出すし,踊りだす,意味わからん,そう言ってミュージカル映画を嫌っている人は一定数いますね。これは事実です。

僕もかつてはそう言った輩の1人でした。

その意識を一気にひっくり返したのがこの映画です。

 

シェークスピアの「ロミオとジュリエット」,小説を読んだわけではありませんが,フランコ・ゼフィレッリ監督の ロミオとジュリエット(1968)を見ていて話の内容は知っていました。

ストーリーは同じような感じで結末も予想通りになっていますが,この映画の本質はストーリーではありません。

この映画に限らず,ミュージカル映画の素晴らしさは曲の完成度の高さや踊りなどのパフォーマンスにあると思っています。

 

 

 

口笛の音,黄色の背景に浮かぶ縦線のなか,音楽が流れます。

背景が音楽により変わっていきます。赤(トゥナイト)→紫~青(マリア)→緑~オレンジ(マンボ)。これが青に変わり,WEST SIDE STORYの文字。その後,縦線はマンハッタン島に立つ摩天楼に変わっていきます。

 

そしてまた口笛

 

空からの映像から,指を鳴らした集団,ジェット団にフォーカスされます。

みんなが道路に移動していきますが,ここでいきなり踊り出します。いいですね。

 

 

かわってシャーク団の3人

ビルの前で踊る3人。脚が高く上がっています。美しいですね。

この場面は有名ですね。この場面を使ったポスターもあります。

 

この映画には一度聞いたら忘れられないような名曲が満載です。

 

America

シャークスの面々が踊って歌う "America" はイイですね。

プエルトリコからの移民である彼らがアメリカの自由と,その反面の移民に対する差別だったり不平等に対する反感を歌っています。

その歌詞の内容は現在でもまあまあ当てはまるんじゃないのかな。

 

 

 

 

Tonight

マリアの住むアパートの非常階段での2人は,ロミオとジュリエット のバルコニーの2人です。ここで2人が歌います。

Tonight, tonight,

The world is full of light,

With suns and moons all over the place.

Tonight, tonight,

The world is wild and bright,

Going mad, shooting sparks into space.

 

Tonight は終盤 Quintet(五重唱)としても再登場します。

ジェッツ,シャークス,アニタ,、トニー,マリアがそれぞれ Tonight を歌い最後にぴったり "Tonight"と発声し終わります。同じ曲を美しいデュエットで歌い上げたり,緊迫感あふれるクインテットにしたりすごいですね。

 

 

 

Somewhere

高速道路下の決闘から戻ったトニーがマリアに会うシーン

2人は以前の生活にはもう戻れないことを悟り,歌います。

Emotionalな声に心を揺さぶられます。

 

There's a place for us,

Somewhere a place for us.

Peace and quiet and open air

Wait for us

Somewhere.

美しいこの曲はバーブラ・ストライサンドをはじめいろいろな歌手がカバーしています

 

 

これらの曲のほかにも "Gee, Officer Krupke" や "Cool" などすばらしい曲ばかりです。

サウンドトラック・アルバムは,1960年代に最も売れたレコードであり,ビルボード・チャートでも一時は歴代トップ・セラーに君臨しました。

僕もレコード持っています。

 

 

みな大変うまく歌っていますが,かなりの部分が吹き替えられていたようです。

主要登場人物の中で唯一吹き替えがなかったのはベルナルド(ジョージ・チャキリス)だけです。彼が歌うのに難しいソロ曲がなかったためだそうです。

アニタ(リタ・モレノ)も高い音域の歌は吹き替えられていましたが "America"はモレノ自身が歌っています。

ナタリー・ウッドも実際に歌うことができましたが,この映画の歌には十分ではないと判断され,マーニ・ニクソンが吹き替えています。

 

この映画,アカデミー賞では作品賞,監督賞をはじめ10部門を受賞しています。

助演男優賞(ジョージ・チャキリス),助演女優賞(リタ・モレノ)や作曲賞も受賞していますが,数々の名曲を作曲しているレナード・バーンスタインの名前がないことが不思議です。

 

AFI(アメリカ映画協会)の選ぶベスト100(1998)で41位

AFI(アメリカ映画協会)の選ぶベスト100(2007)で51位

情熱的な(Passions)映画ベスト100で第3位

ミュージカル映画ベスト25(2006)で第2位となっています

 

またアメリカ映画主題歌ベスト10(2004)では

20位,Somewhere

35位,America

59位,Tonight が選曲されています。

 

いろいろなところで評価されているこの映画は名作中の名作と言っていい映画でしょう。個人的にも大好きな映画のひとつです。

 

 

スティーブン・スピルバーグが ウエスト・サイド・ストーリー(2021) の監督をしました。どうしてスピルバーグがこの映画をリメイクしようとしたのかは定かではありませんが,シャークスとジェッツのような人種的な対立は悲しいことだけれど今でも続いていると言っていたようです。

なお,ジョン・ウィリアムズがウエスト・サイド・ストーリー(2021)の音楽コンサルタントを務めたそうですが,ウエストサイド物語(1961)のサントラ盤のピアノソロとして参加していたそうです。すごい人です。

 

 

この映画,エンドクレジットが始まっても席を立ってはいけません。

物語が終わってもオーケストラ演奏による映画の曲のメドレーが流れます。

これを聴きながら塀に無造作に書かれた文字をひとつひとつ眺めていくと得した気分になります。

デザインはソール・バス2)です。

冒頭のポスターのデザインもソール・バスです。

 

 

 

1)   ナタリー・ウッド

子役出身の女優です。三十四丁目の奇蹟(1947)に出演していました。

理由なき反抗(1955)のあとの映画ではエリア・カザン監督の 草原の輝き(1961)が良かったですね。この映画の中で彼女が演じた主人公が授業中にワーズワースのSplendor in the Grassを朗読している最中に飛び出すシーンは印象的でした。

ロバート・マリガン監督でスティーヴ・マックィーンと共演した マンハッタン物語(1963)ではアカデミー賞主演女優賞にノミネートされています。

シドニー・ポラック監督の雨のニューオリンズ(1966)ではロバート・レッドフォードと共演し,その後,候補者ビル・マッケイ(1972)では本人役で出演し,再度ロバート・レッドフォードと共演しています。

ロバート・ワグナーと2度結婚しています。1981年,カリブ海で亡くなりましたが,死因は謎のままです。享年43歳。

 

 

2)   ソール・バス

グラフィックデザイナーですが映画のタイトルデザインで広く知られています。

オットー・プレミンジャー監督やアルフレッド・ヒッチコック監督のポスターで有名です。

左から,悲しみよこんにちは(1958),めまい(1958),大いなる西部(1958)

 

ほかにも数々のポスターデザインを行なっています。

昼下がりの情事(1957),あなただけ今晩は(1963),シャイニング(1980)

これらのポスターもソール・バスのデザインです。

 

また企業のロゴのデザインも手がけており,日本の企業にもソール・バスのデザインしたロゴがいくつかあります 

コーセー

 

クリネックス

 

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