ロバート・マリガン1) 監督

 

「アラバマ物語」とのつながりはロバート・マリガン監督です。

 

 

第二次世界大戦中,夏休み中のニューイングランドの島が舞台。

15歳のハーミー(ゲイリー・グライムズ)と人妻ドロシー(ジェニファー・オニール2))のひと夏の経験を描いた叙情あふれるお話

 

 

悪ガキトリオ(Terrible Trio),主人公ハーミー,オスキー,ベンジーが暇をもてあましてブラブラしているところやベンジーが持ち出した医学書?の興味を持って見ているところはおもしろいですね。

 

男子なら誰でも通る「性春の日々」がストレートに描かれていて笑ってしまいます

 

「第6ポイント,Foreplay」なんて,How to sexのことを大まじめに書いてある医学書があるのか?あるいは1942年当時はあったのか?と突っ込みたくなります。

それにしてもカーボン紙を使って記録を2部とるところが1942年らしくて良かった。

 

映画館で女子のグループに声をかけ一緒に映画を見ますが,ベティ・デイビス3)主演の 情熱の航路 Now, Voyager(1942)を15歳の男たちが見るのかって思っちゃいました。

女子と一緒なら何でも良かったわけですけど。

この映画の中の映画「情熱の航路」の実際の公開日は1942/10です。ですからこの年の夏には本当は放映されていませんでした。

 

 

ドラッグストアでのやりとりもおもしろかった。

Rubberといっていましたがコンドーム(またはスキン)3個入りで1ドルでしたね。

ネットで現在の価格を調べたところ現在一番安いので12個入り546円でした。1個あたり45.5円

1ドル140円で計算すると46.7円ですので80年前とほぼ同じ値段かな。

いや現在の円相場で値段を考えるのは無理でした。太平洋戦争直前の1941年には1ドル=4円20銭程度だったそうなので単純に貨幣価値の計算はできません

今はネットでも購入できますし,自動販売機もあるらしいです。

対面でのドキドキは過去の話でしょうか

このシーンがあるためこの映画の公開当時アイルランドでは上映禁止でした。

アイルランドでは1980年まで避妊が禁止されていました。カトリック教会には避妊を禁じる教義があったからでしょうか。ようやく1980年に劇場公開されています。

 

 

 

主人公のハーミーは夫が戦争に行っている人妻ドロシーに心を奪われるわけですが,その気持ちはわかります。

 

ジェニファー・オニールが美しい

僕はこの映画,高校生の頃,とある名画座で見ました

ジェニファー・オニールを見たくて2回見た記憶があります
 

 

そして音楽がすばらしい

担当はミッシェル・ルグラン4)です。

オープニングクレジット,エンディングを除いて,ドロシーが登場するシーン,ハーミーがドロシーに恋愛感情を抱くシーン関係にのみ音楽を使っています。

 

 

 

 

さらに映像が美しい

戦争中なのに小さな島の穏やかな情景,青空,きらめく海,ドロシーが住んでいる丘の上のぽつんと立つ家,青みがかったざらざらした映像,素敵です。

撮影はロバート・サーティース。さすがです。アカデミー賞撮影賞にノミネートされています。

 

 

この映画は若い頃見たということもあって,すごく印象に残っている映画です。

毎年夏になると見たくなる映画です。


映画の舞台が約80年前,映画が作られたのが約50年前,どっちにしろノスタルジーの世界に入っています。何がいいのかって説明しにくいですが,この映画の空気感がたまらなく好きです。

AFIの選ぶアメリカ映画100年シリーズにはひとつも選ばれていませんがいい映画です。

個人的には,自分の好きな映画ベストテンに入る映画です

 

最後のナレーション

「・・・人生のささやかな出会い,人はそれで何かを得て,同時に何かを失う・・・」

含蓄のある言葉です

 

 

 

1)   ロバート・マリガン

アラバマ物語」のプロデューサーのアラン・J・パクラが製作した ナタリー・ウッドやスティーヴ・マックィーンが出演した マンハッタン物語(1963),ハイウェイ(1964),サンセット物語(1965)などの監督を行なっていますが,やはり代表作は「アラバマ物語」,「おもいでの夏」です。この2作だけでも永遠に残ってもいい映画です。

 

2)  ジェニファー・オニール

ジョン・ウェイン主演でハワード・ホークス監督の遺作にあたるリオ・ロボ(1970)で映画デビューし,続く「おもいでの夏」でスターになりました。ダイヤモンド・コネクション(1973),リインカーネイション(1975)に出演後,ヨーロッパに渡り,イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督の指導を受け,ヴィスコンティの遺作となった インセント(1976)に出演しています。その後はTVドラマが中心の活動になっています。

 

3)  ベティ・デイビス

ハリウッド映画史上,最高の演技派女優といわれています。

痴人の愛(1934)の悪女ぶりが高評価されましたが,アカデミー賞にはノミネートもされませんでした。この頃のアカデミー賞は,まだ歴史も浅く,意図的に受賞候補から排除できる仕組みだったようです。抗議が殺到しましたが,結局そのままになったようです。その後,青春の抗議(1935),黒蘭の女(1938)でアカデミー賞主演女優賞を受賞します。それ以降も8作品でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされています。

AFI(アメリカ映画協会)の選ぶ伝説の女優(1999)の第2位に選ばれています。

AFI生涯功労賞(1977)を受賞しています

AFIアメリカ映画ヒーローと悪役ベスト100(2003)で 偽りの花園(1941),何がジェーンに起ったか? (1962)の2作品で悪役として選ばれています。

 

「何がジェーンに起ったか?」のベティ・デイビスは,化粧だったり,演技だったりするのでしょうが,狂気に駆られた醜悪な老女そのものでした。強烈な印象として残っています。

 

4)   ミッシェル・ルグラン

フランスの作曲家,ジャズ・ピアニストです。マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンとの共演したアルバムもあるようです。

1960年代から映画音楽を手がけ シェルブールの雨傘(1963),ロシュフォールの恋人たち (1967)といったミュージカルの音楽を担当しています。これらの映画でアカデミー賞ミュージカル映画音楽賞にノミネートされました

以前このブログで紹介した 華麗なる賭け(1968)でアカデミー賞歌曲賞を受賞し,「おもいでの夏」ではアカデミー賞作曲賞を受賞しています。その後も多くの映画の音楽を担当し,愛のイエントル(1983)でアカデミー賞音楽(編曲・歌曲)賞を受賞しました。

2019年に亡くなっていますが,葬儀には,時のフランス大統領夫人ブリジット・マクロンや映画監督クロード・ルルーシュらが参列したようです。