スティーヴン・スピルバーグ1)監督

 

 

フレンチ・コネクションとの繋がりはロイ・シャイダー2)です

 

平穏な町アミティの海辺に突如現れ,人を襲う巨大なサメ。

三人の男たちがこの化け物みたいなサメに立ち向かう物語です

 

 

 

オープニングクレジットで ♪ミファミファ の例のメロディが流れます。

 

作曲はジョン・ウィリアムス。

スピルバーグの初期の映画はほとんどがジョン・ウィリアムスの音楽で成り立っています(ブログ「スターウォーズ」2023/01 で紹介済み)

この映画の音楽は,アメリカ映画協会(AFI)が2005年に発表した「映画音楽BEST100」の6位にランクインしています。

 

 

夜のビーチで1人の女子が海にはいると海中の何者かに襲われ翌朝海岸に遺体の一部が流れ着きます

サメだと思った警察署長ブロディ(ロイ・シャイダー)が海岸を閉鎖しようとしますが観光シーズンを前に市長らからは猛烈に反対されます。

その後,男児が犠牲になり,サメ退治に賞金がかかります。賞金目当てで多くの人が集まり,大きなTigar Shark(イタチ鮫)を見て関係者は一件落着と安堵しました。

 

 

そこに海洋学者フーパー(リチャード・ドライファス)登場。

 

人食い鮫はもっと大きいホオジロザメだと主張し,ブロディと二人で海に出ます。無人のボートでまた遺体を発見し,市長に訴えますが受け入れてもらえません。

 

海水浴場では大勢の人が泳いでいます。海面下から見上げるカメラが不安をあおります。

 

サメのひれを見つけて” Get out of the water”「サメがいるから逃げろ!」といった時の海水浴客のパニック反応は本物です。エキストラとして雇われていましたがこの映画が何についての映画なのか知らされていませんでした。本当にサメがいると思わせて撮影したようです。

 

このひれは実際には子供のいたずらでしたが,離れた入り江に本物のサメが出現します。

 

ここで初めてサメがチラッと姿を見せています。

 

プロデューサーは当初,映画のために本物のホオジロザメを調教しようと考えていましたが,すぐにそれは不可能だとわかり機械仕掛けのサメを準備したそうです。

スピルバーグは,このサメを自分の弁護士の名前から「ブルース」と名付けていました。

ちなみにファインディング・ニモ(2003)に登場するサメはブルースという名前です

 

 

なかなか画面に実際にはサメが出てきません。スピルバーグの出世作,激突!(1971)でもトラックの運転手の姿を見せませんでした。

 

すぐにはサメが登場しないのは演出なのでしょう。またサメの模型のクオリティがあまり高くなかったのでよく見えないように一瞬だけ撮影してサメの存在を暗示するようなショットをたくさん使ったと言っていました。これは編集者のヴァーナ・フィールズ3)の功績です。

 

市長はしぶしぶ漁師クイント(ロバート・ショウ)を雇い,ブロディ,フーパーとともに3人はサメ狩りに出発します。

 

 

クイントの船の名前がオルカですがオルカとはシャチのことです。

ホオジロザメの唯一の天敵です。

 

 

 

船の中でクイントがブロディにロープの結び方を教えていました

舫い(もやい)結び,bowline knotといって船舶関係,キャンプ,登山などで使われる基本的なロープワークです。

 

 

 

ブロディが撒餌をしているとサメの頭が見えます。

 

“You're going to need a bigger boat”,「もっと大きな船が必要だ」というセリフは,ロイ・シャイダーのアドリブのようです

 

 

 

クイントはサメの大きさを8m,3トンと推定していますが,平均的なホオジロザメの全長は4.0-4.8m,体重1トン弱と言われています。Wikipediaには全長7m以上、体重2.5トン以上と推定される個体が捕獲されたことがあると記載されていました。

これを上回るわけですから世界最大級ですね。

 

 

フーパーが檻の中に入って水中からサメの口に薬剤を打ち込む戦術も失敗しました。

この場面の撮影はオーストラリアで本物のサメを使って行なっています。

最初のシナリオではサメを挑発して檻とフーパーに見立てたダミー人形を攻撃させ,檻を破壊してフーパー(ダミー)を引き裂く予定でした。最終的には檻を破壊する映像は撮影できましたが,フーパーのダミーはその時,中にいませんでした。これが最高の映像だったのでスピルバーグはそれを使用することに決めて,フーパーは生き延びることになりました。

 

 

 

クイントがサメの餌食になるところもだいぶむごたらしい映像でしたが,本来はもっと血まみれになる予定でした。あまり残酷な映像があるとアメリカ映画協会の定めるレイティングシステム(日本の映倫にあたる)で映画を見る年齢制限がされるのでここで落ち着いたようです。

 

 

この映画はアカデミー賞作品賞,にノミネートされましたが,この年の作品賞の受賞作はカッコーの巣の上で(1975)でした。

「ジョーズ」は編集賞,作曲賞,音響賞を受賞しています。

ジョン・ウィリアムズはこの年のアカデミー賞授賞式でオーケストラを指揮していたためアカデミー賞作曲賞受賞が発表されると表彰台に駆け上がりオスカーを受け取りまた駆け戻ってオーケストラを指揮し続けなければなりませんでした。

 

AFIが2001年に発表したスリルを感じるベスト100で2位にランクインしました。

 

 

 

スピルバーグの描いたこの映画の絵コンテです。

 

 

 

1)   スティーヴン・スピルバーグ

フォーブスの「アメリカで最も裕福なセレブリティ」第2位です。第1位はジョージ・ルーカスですが,ルーカスフィルムをディズニーに売却したためであり,それまではスピルバーグは1位だったのかな。

最初からお金の話になりましたが,そのくらい監督した映画がヒットしたということです。この映画も公開当時はそれまでの興行収入の記録を更新しています。

 

フェイブルマンズ(2022)は自伝的な内容の映画でしたが,映画に対する情熱は幼少の頃からものすごく強かったことがわかります。

 

ざっと監督作品を上げていくと,激突!(1971),続・激突!カージャック(1974),ジョーズ(1975),未知との遭遇(1977),レイダース/失われたアーク《聖櫃》(1981),E.T.(1982),インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説(1984),カラー・パープル(1985),太陽の帝国(1987),インディ・ジョーンズ/最後の聖戦(1989),オールウェイズ(1989),フック(1991),ジュラシック・パーク(1993),シンドラーのリスト(1993),ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク(1997),プライベート・ライアン(1998),A.I(2001),マイノリティ・リポート(2002),キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002),ターミナル(2004),宇宙戦争(2005),ミュンヘン(2005),インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国(2008),戦火の馬(2011),リンカーン(2012),ブリッジ・オブ・スパイ(2015),ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(2017),レディ・プレイヤー1(2018),ウエスト・サイド・ストーリー(2021),フェイブルマンズ(2022)

 

すごいですね。ほとんど切れ目なく次から次へと映画を作っています。このほかにバック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズやジュラシックワールドシリーズなどプロデュースした作品も沢山あります。

しかもこれらの作品はみなおもしろい映画であり,感動的な作品もあります。

 

アカデミー監督賞は8回ノミネートされ,「シンドラーのリスト」と「プライベートライアンで2回受賞しています。作品賞は「シンドラーのリスト」で受賞したほか,ノミネート作は10本を数えます。1995年,AFI 生涯功労賞を受賞しています。

たいしたもんです

 

 

2)  ロイ・シャイダー

フレンチ・コネクション(1971)でアカデミー助演男優賞にノミネートされています。

「フレンチ・コネクション」後は,刑事ものの脚本が殺到し,何度も同じ役を演じ,どの刑事映画も安っぽい模倣だったと言っています。

「ジョーズ」後,一躍有名になり,ジョン・シュレシンジャー監督のマラソンマン(1976)や再度ウィリアム・フリードキン監督と組んだ恐怖の報酬(1977)に出演しています。ボブ・フォッシー監督のミュージカル,オール・ザット・ジャズ(1979)では再度アカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。ロイ・シャイダーは自分が演じたキャラクターでは「オール・ザット・ジャズ」の振り付け師ジョー・ギデオンが一番好きだと言っていました。

 

3)  ヴァーナ・フィールズ

テレビの音響編集からキャリアを積み上げ,映画編集に携わるようになりました。南カリフォルニア大学(USC)で映画編集の講義を受け持ったことが運命の分かれ道になっています。南カリフォルニア大学での教え子にジョージ・ルーカスがいました。彼の2作目の監督作品,アメリカン・グラフィティ(1973)の編集を行なっています。ユニバーサル在籍中にジョージ・ルーカス,スティーブン・スピルバーグという2人の若手監督を紹介したことも功績となり,ユニバーサルの副社長にまで出世しています。

「ジョーズ」のなかで,スピルバーグが1日かけて撮影したサメのショットを使うか,なかなかサメの姿を見せないようにするかで喧嘩になったそうですが,結局,フィールズの意見に落ち着きました。正解!

なお以前(2023/03)に紹介した「ペーパー・ムーン」の編集もこの方が行なっています。