LINEヤフーは3月15日、同社が2021年1月に設置した「デジタル時代における民主主義を考える有識者会議」(座長:慶応大教授の山本龍彦氏、くすり×リテラシー2022年3月3日9月3日)の最終報告書(pdf)を公表しました(LINEヤフー2024年3月15日朝日2024年3月16日)。LINEヤフーはつい先日、昨年11月から今年2月にかけて外部からの不正アクセスでLINE利用者の個人情報を含む50万件超の情報流出が発覚したことで総務省から行政指導を受けたばかりです(総務省2024年3月5日朝日2024年3月5日)。タイミングが良いというか悪いというか……(笑)。

 

ともあれ最終報告書では「議論の前提となる基本的事実(ファクト)が、偽・誤情報によって当たり前に共有されなくなることは、民主主義を大きく毀損することに繋がる」(p12)ため、信頼できる情報源としてのマスメディアの役割は大きいはずだが、「情報発信者が多様化された結果、マスメディアの情報発信者としての相対的な価値が低下して」(p13)おり、従って「情報流通を管理するソーシャルメディアやデジタルプラットフォームがより積極的な役割を果たすことが求められる」(p13)ものの、現実にはの「自主的な努力に依拠せざるを得ない状況」と述べています。そんなぬるいことだから上記のような情報漏洩も起こってしまうのかも。

 

こういう状況下で誤情報・偽情報に騙されないようにするには、個々の能力(リテラシー)を高めるしかないと思いがちですが、悲しいことに「アテンション・エコノミーも、エコーチェンバーも、フィルターバブルも、認知バイアス等の個人の脆弱性を増幅させる形で影響力を高めており、個人の努力による対応には限界があ」り、さらにAIの進化やメタバースの普及で「個人の脆弱性はより高まっていくと考えられます」(p17)。そんな中でプラットフォームができることとして9項目(ある程度着手されているものも含まれる)を提案していました(p27~28)。

 

うち、筆者が特に関心を持ったのは以下です。→以下は感想。

・ユーザーが発信者の信頼性を自ら判断する際の補助となる情報を公開する → まさに「いなかもち=かちもない」(くすり×リテラシー2020年3月6日3月12日5月26日10月16日2021年2月2日6月29日2023年4月10日)の「書いた人は誰か」が大事だという話。発信者の真正性を確認できる仕組みをOriginator Profile(OP、総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」(第18回)2023年5月19日開催資料18-2)と呼ぶことを知りました。

・ユーザーが報道機関や公的機関の発信とそうでない発信とを判別しやすいようにする → 「事実とオピニオンでラベル分けをする等、視覚的に分かりやすい区分けを導入する必要がある」と書かれていますが、OP組合に参加している報道機関だって“インフォマーシャル”の形でステルスマーケティング(くすり×リテラシー2022年9月25日12月27日2023年10月2日)っぽいことに手を染めているので、どこまで徹底できるのか?

・発信者に対して良質なコンテンツの作成を促すため、PV 以外の評価指標を導入する → これも誰もが考え付きそうなことだけど、評価指標には価値が伴うから誰もが納得する指標を作るのは至難の業。