肥前町の入野から出ているローカル線の一つ、星賀線。海岸の崖に沿って走る絶景区間を抜けると、急坂を駆け下り、バスが通れるのかどうかもわからないようなほぼ直角の曲がり角を突破し、最後は岸壁の真横でバスが止まりました。玄界灘に面した小さな漁村の終点にバスがたたずむ景色は、のどかでほのぼのする光景です。実はここからまだ旅を続けることができ、星賀から一日三回、向島という人口50人ほどの小さな島へ行くフェリーが発着していて、時間が合えば長く待つことなくバスとフェリーの乗り継ぎも行えます。と言いたいところですが、もうそれもおしまいです。星賀線はこの春をもって朝の星賀始発の二本を除いて運行がなくなり、予約制交通へ変更されます。バスで星賀へ到達できるのもあと数日です。この景色がなくなってしまうのは、大きな損失でしょう。

2023年4月7日撮影 昭和バス星賀線

 ~神話の舞台、天岩戸へ、宮崎交通のバスが行く~

 遥か神話の時代に天照大御神がお隠れになられたというその場所へ、宮崎交通(高千穂町ふれあいバス)の岩戸線が走っています。天岩戸の終点は、小さな商店街やスーパー、公民館などがあるこの地域の拠点となる集落です。集落としての規模は小さいようですが、頻繁に地元の人が行き交い、活気に満ちています。このバス停から少し歩いたところに、天岩戸があります。日本人なら誰もが知っている、有名な神話の舞台は、まさにここです。天岩戸の神職の方のお話を聞いたところ、ここは自らに恵みを与えてくれる自然を崇拝するという、古の日本人の価値観を代表する場所のようでありました。普段はバス路線探訪がメインでありますから、ここまでバスに乗ってきてらすぐに帰ってしまいますが、せっかくここまで来たので帰ってしまうのはもったいないと思い、天岩戸神社を参拝しました。お清めを受けて、神域に入ると、普段私はスピリチュアルなものは信じないほうでありますが、はっきりと空気が変わり、峰ない力に圧倒されたのを感じました。

 「湯田」という、温泉地の多い火の国熊本らしい行き先を掲げた路線バスに揺られて30分、南小国町の山間部でバスを降りました。集落の中心に少しのスペースがあって、バスは発車までの少しの時間を過ごします。有名な観光地を通るわけでもなく、阿蘇地域の路線バスの中でも存在感の薄かった湯田線ですが、阿蘇の人々の暮らしを感じられるのどかなローカル線でしたので、もう乗れないことが非常に悔やまれます。

2017年9月24日撮影 産交バス 湯田線

 八幡浜駅から延々と伊方半島を走り続けること一時間、バスは四国の端っこ、三崎の集落に到着しました。伊方半島の海岸線は地形が厳しく、山が海と接しているようなところがほとんどで、平地なんかまったくありません。愛媛の人々は、この険しい地形を切り開き、苦労して住む場所を作ってきたように思います。三崎もそんな集落の一つで、海と山のわずかな隙間に、港を作り、畑を作り、家を建て、道を通し、なんとか住んでいくことができるように工夫しているようです。そんな最果ての集落までやってくる路線バスというのは、旅をするのにふさわしく、一度は乗るべき路線でしょう。

2023年8月29日撮影 伊予鉄南予バス メロディーライン経由三崎線

 JR九州バス嬉野線の東端の終点、長崎県東彼杵郡東彼杵町の彼杵駅のバス停です。JR大村線の彼杵駅の目の前にバス停があります。駅のすぐ傍はもう大村湾が広がっていて、バスの車内からも海を眺めることができます。この路線は、かつては国鉄の路線でした。国鉄バスの役割は、「鉄道路線の、先行・代行・培養・短絡・補完」といわれています(Wikipediaより参照)。この日、バスの発車直前に到着した列車からは、嬉野線のバスに乗り換える人の姿が見られました。かつて国鉄バスだった時代の役割を、今でもしっかりと果たしています。

 

2024年、明けましておめでとうございます。いつも豊の国バス紀行、及び豊の国バス紀行県外編をを応援していただき、誠にありがとうございます。昨年は、東は長崎、北は北海道、関東に四国と、全国のバス路線に乗車する機会に恵まれました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

2023年12月28日撮影 JR九州バス嬉野線