米中貿易戦争を俯瞰する
米中が貿易戦争になると報道されています。
いまの経済学では、“貿易赤字”は目くじらを立てるような問題ではなく、その国に購買力があるということだけ、と解釈されるようです。
もし貿易赤字が問題なら、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などに対する日本の赤字額は見過ごしにできないスケールだといえます。
今回、米国は、鉄鋼とアルミへの高関税ほか、5兆円超の中国製品に対して関税賦課の実行へ。
また、米国と自由貿易協定を締結していない国々にも制裁は発動され、日本にもとばっちりが及びます。
中国首脳は「受けて立つアルヨ」と声明を出し、まさに戦争の様相を呈しつつあります。
関税が高くなって困るのは自国民、という議論もありますね。
あるニュース番組では、「日本から輸入している鋼板は日本でしか生産できないもので、単純に材料費が高くなって困る」という米国製造業者のレポートをやっていました。
一方、中国での生産比率の高い米企業を中心に株価が下落。
不毛の戦いのように映ります。
しかし、穿った見方をしますと、これで世界中の企業は中国を拠点としてきたサプライチェーンの組み直しを求められることになる。
とくにドイツは中国との関係が深く、中国国内ではフォルクスワーゲンが人気ですし、世界へ出荷する生産拠点ともなっています。
打撃を回避するためには、米国内に工場を造るという選択も考えなければならないでしょう。
ただ、工場を建設するのは時間がかかります。
トランプ政権がいつまで続くのかはわからないですしね。
ということで、何も考えていないようで意外に考えている(その逆もあり)のトランプ政権のこの施策の効果とは。
北朝鮮問題を巡って中国にプレッシャーを仕掛け、世界第2位とされる中国経済に打撃を与え、米国製造業を復活させる端緒をつくる。
まさに一石三鳥なワケです。
あ、あとTPP11に対する牽制の効果もありますね(日米FTAを締結しろ! とか)
では、日本はどうしたらよいか。
いまや日本製品はB2CよりB2Bが多くなり、B2Gも増えています。
平たくいえば、テレビを輸出しているのではなく、部品や実装品や知財を輸出している。
鉄鋼関連での具体例は、鉱山鉄道のレール、天然ガスの油井管など。
また、米国が本気で製造業を復活させるなら、日本の生産技術、実装技術を学ばなければムリです。
ということで、米国も日本を怒らせたくないことは事実。
こうした場面でも、他所では得られない、差別化できる技術を有しているかどうかが生き残りのカギとなるのですね。
製造業のサービス化
IT系企業のビジネスモデルを見ますと、ワン・アイデアが利益を生むのだと思わせられます。
たとえばレシピを投稿するだけのサイトが、食品メーカーに影響力を持つ。
そして、そのビジネスを脅かすのは、料理方法を短縮動画で配信するだけのサービス。。
それに比べれば、リアルなものを生み出す製造業は一筋縄ではいかないと覚悟することが必要でしょう。
20年ぶりの最高益をたたき出して復活を印象づけたソニーについても、それはいえます。
同社収益の過半を生みだしているのは、金融業とゲーム配信の会員制サービスであるのが内実だとわかります。
──技術がデジタル化するにつれ、中国・韓国にも容易にコピーされるようになってしまった。
それを受けて2000年以降、さまざまに進展してきたのが製造業のサービス化なのです。
機器のメインテナンスごと受注したり、企画・設計から請け負うモデルは以前からありましたね。
かんたんなところでも、操作がむずかしい機器をオペレーションごと販売する、助成金のつく環境製品を申請書類作成ごと受注する、工場の節電機器をコンサルティングとともに販売する、などもある。
さらに、建機のコマツでは、効率的な運用・管理を実現するデータ活用を提案しています。
ある金属加工工場では、自社の生産管理を見える化する物理的なシステムの外販を開始。
資生堂は、美容液を家庭で調合するアプリをテスト販売する予定。
ユニ・チャームでは、育児世帯向けの動画配信サービスへ、出資会社を通じて挑戦。
これらのこと数例は、IoT技術を活用しているところが特徴でしょう。
モノだけでなく、モノとコト。
あなたの会社の製品は、どんなサービスを付帯させると顧客に喜ばれるのでしょうか?
ぜひ、考えてみていただきたいと思います。
展示会を知れば販路に困らない
近年、展示会シーンが活況を呈しています。
展示会の種類や開催も増えていますし、出展社も来場者も増加している。
その要因はふたつあります。
ひとつは、ネット集客がサイトの増えすぎや広告費の高騰など行き詰まりを見せていること。
もうひとつは、テレアポや飛び込みなどの売り込みが敬遠される時代になったこと、です。
展示会は、私が支援するものづくり企業では外せない販路開拓の1ルート。
しかし、まだまだその活用法には誤解があるんですね。
そこで、まず1点目は展示会活用法のメルマガを始めました。
よろしければお読みになってください。
まぐまぐです。
こちらから。
2点目は、展示会活用法の本を出版します。
最初の本と同じ、日刊工業新聞社様です。
誠に僭越な言い方になりますが、ものづくり企業をサポートするという点では志を同じくする組織です。
「顧客は展示会で見つけなさい」 日刊工業新聞社
まだ、表紙装丁は掲載になっていないようですが、amazonではこちらです。
本の発売日は今月の16日(金)、17日(土)くらい。
これまで、展示会に出展する効果的な方法を網羅的に述べた本がなかったので、定番となってくれると、たいへんありがたいです。
展示会については、この1冊で大きく差がつくと思いますので、あなたもチェックだけでも、してみてくださいね。
ものづくりの価値を知る人・3
ものづくりの価値を知る人・3と4
支援先企業(もちろん製造業)の新規事業に関するブレストの席で、あくまで参考にFXやビットコインなどに多角化している好調企業の新事業について触れました。
すると、その場が微妙な雰囲気に。
忖度した弓削が「もちろん、これらは生業とはいえませんが」と付け加えると、場の緊張は一気に解けました。
(そうだろう)という、声なき声が響いたような気がしました。
つづいて、ものづくりの人・4
少し前に、メーカー勤務の若手社員から相談を受けました。
経営権を巡るお家騒動で社内が揺れている、こんなことなら起業を考えたい─。
起業のステップについてもアドバイスをしましたが、同時に、製造業が生み出す付加価値は大きいことを説きました。
販売・サービス業もモノがなければビジネスをできません。
クロネコヤマトも、忙しいのは運ぶモノのせい。
第一次産業である農業も、モノ(農機具やセンサー)がなければコメや野菜をつくれない。
これからの10年。
AIやIoTなども交えて社会は激変していくでしょう。
フィンテックや電子マネー、仮想通貨も焦点ですが、やはり人のそばにあるのはモノ。
人の暮らしを変え、世界を変えていくチカラの土台はものづくりが創りだすのです。
ものづくりの価値を知る人・2
ものづくりの価値を知る人・その2
私の最初の著書である「転がす技術 なぜ、あの会社は畑違いの環境ビジネスで成功できたのか」は製造業向けの内容ですが、それゆえなかなか出版しようという版元さんが見つかりませんでした。
「メーカーさんだけがターゲットだときびしいですね」
出版社からの異口同音の反応でした。
もちろん、弓削が無名の著者であることも影響しています。
そこで原点に帰り、「ものづくり企業に寄り添う出版社があるとしたら、どこか」と考えてみました。
そして、日刊工業新聞社さんに企画を説明するにいたりました。
面談の時に「読者対象は、ものづくり企業さんだけではないほうがよいのかもしれませんが──」と、つい言い訳がましくなったところ、編集者さんは
「ものづくり企業限定にするべきですよ!」
と当然のように言ってくれました。
我が家へ帰ったような気がしました。
いま、AIやロボットなどの技術に文系の経営者、ビジネスマンも注目している時代。
日刊工業新聞社さんは、なかなか好調のようです。