マーケティング・コンサルタント弓削徹 -267ページ目

適正価格って、いくらよ?

買う立場からすれば、価格は安いほどよい。では、売る立場では?

「商品価格のわりに店舗の外観が高級すぎ、お客さんが来店をためらうのだと思います」なんて話を面談の際に聞くことがあります。パブを経営していた友人が均一価格制を導入し、「ウチの店はよ、ドアを押した瞬間にいくらかかるか客はわかってるんだよ」と話していたことも。

それはともかく、スーパーや小売店における商品の適正価格とはいくらか。この「適正」とは、もっとも儲かる価格のことです。

つまり、安くすればお客様から選ばれて多数が売れるけれど、利益総額はいまひとつ。逆に高くすると、利幅はとれるけれど数量が売れないので、結局は儲からず、お客様も離れていってしまう。この両者のあいだに、ちょうどよい価格帯域があるはず。

マヨネーズを例にとって考えてみましょう。130円仕入れのマヨネーズを、それぞれ148円、198円、248円で販売したときの販売個数を調べます。目玉価格である148円では400個売れた。198円では250個売れた。248円では100個だけ売れた。

適正価格で販売促進策それぞれの販売個数に利幅をかけると、3通りの利益総額がでてきます。この現象を、きたない手描きグラフにしたものが左図です。例なので数値はおおざっぱですが、これを基本情報として、さらに洗練して考えていくわけです。

では、メーカーさんが調べる場合はどうするか。まず、よく売れている店、普通の店、イマイチの店など数店を選び、卸売価格と店頭価格、そして卸売量をあてはめたグラフをつくり、可視化すればOKです。

さらに適正価格を調査するのであれば、「どのくらいの値段で買いたいですか?」と見込みターゲットに直接訊いてしまう「受容価格調査」をおこなうのもひとつの方法です。くわえて、よく似た競合商品と自社製品の店別設定価格ごとのデータを入手してグラフ化して比較していけば、よりディープなデータを得ることができます。

虚をつく販売促進ツール

販売促進 コンサルタントの弓削です。今日もご訪問、ありがとうございます。

 

さて、前記事にて欧米の広告や販売促進の実例を紹介しました。今回は、その第2弾です。彼らは、広告表現で最も大切なものはユニークであること、とよく言います。

 

対して日本では、どこかで見たような表現のほうが、理解してもらうスピードが速い、あるいは企業内での承認が早くおりる、と考えているふしがあります。しかし、そうした弊害(老害)も、最近では払しょくされつつあるように感じますね。

宅配ピザ
デリバリーピザ屋さんの販売促進アイデア。

玄関ドアののぞきレンズに外側から貼り付けると、家の中からはちょうど配達の人が到着した時のようなシーンに見える、実は小さなペーパークラフト。恐ろしいアイデアです。
日本でこれをやったら、「シールのノリでドアが汚れた」というクレームが続出でしょうね。

時計
電車のつり革で時計の試着をしてもらえる販売促進ツール。

高級時計には合わないかもしれませんが、スポーティなタイプならうってつけですね。


ペット
ビルディング大のスケールで発想した販売促進ツール。

とにかく話題になること請け合いです。
中核のアイデア自体は、ドッグフードでなくても成立しそうですね。どなたか、トライしてはいかがでしょう。

(2008年9月8日掲載)

型破りな販売促進ツール

販売促進コンサルタントの弓削です。いつもご訪問、ありがとうございます。

 

さて、日本のグラフィックデザインの質は、世界でもトップレベルにあると思います。しかし、常識はずれの販促アイデアに関しては、「わかりますよ」「おもしろいですね」とはいうものの、決まるのは無難な線であったりします。

 

欧米の広告や販売促進の表現を見ると、アイデアや着想が面白く、それでいて商品からかい離していない、という上手な展開だと感じるものが少なくありません。今記事では、いくつかを紹介したいと思います。


職業選択

 

「人生は短い。職業選びを誤るな」というメッセージ。


自販機の側面など、本来はあまり価値の高い媒体ではないスペースが、これ以上ない効果を生む表現となっているところがすばらしいですね。


スモールカー

「サイズ」を訴求する英国の自動車メーカー。

地下鉄の出入口を使って、SF映画のような効果を醸し出しています。乗降客も広告表現の一部になっています。



バックシート
「後部座席は危険です。シートベルトを」と過激に訴えています。

公共的な広告において、表現が大胆で、なおかつ実効性があるものは、あまり例を見ませんね。

(2008年9月3日掲載)

タダよりうれしいモノはない

先日、ようやく「FREE」を読みました。

カミソリメーカーが替え刃を販売促進するために試供品を配ったり、ゼリーの材料を拡販するためにレシピブックを配ったりという、はるか昔から「無料」ビジネスはありました、しかしインターネット時代となって、無料化される情報やサービスは格段に増えました、…などと書かれています。

その気で見てみると、リアル世界の無料も、たくさんありますね。まず、マクドナルドでは「プレミアムローストコーヒー」を2010年10月15~21日まで無料で提供。0円は、スマイルだけじゃないです。同様に、イオン系列のコンビニエンスストアであるミニストップでも2010年10月5~9日、コーヒーを無料で提供。たばこ税値上げ対策でしょうか。

ミスタードーナッツでは「大復刻際」として、2010年9月28~30日の3日間、創業当時のドーナッツを240万個限定で無料配布。銀座のある居酒屋では料理を2品注文すると、焼酎が何杯でも無料。生ビール3杯目から無料、というのもあります。また、カレーライスが無料、という店舗も。子供たちが昼時に来て、2、3杯おかわりをして帰って行くそうです。

こうした、「無料」戦略のメリットとはいったいなんでしょう。

まず、ロスリーダー戦略の側面があります。ロスリーダーとは「目玉商品」のこと。スーパーでタマゴ1パック100円! などとチラシをうって集客、ついで買いを誘う、あれですね。つまり究極の目玉は「無料」ということです。

また、人は「無料」といわれると判断力がにぶるともいわれています。たとえば、「送料無料」にするためにアマゾンで不要なモノを買物してしまう、など。ビール3杯目以降無料の店では、実際、逆に客単価が上がったといいます。勝ちぐせのついたマックも、もちろん客単価をのばすことでしょう。

次はサンプリング効果です。つまり、おいしいメニューをハードル低く試してもらい、ファンになってもらおう、つぎはお金を払ってもらおう、というもの。マックのコーヒーは実際おいしいので、体験者はつぎにスターバックスではなく、マックをめざすかもしれません。

そして重要なのは「返報性の法則」が見込まれること。つまり、無料で提供してもらっちゃ悪いので、なんか買って帰ろかな、という心理状態。無料カレーの店では、満腹になった子供たちの親が、夜な夜な飲みに来るそうです。

さらに、「パブリシティ効果」も大きいですね。「無料!」ともなれば、ニュースやワイドショーのネタになりますから、テレビCMもなしで販売促進ができるわけです。

と、いうわけで、今日も何かがタダになります。あ、そういえば、「FREE」には、「Googleは何を無料にしようかを日々、考えている」と書かれていましたよ。

B-1は味も見せ方も必要

地域ブランドを語るのに外せない、B-1グランプリが今年も行われました。

B級ご当地グルメの祭典と銘打った同イベント、今年で第5回を数えますが、年々盛大になっているようですね。2日間で、当初想定の30万人を大幅に超える約43万5,000人の来場があったそうです(第1回は2万人)。開催地への経済効果もすさまじく、前回大会がひらかれた秋田県横手市では観光客などの宿泊、買物で約13億円の消費があったといいます。

グランプリを取った同地の「横手焼きそば」を求める観光客が大会の終了後も押し寄せ、8ヵ月間で約34億円にものぼる効果があったそうです。ちなみに、第1回、2回のグランプリ「富士宮焼きそば」は3年間で220億円の経済効果だとか。

さて、前回大会の参加が26団体であったのに比べ、今回は46団体。また、イベント自体の報道もしだいに大きく扱われるようにもなり、期間中の経済効果だけで50億円を超えるのではないかとの試算もあります。

グランプリを決定するのは、お金を払って食べたお客さんが投票した「割り箸」の数。しかし、大会期間が2日間であるのに対し、46種もの旨いメニューが出品されるのでは、お客さんもすべてを食べて比較するわけにはいきませんね。となると、問題はいかに選んでもらうか。ここでもネーミングや、会場の集客や販促に適したサイン計画などが重要になってきます。

もともと地域おこし、村おこしからはじまったB-1ですが、「見せ方」や「提案の仕方」という、プレゼンテーションの巧拙が問われる。旨いこと(マーチャンダイジング<商品政策>)も大切だが、旨そうに見えること(マーケティング)も重要というわけです。

しかし、各地の有志や市役所の人材などからなる参加団体がほとんどですから、そこの部分は失敗を重ねてノウハウを得ていくしかないのでしょうね(急ごしらえのゆるキャラなど)。ちなみに、今大会のグランプリは、山梨の「甲府鳥もつ煮」。次回大会は兵庫県姫路市で開催されるそうです。