マーケティング・コンサルタント弓削徹 -266ページ目

新規事業とストレッチ*1

新規事業への進出は、多くの企業にとっての課題です。今回から、新規事業と新商品開発について2記事に分けて書きたいと思います。

「新規」事業を軌道に乗せる要諦は、まず「既存」を生かすことです。つまり、既存の顧客層を生かす、あるいは既存の技術を生かす、はたまた既存の流通ルートを生かす、ということです。逆に言えば、未体験の技術、なじみのない顧客、はじめての流通ルートで新規事業を立ち上げた場合に、どれほど成功の可能性が見込めるか、と考えてみてください。

以前、実際に新規事業を拡大したいとする料理学校さんから相談を受けた際も、>>料理を教えるノウハウを生かす >>多人数で料理ができる設備(校舎)を生かす >>お客様(生徒さん)を生かす、という話をしました。

さまざまに検討をくわえた結果、料理を教えるノウハウという観点からは「食品メーカーなどの企業に料理実習を行う>というビジネス、場所を生かすという観点からは<料理、フード全般の撮影スタジオ>として貸し出すというビジネス、そして生徒を生かすという観点からは<調理器具・調味料を販売していく>ビジネスなどのアイデアとなって現実的にビジネスが進行していきました。

また、事業化の前提として今後も市場が拡大していく、という条件も検討して欲しいところです。拡大する市場といわれて、すぐに思いつくのは環境や介護ですね。クライアントの建材メーカーは、太陽電池パネル設置や風力発電機の開発などに事業領域を拡大、従来からのゼネコンとの取引項目を増やしていくという堅実な拡大手法をとりました。

別の事例では、クライアントではありませんが、外食産業で知られるワタミは介護施設や老人ホーム経営、そして病院経営にも乗り出しています。患者らを「お客様」として接するサービス品質の高さを評価されるだけでなく、食事のおいしさやそのメニューの豊富さはいずれの施設でも喜ばれているそうです。

もうひとつ、別の事例。ミネラルウォータのデリバリーで知られるアクアクララは、もともとはプロパンガスの宅配業者でした。将来性の少ないプロパンを見限り、同じ宅配先においしい水をお届けするビジネスモデルに移行していったのです。おまけに商品の形状まで似ていますね。(次記事では、新商品開発について書きます)

ネット黎明期はいつまで?

20世紀を迎えようとするある日のことでございます。

ある英国の偉い学者先生が提案しました。「もう発明、発見といえるものはすべて出尽くしたと思う。ゆえに、今後は特許登録などは廃止してしまってよいであろう」

20世紀がはじまるときですから、1900年とかの発言です。産業革命を成し遂げたイギリスならではの、卓越した意見。ところが、ほんとうの発明、発見の時代は、そのあとから始まったのですね。

では、情報革命を経験しつつある現在に当てはめてみたらどうでしょう。Googleやブログサービス、Youtubeもツイッターも出てきてしまったいまや、インターネットのすべてを我々は享受してしまっているのでしょうか。

おおざっぱな話ですが、インターネット上に革新的なサービスが登場した時期は、前期と後期に分けられます。すなわち…

1994年 Yahoo!
1994年 Amazon
1997年 価格.com
1997年 楽天

このあたりまでが前期。ちなみにGoogleが1998年に登場したとき、正直なところ弓削は「Yahoo!があるのに、いまから創業して何ができるのだろう」と思ってしまいました。

ここで、ITバブルの崩壊という中入りがありまして。
そして、後期です。

2003年 スカイプ
2004年 フェースブック
2004年 mixi
2004年 Gree
2005年 YouTube
2006年 ツイッター
2008年 グルーポン

なんだか、思ったより最近ではありませんか。グルーポンの創業者なんて、とっくに億万長者として報道されていますが、創業からまだ2年かそこら。

ということで、何が言いたいかといいますと、インターネット上の新サービスを展開したいと考えている人は、「遅すぎる」ということはありませんよ、という話です。というより、むしろこれからです。

最近のビジネスモデルが成功までの時間を短縮しているのは、高速接続環境があたりまえになったという、ユーザー側の都合が大きく影響していると思います。より多くの人々が、より高速で接続している。だからこそ、ビジネスの成功へのスピードも速まっているのです。

もちろん、この陰には失敗に終わった無数のサイトビジネスが死屍累々。しかし、これから中国人やインド人がどんどん接続してくると思ったら、鳥肌が立ってきます。2ヵ国の合計だけで20億弱ですよ!! さらに、アフリカや南米も、これからどんどんです。

前期、後期と書きましたが、いまくらいまでをひっくるめて前期とか、黎明期などと評される時代が来るかもです。

ということで。あなたは、新しいウェブ・サービスのアイデア、もっていますか? :)

こんなはずじゃないのに2

どうやってコンサルタントを選べばよいのか、のつづきですよ。

ウェブサイトの中身ですが、「有名人との対談が雑誌に載りました」みたいなことをウリのひとつにしているお方。お金を払えば、そこそこの芸能人との対談を掲載してくれるビジネス誌は何誌もありますから、まともな人は絡んではきません。注意しましょう。


また、無料相談を大々的に掲げているお方。これは、実は見分けがむずかしいです。なかには、ほんとうにボランティアや、好奇心旺盛であるがゆえに無料相談をしている人もいます。しかし、多くはクライアント獲得に困っているお方です。あるいは、若手にトレーニングさせたい、なんていう組織の都合もあるでしょう。

 

結果をちゃんと出せるコンサルタントなら、クライアントが離してくれません。それゆえ、新規のご依頼案件を受けつけることがむずかしかったりします。実際、無料相談にまで応えている時間はないはずなのですが…。

 

同様に、「成功報酬制」を掲げているお方も、ちょっと。きちんと顧問料、契約料を支払ってくださるクライアントさんが何社もあったら、当面無料のコンサルティング依頼を受けることはむずかしいですよね。“1位指名”してくださる会社さんがあるのに、なぜ成功報酬を? 考えられるのは、集客に苦慮しているか、その「報酬」額がとても高率であるか、のいずれかでしょうか。


……ちまたにあふれる無数のマーケティングサービス。その深層には不景気が横たわっていると思います。すなわち、景気が悪ければ、自前のビジネスをがんばるのではなく、増加傾向の困っている企業に向けたサービス展開をするほうが商機がある、という普遍のセオリーです。

 

たとえば、ゴールド・ラッシュでおおぜいの人が確率の低い賭け(金を発見すること)に熱中するなら、必要な道具や衣類(ジーンズのルーツ!)を彼らに売るビジネスのほうが確実に儲かる、という発想。

クーポンサイトである「米グルーポン」のサービスが前例のないほど急速に拡大しているのも、集客に困っている飲食店やエステサロンが非常にたくさんある、という現況があるからこそ、でしょう?

こんなはずじゃないのに1

集客・販売促進コンサルタントや広告・マーケティングサービス会社に依頼したけれど、

まったくの期待はずれだった、というご不満の声を最近よく耳にします。これは、マーケティング・コンサルタントなどの宣伝ウェブが、雨後の竹の子のように増加していることと無縁ではないでしょう。


私たちはウェブを見ただけで「うーん、このコンサルはちょっと…」とわかるのですが、ふつうの企業家さんや担当者さんには見分けがつかないのもムリはありません。複数候補で迷いに迷ったあげく、つい無料相談や低価格メニューなどに引かれて依頼を決めてしまうのです。

まさに、悪貨は良貨を駆逐する。マーケティング・コンサルタントの誰もが低レベルであると思われては、大迷惑です。では、どうやって見分ければよいのでしょう。

「インチキくさいのは、このサイトです」

URLを書ければよいのですが、そうもいきません。そこで、こういうウェブは考えものですよ、という例を書きたいと思います。

 

そのひとつは、マーケティング手法の特徴的な一種のみを強力に訴求しているサイトです。たとえば、「FAX DM」を強くすすめるコンサルタントもいれば、「ウェブとキーワード広告の組み合わせ」がベストであるとゆずらないマーケティング会社もあるし、「ニュースレター」が絶対と言いきる広告サービス会社もあるわけです。

 

こういうサイトを選んではいけないとは言いません。しかし、あなたのビジネスがB2CならFAX DMは使わないほうが無難でしょうし、焼酎専門の通販サイトなら「キーワード広告」は費用対効果が悪すぎて選択肢に入らないでしょう。

 

無数の販促方法があるけれど、自社のビジネスに適した方法は限られる。そこを熟知していなければ、単品主義のコンサルタントやマーケティング会社と心中してよいかどうかの判断がつかない。

つまり、あなたの業種・業態×悩んでいる理由(テコ入れすべきポイント)という式の回答は無数にあるというのに、各社・コンサルタントとも自分の得意パターンに持ち込もうとするわけです。それがハマればよいのですが、そうそう幸運はころがってはいませんから、「言われたとおりにしたが、結果につながらなかった」という。冒頭の不満にもつながるわけです。

 

ということで、ある程度はさまざまなやり方を知っている、問題点の抽出をもとに個別の解決策を描く、という匂いが感じられる専門家を選んだほうがよいのではないかと、老婆心ながら考えるわけであります。(2 につづきます)

日本語よ、どこへ行く?

少し前に、「間違った日本語」のブームってありましたよね。

最近、番組がめきめき面白くなってきたといわれている
NHKでも、あらためて日本語を探求する「みんなでニホンGO!」という番組がありました。そのテーマとは、「正しい日本語とは」、そして「日本語はどこへ行く…」的な(レギュラー放送は終了。次回は年末スペシャル)。

仕事柄、言葉にはとても興味があり、この番組もたまに観ていました。いままでの日本語探求番組と違うのは、「この表現が正しい」と決めつけずに、いろいろな表現、意見がありますが、あなたはどちら派ですか、と投げかけるというテイスト。

たとえば、「とんでもございません」は間違いであり、「とんでもないことでございます」と言わなければならない。というのが、いままでの「正解」でした。しかし、いまや多くの人が話す「とんでもございません」は市民権を得はじめている、どちらの表現もありでいいのでは、と問いかけたりします。

あるいは。「こちら、コーヒーになります」というファミレス敬語。「これからコーヒーになるなら、いまは何だ」とけんかを売りかねない良識派のご年配もおられるなか、「…になります」とは、係りの人が説明する際のていねいな用法です、との見解を明らかに。駅員さんが「○○行きは、3番線になります」と同じだというわけです。

そのほかにも、はずかしくもはじめて知ることもありました。

 ・あたらしい(新しい) → →  もともとは あらたしい だった
 ・さざんか(山茶花)  → →  本来は さんざか と読んでいた
 ・あらげる(荒げる)   → →  実は  あららげる が正しい
 ・ぜんぜん+肯定(ex.おいしい) → → 昔は使用していた

なるほど…。いくつになっても日本語は発見があるというか、むずしすぎるというか。同番組で取り上げられていた、戦後のGHQが漢字をやめてローマ字表記にせよと迫ったというエピソードを聞き、いっそのこと国語を英語にしてしまったらラクだったのに、とキーボードを撫でながら思ったりもするのでした。