新規事業とストレッチ*1 | マーケティング・コンサルタント弓削徹

新規事業とストレッチ*1

新規事業への進出は、多くの企業にとっての課題です。今回から、新規事業と新商品開発について2記事に分けて書きたいと思います。

「新規」事業を軌道に乗せる要諦は、まず「既存」を生かすことです。つまり、既存の顧客層を生かす、あるいは既存の技術を生かす、はたまた既存の流通ルートを生かす、ということです。逆に言えば、未体験の技術、なじみのない顧客、はじめての流通ルートで新規事業を立ち上げた場合に、どれほど成功の可能性が見込めるか、と考えてみてください。

以前、実際に新規事業を拡大したいとする料理学校さんから相談を受けた際も、>>料理を教えるノウハウを生かす >>多人数で料理ができる設備(校舎)を生かす >>お客様(生徒さん)を生かす、という話をしました。

さまざまに検討をくわえた結果、料理を教えるノウハウという観点からは「食品メーカーなどの企業に料理実習を行う>というビジネス、場所を生かすという観点からは<料理、フード全般の撮影スタジオ>として貸し出すというビジネス、そして生徒を生かすという観点からは<調理器具・調味料を販売していく>ビジネスなどのアイデアとなって現実的にビジネスが進行していきました。

また、事業化の前提として今後も市場が拡大していく、という条件も検討して欲しいところです。拡大する市場といわれて、すぐに思いつくのは環境や介護ですね。クライアントの建材メーカーは、太陽電池パネル設置や風力発電機の開発などに事業領域を拡大、従来からのゼネコンとの取引項目を増やしていくという堅実な拡大手法をとりました。

別の事例では、クライアントではありませんが、外食産業で知られるワタミは介護施設や老人ホーム経営、そして病院経営にも乗り出しています。患者らを「お客様」として接するサービス品質の高さを評価されるだけでなく、食事のおいしさやそのメニューの豊富さはいずれの施設でも喜ばれているそうです。

もうひとつ、別の事例。ミネラルウォータのデリバリーで知られるアクアクララは、もともとはプロパンガスの宅配業者でした。将来性の少ないプロパンを見限り、同じ宅配先においしい水をお届けするビジネスモデルに移行していったのです。おまけに商品の形状まで似ていますね。(次記事では、新商品開発について書きます)