●概要
小型船舶操縦免許は、船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく国家資格。
日本国内の海、川、湖でエンジン付き小型船(プレジャーボート、モーターボート、ホバークラフト、エンジン付きヨット、水上オートバイ)を操縦するために必要な免許です。免許は操縦できる船の大きさや航行区域に応じて、一級、二級、特殊の3種類に区分されています。
(出典:国土交通省)
【一級小型船舶操縦士】
総トン数20トン未満または特定の条件を満たす全長24m未満の船舶を操縦できます。
航行区域に制限はありません。
【二級小型船舶操縦士】
操縦できる船舶は一級と変わりませんが、航行区域が制限されます。
平水区域および海岸から5海里(約9km)以内で航行できます。
【特殊小型船舶操縦士】
水上オートバイを操縦できます。航行区域は海岸から2海里(約3.7km)以内と定められています。
一級、二級の免許を持っていても、特殊の免許が無ければ水上オートバイは操縦できません。自動車運転免許でも四輪車と二輪車(バイク)は別の扱いになっていますが、それに似ていますね。
●受験の経緯
去年、海事代理士試験を受けたときに海や船について勉強したのをきっかけに、小型船舶操縦免許を取りたいと思うようになりました。
まずは二級を取ってから一級にステップアップ…と考えましたが、一級は二級と比べて学科試験の科目が増えるだけで、実技試験は同じとのこと。それならいきなり一級でもいいのではと思い、一級に挑戦することにしました。
さて、一級免許を取得するには3通りの方法があります。
①登録小型船舶教習所に通う
登録小型船舶教習所で4~5日にわたり所定の学科や実技の教習を受けます。
修了試験に合格することで学科、実技とも試験が免除されます。
費用は大体10万円~15万円ほど。
時間とお金はかかりますが、一番確実なコースです。
②免許スクールに通う
免許スクールの講習を受講し、国家試験を受験するコースです。
免許スクールとは予備校のようなもので、試験合格に向けて独自の講習を行います。
講習日程や講習料は様々です。費用の相場は大体5万円~10万円ほどでしょうか。
免許取得のルートとしては、これが一番オーソドックスみたいです。
③完全独学
学科も実技も完全独学で突破を目指すコースです。
費用は受験料3万円ほど(+教材費)で済むため、一番安上がりです。
…うーむ。
ただの趣味なのであまりお金はかけられないし、かと言って完全独学は不安すぎる…
独学の場合、学科は何とかなるにしても実技がカギなんですよね。
操船なんか一度もやったことないのに、ぶっつけ本番で受けるのは無謀だろっていう。
ただ、私は今まで準中型免許(限定解除)や大特二種免許の一発試験を突破してきた自称猛者。
小型船舶も完全独学で挑戦することにしました。
●出願
まずはJMRA(日本海洋レジャー安全・振興協会)から願書を取り寄せます。
試験の日程はJMRAのページで公表されているので、都合の良い日程を選びます。
試験はどこかしらで毎週のように実施されているみたいですね。
受験料は郵便局の「普通為替」という方法で払い込みます。
一級で現有免許なしの場合、受験料は28,950円です。
ちょっと高いですが、教習所等に通うよりは格段に安いので我慢です。
受験料を払ったら、必要書類を揃えてJMRAに郵送で出願します。
出願の翌々日、受験案内、受験票、預り証(レシート)がレターパックで送られてきました。
JMRAさん、仕事が早い!
受験料の内訳です。
身体検査が3,450円、学科試験が6,600円、実技試験が18,900円。
これで受験申請は全て終わり。
試験日まであと約2週間、ひたすら勉強あるのみです。
●対策
まずは学科試験について。
学科は過去に出された問題がほぼそのまま出題されるようです。
学科教本を1冊と、一級用、二級用の問題集を買いました。
学科教本はざっと眺める程度に読み、あとはひたすら問題集に取り掛かりました。
問題集は解説が無いので、分からない箇所は学科教本か、ネットで調べました。
ちなみに、画像の「学科教本Ⅰ」は二級の範囲しか網羅していないため、一級受験者は普通「学科教本Ⅱ」も使います。
ただ、どうせ過去問の焼き直ししか出題されないので、過去問さえ暗記すれば大丈夫だろうと思い買いませんでした。
一級では燃費の計算や潮汐表の読み方などが出題されますが、ネットで調べれば解き方も出てきますしね…
あと、一級は製図の問題が3問出題されます。
解くのにコンパスと三角定規を使うのですが、三角定規は大きめのものが必要です。
試験で使用する海図がかなり大きいので、普通の三角定規では長さが足りないんですね。
私は丸善で18cm版のものを買いました。600円くらいでした。
製図問題については上記の問題集に解き方が載っています。
パターンが決まってるので、そこまで難しくないはずです。
次に実技試験について。
実技では以下のような課題が課せられます。
(出典:国土交通省)
独学受験者に必須なのは舵社の「いまから取るボート免許」(写真左)。
実技試験の対策DVDがついていて、価格も1,600円(税別)と非常に良心的。
どのような要領で実技試験が進むのか、流れを理解するには最高の教材です。
何度も見返してイメージトレーニングしておきましょう。
また、実技ではロープワークが出題されます。
巻き結び、もやい結び、いかり結び、クリート止め、一重つなぎ、二重つなぎ、本結びの7種類の中から出題されます。
どれが出題されても対処できるよう、全て確実にできるようにしておきましょう。
私はダイソーで綿ロープを買って練習しました(写真右)。
どうせなら長いものを買おうと思って7mのものを買いましたが、長さは1mもあれば十分です。
ロープワークはYoutubeが参考になります。
実際に手を動かして何度も練習しましょう。
さて、そんなこんなで試験前日。
これまでテキスト「学科教本」を1周、問題集2冊をそれぞれ2周し、舵社のDVDは3回見ました。
製図問題は前日まで全く手が付けられず、結局比較的簡単な1問目だけ解けるようにしてあとの2問は捨てることに。
ロープワークの練習に費やした時間は1時間くらい。いかり結びは上手くできるか微妙…って感じです。
もっと時間を取って対策するつもりだったのですが、仕事が忙しかったり体調を崩したりで時間が取れず、不十分なコンディションで受けることになってしまいました。こんな体たらくで受かるのか不安です。
●試験当日(2018.01.27)
さあ、いよいよ試験当日です。
東京メトロ東西線の浦安駅から歩くこと15分、会場のニューポート江戸川に到着。
まずは受付で身体検査。
身体検査といっても身長や体重を測定するわけではありません。
視力が両目とも0.5見えていて、赤と緑が識別できるか検査して終わりです。
●学科試験
身体検査を済ませたら次は学科試験です。
試験室内には一級と二級合わせて15人ほどの受験者がいました。
スクール出身者が大多数だとは思いますが、私以外に独学受験者はいるんでしょうか。
見た感じでは判別できませんでした。
試験官から諸注意を聞かされた後、9:30に試験開始。
問題集で見た問題がそのまま出題されるので楽勝です。
海図の問題は殆ど勉強していなかったので1問目しか分からず、2・3問目は適当にマークしました。
ざっと見直してから、10:30に途中退室。
試験室の外に出たら解答が貼りだされているため、すぐ自己採点できます。
一般科目は50問中45問正解(90%)、
上級科目は14問中12問正解(85%)でした。
一般科目と上級科目それぞれ65%正解で合格なので、余裕で突破です。
一般科目では、動力船の船尾から曳航物件の後端までの距離や、短音・長音を鳴らす時間など、数字を問う問題で間違えてしまいました。
これらは頻出問題ではありますが、何しろうろ覚えだったもので…
また、上級科目では製図の2・3問目を間違えました。これはもとから捨てていたので仕方ないです。
あとは実技試験ですが、私は15:00からとのことなので、4時間以上待機しなければなりません。
これだけ待たされるのは保育士の実技試験以来です。
待機時間では点検箇所の復習をしたり、持ってきたロープでロープワークの練習をしたりしました。
時間がたっぷりあるおかげで、不安だったいかり結びも完璧になりました(笑)
●実技試験
さて、15:00になり試験官に呼ばれます。
まずライフジャケットを着て、船着場に移動します。
試験艇は対策DVDで使われている船と同じ涼風でした。
試「船体の点検をしてください」
私「はい!(DVDでやってたやつだ…)」
船首・左舷・船尾・デッキを指をさしながら見ていき、船に乗って反対側(右舷)も異常が無いことを確認し、「船体の点検、終わりました」
試「ワイパーの点検をしてください」
私「はい!(えーと…操縦席付近にあるはずだけど、どのボタンだ?)」
ボタンを探すのに手間取っていると試験官が位置を教えてくれました。
ボタンを押してワイパーが正常に動くことを確認し、「ワイパーよし!」
その他、エンジンの点検では「メインスイッチ」と「燃料コック」、
法定備品の点検では「信号紅炎」と「消火器」を指定されました。
信号紅炎がどこにあるのか分からず手間取っていると、
試験官から「宝探しの試験ではないので、場所が分からなかったら言ってくださいね。タイムオーバーになると減点されちゃうので」とのお言葉が。
問われているのはどこにあるかではなく、どのように点検するかということなんですね。
さあ、暖機運転をしていよいよ発進です。
シフトレバーを前に倒し、徐々に増速していきます。
おおっ、これは楽しい…
船の操縦なんてしたことないですが、操縦してみると簡単でした。
右にハンドルを切れば右に曲がるし、原理は車と同じですもんね。
試「直進している時、前だけ見るのではなく左右も見渡してくださいね~」
私「はいっ!(ん、そういうものなのか…気を付けよう)」
こんな感じで、試験中に何度かご指摘を頂きました。
注意ではなくアドバイスといった感じで、減点はされてなさそう。
自動車の一発試験だと何も言わずにビシビシ減点してくるんですけどね。
小型船舶の場合、試験ではありますが、教習を受けているかのような感じでした。
連続旋回、人命救助、係留等もDVDのおかげで難なくこなせました。
方位測定も、プリズムを手にするのは初めてですが何とか使えました。
全ての課題を終えて船着場に戻り、解散。
致命的なミスはしなかったと思うので、多分合格だろうという感触です。
●合格発表(2018.02.01)
さて、待ちに待った合格発表です。
朝10時にJMRAのサイトで検索すると…無事に合格でした。
合格後の手続きですが、JMRAで操縦試験合格証明書を発行してもらい、運輸局で免許証の交付申請をすると免許証を取得できます。
この合格証明書は直接JMRAで受け取るか、または郵送で送ってもらいます。
私は郵送で送ってもらいました。JMRAは遠いので…
これが操縦試験合格証明書です。
A5サイズにモノクロ印刷なのでショボいですが、よく見ると「複写厳禁」の文字。
どうやらコピー防止の加工がされているようです。
ちなみにこの証明書、スクール等を経由すると発行から免許証申請まで海事代理士が代行してしまうため、受験者の手には渡りません。
独学受験者しか手にすることのできないレアな証明書です(だから何だって話ですが)。
これを運輸局に持参または郵送で申請すれば免許証が発行されます。
ただ、一級を取ったらついでに特殊も取りたくなるのが人の性(さが)。
免許証交付手数料をケチるためにも、特殊を取ってから同時に交付申請することにしました。
一級は独学で取れたのだから、特殊も独学で一発合格を目指します。
→「特殊編」に続く!