【注意】
この体験記は2017年に受験した当時のものです。
2019年には筆記試験に「領海等における外国船舶の航行に関する法律」、「船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律」が追加され計20科目になるなど、試験内容に一部変更がありますのでご注意ください。

 

概要

海事代理士は海事代理士法に基づく国家資格。

海事代理士になると、他人の委託により、国土交通省や都道府県等の行政機関に対して、船舶安全法、船員法、船舶職員及び小型船舶操縦者法などの海事関係諸法令の規定に基づく申請、届出、登記その他の手続きをし、またはこれらの手続きに関する書類の作成をすることができます。

業務の性質上、海の司法書士海の行政書士海の社会保険労務士などと呼ばれることがあります。

 

海事代理士になるには、海事代理士試験に合格し、海事代理士として登録する必要があります。

試験は年1回の実施で、筆記試験と口述試験に通ると合格となります。

 

筆記試験

筆記試験は18科目が課されます。

1日かけて以下の18科目を解答します。

 

1時限目

①憲法

②民法

③商法(「海商」のみ)

④国土交通省設置法

 

2時限目

⑤船員法

⑥船員職業安定法

⑦船舶職員及び小型船舶操縦者法

 

3時限目

⑧海上運送法

⑨港湾運送事業法

⑩内航海運業法

⑪港則法

⑫海上交通安全法

⑬海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律

 

4時限目

⑭船舶法

⑮船舶安全法

⑯船舶のトン数の測度に関する法律

⑰造船法

⑱国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律

 

…いやぁ、並べてみると凄いですね。

行政書士は6科目、司法書士でも11科目であることを考えると、18科目というのは物凄いボリュームのように感じます。

でも大丈夫。海事代理士は内容の薄い科目が殆どで、過去問の焼き直しのような問題が多いのです。

 

筆記試験突破のために必要な参考書は1冊だけ。

日本海事法務研究機構というところが出している「海事代理士厳選過去問題集」がオススメです。

価格は4,000円と少し高めですが、過去10年超の問題と解答・解説が収録されており、1冊仕上げれば筆記試験は余裕で通ります。

この問題集さえあればテキストは不要です。

 

海事代理士はマイナー資格ゆえに参考書が殆どありません。

成山堂書店の「海事代理士合格マニュアル」という本を使う受験生が多いのですが、これはおすすめできません。

合格マニュアルは5年分の過去問しか収録されておらず、解説も不十分です。

 

厳選過去問題集も合格マニュアルも値段はほぼ同じなので、問題収録数の多い厳選過去問題集の方を買いましょう。

 

なお、国土交通省のページに過去の問題と解答がアップされていますが、ここはケチらず厳選過去問題集を買いましょう。

国交省の過去問は解説が無いうえに、海事法令は割と頻繁に法改正があるので…

(例えば国土交通省設置法なら組織の名称、港則法なら特定港の数など。最近ではライフジャケットの着用基準が変わりました)

 

さて、勉強方法としては上記の厳選過去問題集をひたすら読み進めていくだけ。

読み進めていくうちに、科目によって難易度に差があることに気づくはずです。

 

海上運送法、港湾運送事業法、内航海運業法、船舶のトン数の測度に関する法律、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律などは過去問の焼き直し率が高く、満点近く狙える科目です。

逆に、港則法や造船法は出題パターンが定まらず、高得点は難しい科目です。

民法も範囲が膨大過ぎるため一般に捨て科目とされます。

 

このように科目によって難易度に差があります。

簡単な科目は満点を狙い、難しい科目は半分取れれば御の字としましょう。

 

筆記試験の合格率は例年50%程度。

筆記試験は6割取れれば合格ですが、受験者の平均正答率が6割を超えた場合(つまり、問題が簡単だった年)は、その正答率がボーダーラインになります。

 

筆記試験の約1か月後に合格発表があり、合格者には口述試験の案内が郵送されます。

 

口述試験

口述試験は霞が関の国土交通省本省で実施されます。

試験は船舶法、船舶安全法、船員法、船舶職員及び小型船舶操縦者法の4科目。

この4科目から、それぞれ5~7問出題されます。

10点ずつの配点で、40点のうち6割(24点)で合格です。

 

口述試験も筆記試験と同様、過去問の焼き直しが殆どです。

国土交通省のページから過去問を印刷してひたすら覚えましょう。

10年分を5周もすれば大抵の問題には答えられるようになります。

 

口述試験は4人1組で行い、1科目3分ずつ、計12分間で行われます。

1科目3分で5~7問が出題されるので、スラスラと答えなければなりません。

 

中にはド忘れして出てこなかったり、聞いたことのない新問が出されたりしますが、

そこで時間をかけるのはもったいないので「パスでお願いします」と言って後回しにしてもらいましょう。

また、一度聞いて分からない問題には「もう一度お願いします」と言えば応じてくれます。

 

口述試験は毎年8割程度の人が受かる試験なので、リラックスしていきましょう。

 

合格発表

口述試験の約3週間後、合格発表があります。

合格発表日は口述試験の受験時に案内されるので、メモしておきましょう。

 

合格者には合格証書が簡易書留で届きます。

12月22日に合格発表があり、合格証書が届いたのは12月25日でした。

国土交通大臣からのクリスマスプレゼント…🎅🎁

 

さて、海事代理士を名乗って仕事をするには登録手続きをしなければなりません。

登録にかかる費用は3万円(登録免許税)です。

 

税理士や行政書士など、他の士業資格は登録のほかに士会に入会することが義務付けられており、入会費や年会費で何万円も取られるのですが、海事代理士は士会(日本海事代理士会)への入会は任意となっています。

つまり、一度3万円を払って登録してしまえば、生涯海事代理士として仕事ができるということです。

 

入会しないと海事代理士バッジの貸与が受けられないとか、職務上請求書が使えないといった不都合はあります。

ただ、海事代理士として仕事自体はできるので、とりあえず登録だけしておいて、必要があれば入会するというのでもいいと思います。

 

私も年明けに関東運輸局に登録申請に行きたいと思います。

それまでに職印を用意しておかねば…!