雨のあとに虹 その160
直子は弘子の携帯に電話をかけたが今日も弘子は出なかった。相変わらず機械的な音声が流れるだけであった。直子は
「ふっ!」
とため息をついて電話を切るといつの間にか直子の横に来た翔太が
「とりあえず毎日1回は必ず電話をかけてください」
と言った。直子が
「はい!」
と短く言うと
「あとは我々の方でうまくやります。」
翔太は言った。
「高村さんが居るから信用しています。」
直子が言うと
「それはありがたい。」
翔太は言った。
「それでダメだったら責任を取って貰おうかな?」
直子は言って笑顔を見せた。
「いざとなればその80万円は僕が何とかします。」
翔太は言った。
「そんな事を約束していいの?」
直子が言うと
「だから今は斉藤弘子を泳がせましょう。」
翔太は言った。翔太は死亡した麗子の謎を解明するあと一歩のところまできていた。
大川教授の声が教室中に響く中で久美子はノートを取っていた。テストが近いのでしっかり頭の中に内容を叩込んでおこうと久美子は考えていた。元来勉強ができる久美子だからそんなに難しくはなかった。久美子の横に座っている純子は半分眠そうであった。
「ちょっと純子。」
久美子が言うと
「うん。」
純子は眠そうな目で久美子を見で言った。
「今の大川教授の話はテストに出るからね。」
久美子が言うと
「解った。」
純子は言って眠そうな顔であった。
「純子。」
久美子が言うと大川教授と目が合ってしまった。
「私語は謹んでね。」
大川教授は久美子に言った。
「それでは行きましょう。」
恵子が言った。俊之と陽子にそして恵子を乗せて田中が運転する社用車は静かにスタートをした。田中の運転技術は抜群である。それほどスピードを出していないようであるが他車をきちんと無理なく追い越していた。道路も混雑が少なかったので都心にある総武の本社から湾岸沿いの三友商事まで予定より早く到着していた。三友商事の受付で恵子が用件を告げているのを離れた所で俊之と陽子が見ていた。さらに俊之を受付からまどかが見ていた。俊之もまどかに気づいて頭を少しだけ下げた。まどかも同じように頭を少し下げた。すぐに俊之たち3人は応接室に通されていた。
「ちょっとこちらのお客さんに珈琲を出してね。」
ひとみは言った。今日は朝から混雑して対応に追われていた。久美子が講義で出勤しないために他のまどかたちと対応していた。
「ブレンドお待たせ致しました。」
まどかが言った。ひとみは心の中で
「もうひとり堀川さんのような娘が入って来ないと大変だわ。」
と叫んでいた。
雨のあとに虹 その159
管理本部のフロアーに来た俊之を野口素子が見つけて
「おはようございます。」
と言うと
「おはよう。」
俊之は言った。
「何かご用命ですか?」
素子が言うと
「立花さんはいないの?」
と俊之は言った。
「ミーティング中ですけどどうしますか?」
素子が言うと
「あとでいいよ。」
俊之は言った。
「本部長に伝えておきます。」
素子が言うと
「お願いします。」
俊之は言って社長室に向かって歩き出した。廊下を歩いてエレベーターホールに出た。社長室はすぐ上の会にあるので俊之は階段を上がった。俊之は社内を散歩するように歩いてからゆっくり社長室のドアを開けた。俊之を見た陽子は
「どちらかにご用でしたか?」
と言って確認をすると
「ちょっと管理本部へね。」
俊之は言った。
「おっしゃってくだされば私がすべていたしますよ。」
と陽子が言うと
「すまない。」
俊之は言って椅子に座った。
「私が電話をすればすぐに立花さんに伝わります。」
陽子が言うと
「僕も管理本部へ行ってから気付いたよ。」
俊之は言った。
「細かい事は申し付けてください。」
陽子が言うと
「この環境に慣れるまで少し時間がかかりそうだよ。」
俊之は言った。そんな俊之を見た陽子は人間的な優しさを感じた陽子であった。内線が鳴って陽子が出て
「社長室です。」
と言った。
「立花さんかな?」
俊之が言うと
「立花本部長からです。」
陽子は言って受話器を保留にすると俊之を見た。俊之は受話器を取って
「高村です。」
と言うと
「立花です。」
立花が緊張したような声で言った。
「忙しい時にすまないね。」
俊之が言うと
「先ほどいらっしゃったそうですね。」
立花は言った。
「急ぎではないけれど聞きたい事があったのでね。」
俊之が言うと
「川嶋さんにご支持くだされば私から伺いますよ。」
と立花は恐縮して言った。
「慣れなくてすまないね。」
俊之が言うと
「それは気にしないでください。」
立花は言った。
「実は総武化学の研究資料を見たいと思ってね。」
俊之が言うと
「承知しました。」
立場は言った。
「いつ頃見られますか?」
俊之が言うと
「すぐに取り揃えてお持ちします。」
立花はとハキハキとした口調で言った。
雨のあとに虹 その158
田中が運転する社用車から俊之が降りると待っていた陽子が
「おはようございます。」
と言った。
「おはよう。」
俊之も明るく言って歩き出した。陽子は歩きながら
「今日は14時から三友商事さんへ薬師寺さんと訪問する予定が入っています。」
と言って確認をすると
「予定しているよ。」
俊之は言った。
「私は三友商事さんに行くのは始めてです。」
陽子が言うと
「薬師寺さんのお手並み拝見だね。」
俊之は言った。
駅から北西大学への道を歩く久美子を後ろから純子追いかけて
「久美子!」
と言うと久美子を振り返って
「おはよう。」
と言った。
「昨日はありがとう。」
純子が言うと
「時間がないから落着いてレポートを書いてよ。」
久美子は言った。
「大丈夫よ。」
純子が言うと
「レポート進級が決まるからね。」
久美子は言った。
「今日と明日で軽く書いて来週早々に提出するから」
純子が明るく言った。
「それなら良いけどね。」
久美子は言った。
「久美子はまじめに考えすぎよ。」
純子が言うと
「遅くても来週中には提出しないと月末からはテストだから追い込まれるわよ。」
久美子はしっかり予定を把握して言った。