雨のあとに虹 その163
「立花本部長からです。」
陽子が言って電話を保留にすると俊之が電話に出た。
「高村です。」
俊之が言うと
「立花です。」
立花はハキハキとした声で言った。
「お疲れ様です。」
俊之が言うと
「総武化学の資料をそろえましたのでお持ちいたします。」
立花は言った。
「ありがとう。」
俊之が言った。そんな俊之を陽子は横で見ていた。
「確かに総武との提携が白紙になるとうちは痛手だね。」
三商事社長の岡村恒久が山本に言った。岡村は正樹と同じ年齢だが正樹の方が若くて逞しさがあった。個人差もあるだろうが正樹の方が物事に前向きな考えを持っていた。それに反比例して岡本は少し疲れた顔をしていた。
「大きな痛手です。」
山本が言うと
「そうだろうね?」」
岡村は言った。
「明日は一緒に謝罪に行っていただきたく思います。」
山本が言と
「どうしても私が行かなくてはいけないかね?」
岡村は言った。
「一緒に謝罪に行ってください。」
山本が言うと
「私は三商事の社長だよ。」
岡村は言った。
「。今は状況が大きく変わって三友の二文字が効力を失ってきています。」
山本が言うと
「それは解るけどね。」
岡村は言った。
「世間の評価では三友商事より総武グループの方が上になってきています。」
山本は寂しそうな顔で言った。
「そういうものかね?」
岡村が言うと
「特に次期社長は高村さんですよ。」
山本が言った。
「高村俊之と言う男はそんなに凄い男かね?」
岡村は質問をするように言った。
「もちろんです。」
山本は言った。
「そんなものかね?」
岡村が言うと
「社長は直接的にご存知ないでしょうけど三友商事に居た頃の高村さんは敵なしでした。」
山本は言った。
「それは知らなかった。」
岡村が言うと
「今回も高村さんが出て来ました。」
山本は言った。
「そうだね。」
岡村が言うと
「我々にはかなり不利ですよ。」
と山本は言った。
「また来週ね。」
純子が久美子に言った。
「成人式の写真もあとで見せてよ。」
久美子も微笑みながら言った。
「私はこれからバイトだからここでね。」
純子は言った。
「気をつけてね。」
久美子が言うと
「久美子も気をつけてね」
純子が言って校門を出て急いで駅の方角へ小走りに走って行った。久美子は鞄から携帯を出して育子にかけてみた。留守電になっていて出ない。
「育子さんの忙しいところすみません。」
久美子は言ってメッセージを残したあとに図書室を見た。ゆっくりと本を読んでみたくなった久美子は図書室へ入って行った。
雨のあとに虹 その162
「さっきはごめんね。」
純子が誤って言った。学食は込んでいてやっと座ったところである。
「本当にどうしたのよ?」
久美子は言った。
「バイトが忙しくてね。」
純子が言うと
「バイトも大事だけどテストが近いからしっかりしてね。」
久美子は少しきつくい口調で言ったがそれは純子を心配してのことである。
「最近不眠症ぎみなのよ。」
と純子が眠そうな声で言った。
「大丈夫なの?」
と久美子も気になって言うと
「大丈夫よ。」
純子は軽い口調で言った。
「それなら良いけどね。」
久美子はそう言って珈琲を飲んだ。
田中が運転する社用車は湾岸沿いを離れて都心部に入っていた。
「私は余計な事をしましたか?」
恵子は冷静になって之に言った。先ほどの剣幕は恵子が計算してとった行動のようである。
「それで良いと思うよ。」
俊之が言うと
「30分も待たせるとは非常識ですよね?」
陽子は言った。
「中村くんはかわいそうだったが山本さんの計算通りに事が運んだようだね。」
俊之が言うと
「計算どおりですか?」
陽子は言った。
「あとで時間がある時に説明しますよ。」
俊之が言うと
「その山本さんもかなりの策士ですね。」
恵子は言った。
「これで誰かが責任を取らされるね。」
俊之が言うと
「当たり前ですよ。」
恵子は言った。
「私も腹が立ちました。」
陽子も言うと俊之は陽子と恵子の顔を交互に見て
「ふたりとも言う時にははっきり言うね。」
と言った。
「当然です。」
恵子は言った。
「ふたりとも頼もしいね。」
俊之が言うと
自社の社長を侮辱されて黙っている社員はいないですよ。」
恵子は言った。俊之は以前に久美子も同じような事を言ったのを思い出していた。
「馬鹿者!」
山本はありったけの大声で田所を怒鳴り飛ばした。中村は沈んだ表情であるが田所は依然としてどこ吹く風といった表情であった。
「すみません。」
中村は言った。
「中村くんはいいよ。」
山本が言うと
「僕がその前の打合せが長引いたのでみなさんにご迷惑をおかけしました。」
中村は言った。
「中村くんは気にするのを止めなさい。」
山本は言って田所を見た。
「私も別に変な事はしていませんよ。」
田所が言うと
「お前には全責任を取ってもらうからな。
山本は有無を言わせない口調で言った。
雨のあとに虹 その161
「私たちをいつまで待たせる気でしょうね?」
恵子はいらいらして言った。俊之は無言である。
「ちゃんと次期社長をお連れすると伝えてあるの?」
陽子も心配になって恵子に言うと
「もちろんです。」
恵子は言った。
「それでこんなに待たせるのは非常識ね。」
陽子が言うと
「公式発表は7月先だけど決定事項だけどから今から少しずつ業務を担当される旨を言いました。」
恵子は言った。
「そうだったの?」
陽子が言うと
「今日は顔見世のためにお連れすると立花さんからも正式に連絡していただいています。」
恵子は言って時計を見た。約束の時間を30分も過ぎていた。
「本当に待たせるわね。」
陽子は言った時にノックの音が聞こえた。
「どうぞ!」
陽子が言うと
「失礼します。」
中村が言ってドアを開けた。中村が入って来ると後ろの田所とふたりの若い社員である梅田秀明と松川繁樹も中村に続いて入って来た。俊之と田所は一度目を合わせた。
中村は俊之たちを見て
「遅れてすみませんでした。」
と言うが恵子は大声で
「これはいったいどういうことですか?」
と言った。
「本当にすみません。」
中村が言うと
「今日は次期社長の高村俊之をお連れすると申し上げたはずですよ。」
恵子は言った。
「それは総武企画さんの管理本部から連絡を受けています。」
中村は言った。
「それなのに30分も待たせるとは何事ですか!」
恵子は大声で言った。一括するようなその大声は広い応接室に響いていた。中村たちは縮こまったが田所だけは平然としていた。
「それは大変失礼しました。」
中村は声にならない声で言った。さらに恵子は
「高村俊之を侮辱したという事は白仁正樹を侮辱したのと同じですよ。」
恵子が言うと
「それは申し訳ありません。」
梅田が言った。
「今日はこれで引き上げますから後日三友商事の社長が謝罪に来てください。」
恵子は強い口調で言った。
「それは難しいかもしれません。」
松川が言うが
「いいですね?」
恵子は有無を言わせない口調で言った。
「はい!」
中村は言うと言葉を失った。恵子は中村に睨みつけるように見たあと俊之を見てにっこりしながら
「帰りましょう。」
と言って足早に歩き出した。陽子も
「行きましょう。」
と俊之に言った。俊之は
「今日はこれで失礼するよ。」
と言ってから中村の目を見た。中村は困った顔をしていた。俊之は目で中村に合図をした。俊之たち3人は急いで田中が待つ社用車へと戻って行った。