雨のあとに虹 その161
「私たちをいつまで待たせる気でしょうね?」
恵子はいらいらして言った。俊之は無言である。
「ちゃんと次期社長をお連れすると伝えてあるの?」
陽子も心配になって恵子に言うと
「もちろんです。」
恵子は言った。
「それでこんなに待たせるのは非常識ね。」
陽子が言うと
「公式発表は7月先だけど決定事項だけどから今から少しずつ業務を担当される旨を言いました。」
恵子は言った。
「そうだったの?」
陽子が言うと
「今日は顔見世のためにお連れすると立花さんからも正式に連絡していただいています。」
恵子は言って時計を見た。約束の時間を30分も過ぎていた。
「本当に待たせるわね。」
陽子は言った時にノックの音が聞こえた。
「どうぞ!」
陽子が言うと
「失礼します。」
中村が言ってドアを開けた。中村が入って来ると後ろの田所とふたりの若い社員である梅田秀明と松川繁樹も中村に続いて入って来た。俊之と田所は一度目を合わせた。
中村は俊之たちを見て
「遅れてすみませんでした。」
と言うが恵子は大声で
「これはいったいどういうことですか?」
と言った。
「本当にすみません。」
中村が言うと
「今日は次期社長の高村俊之をお連れすると申し上げたはずですよ。」
恵子は言った。
「それは総武企画さんの管理本部から連絡を受けています。」
中村は言った。
「それなのに30分も待たせるとは何事ですか!」
恵子は大声で言った。一括するようなその大声は広い応接室に響いていた。中村たちは縮こまったが田所だけは平然としていた。
「それは大変失礼しました。」
中村は声にならない声で言った。さらに恵子は
「高村俊之を侮辱したという事は白仁正樹を侮辱したのと同じですよ。」
恵子が言うと
「それは申し訳ありません。」
梅田が言った。
「今日はこれで引き上げますから後日三友商事の社長が謝罪に来てください。」
恵子は強い口調で言った。
「それは難しいかもしれません。」
松川が言うが
「いいですね?」
恵子は有無を言わせない口調で言った。
「はい!」
中村は言うと言葉を失った。恵子は中村に睨みつけるように見たあと俊之を見てにっこりしながら
「帰りましょう。」
と言って足早に歩き出した。陽子も
「行きましょう。」
と俊之に言った。俊之は
「今日はこれで失礼するよ。」
と言ってから中村の目を見た。中村は困った顔をしていた。俊之は目で中村に合図をした。俊之たち3人は急いで田中が待つ社用車へと戻って行った。