開運童子のブログ -66ページ目

雨のあとに虹 その154

「とても参考になりました。」

敦子が言うと

「あれで良かったのですか?」

俊之は言った。俊之は自分の話がどれだけ役に立つのかがよく解らなかった。

「高村さんのお話はとても貴重でした。」

千鶴が言って

「ありがとうございます。」

敦子が言った。

「僕に出来る事があればいつでも言ってください。」

俊之は快く言った。

「それで失礼しますが何度か連絡をさせていただくかもしれません。」

敦子が言うと

「いつでも気軽に連絡をください。」

俊之は言った。

心地よい快晴に俊之の気分も自然に明るくなってきていた。俊之は時間に余裕があるので少し歩いてみる事にした。駅前の通りを講演の方向へ歩き出した俊之に

「高村さん。」

と直子が言った。俊之が直子を見ると翔太と一緒に直子が立って微笑んでいた。

「こんにちは。」

俊之は言った。俊之は翔太とも視線が合った。

「ちょうど良かったです。」

翔太が言うと

「とにかく立ち話では通行しているに迷惑がかかるからどこかに入ろうよ。」

俊之は言った。

「遅くなりました。」

貴志は言って役員室に入って来た。山本の隣にただ座っているだけの田所を横目で見ただけですぐに目を逸らした。

「本来なら田所くんには席をはずさせるところだけど君と同じですぐに仕事をサボるからね。」

山本はきつい口調で言った。

「彼は友達みたいなものですよ。」

が言うと

「君の許可が出たのなら話は早い。」

山本は言った。

「何かありましたでしょうか?」

貴志が言うと

「いろいろ調べさせてもらったよ」

山本は言って書類に目を通していた。貴志は少しずつ緊張してきたようである。

「凄い書類ですね。」

貴志が言うと

「貴志くんは凄い不正をやっているね」

山本は貴志と視線を合わせて言った。

「不正はやっていません。」

貴志が言うと

「臨時の役員会で決定した事を言うよ。」

山本は言った。

「役員会で決定した事ですか?」

貴志が言うと

「君には来月から子会社である三友商事情報システムへ出向してもらう事にした。」

山本は言った。

「出向ですか?」

貴志が言うと

「しっかり頼むよ。」

山本は淡々と言った。

「堀川さん。」

ひとみが言うと久美子は振り返って

「はい。」

と言った。

「少ないけど気持ちだから受取ってね。」

ひとみは言って小さな箱を出した。

「そんなに気を使わないでください。」

久美子が言ってその箱を見つめていると

「成人式は一度しかないからね。」

とひとみが言った。

「わざわざ店長に気を使っていただいてすみません。」

久美子が言うと

「疲れた。」

と小百合が言って休憩室に入って来た。

「みんなには言ってないから早く受取ってよ。」

とひとみが小声で言った。

「ありがとうございます。」

久美子は言って箱を受取った。

「あとで飲み生きませんか?」

小百合は言うと

「久しぶりに飲みに行きましょうよ。」

ひとみは言った。久美子はひとみから受取った箱を見て箱の中にはひとみの優しさが入っているような気がした。

雨のあとに虹 その153

「おはようございます。」

久美子は言ってタイムカードを押した。

「堀川さん。」

ひとみが久美子を見て言った。

「はい。」

久美子が言うと

「今度の祝日は成人式でしょ?」

ひとみは言った。

「私は実家に帰りますけど良いですか?」

久美子が言うと

「それは構わないわ。」

ひとみは言って

「当日に帰ってきます。」

久美子が言うと

「翌日はローテーションに入れても大丈夫かしら?」

ひとみがスケジュールを確認しながら言った。

「翌日は大丈夫です。」

久美子は予定を確認して言った。

「それなら良かった。」

ひとみが言うと

「その翌日は講義です大丈夫ですか?」

久美子は言った。

「もう少しでテストでしょ?」

ひとみが言うと

「期末テストだから真剣に受けないとダメですよね?」

久美子は言った。

「その間は勉強に専念した方が良いわよ。」

ひとみが言うと

「そうした方が良いですよね?」

久美子は言った。

「進級すればあとは楽になるからね。」

ひとみは久美子を見て言った。

 直子は携帯の向こうで流れる機械的なアナウンスを呆然として聞いていた。

「ただいまおかけになった電話番号はお客様のご都合によりお繋ぎできません。」

といかにも感情がない声が流れていた。直子は弘子にお金を振込んでから電話が通じなくなっていた。今頃になって騙されたと気付くとは自分はバカだったと反省してもあとの祭りであった。世の中はうまい話はないものだ。駅ビルには人が多く昼前の賑わいが活気的である。その群集の中にひとり孤独に取残された直子が呆然としていたのである。いつの間にか直子の横に立っていた翔太が耳元で

「そろそろ追いつめますか?」

と小声で言った。直子は顔を翔太の方に目を向けた。

「どうしてあなたが知っているの?」

直子は反射的に言った。

「田所課長」

中村は役員室に入って来ると田所の名前を呼んだ。

「どうかしたのか?」

田所は言った。少し離れた所に山本が座っていた。

「明日の午後一番に総武企画の次期社長が挨拶に来るそうです。」

中村は言った。

「総武企画の次期社長かね。」

山本が確認するように言うと

「現在は引継ぎの状態だそうです。」

中村は言った。

「総武企画と言えば総武グループの司令塔だよ。」

山本が言うと

「何か失礼があれば提携そのものが白紙になります。」

中村が言うと

「ここは慎重に頼むよ。」

山本は中村に言うと

「きちんと対応をお願いします。」

中村はやや田所に言った。

「総武の次期社長は失礼があってはいけないぞ。」

山本は田所に言った。山本は総武の次期社長に俊之が就任する事は沢田から報告を受けていた。

総武側が自分たちを試しているとも受取れる状態になってきていた。

「大丈夫ですよ。」

田所は言った。

「慎重にお願いしますよ。」

中村が言うと

「軽くやっつけてやりますよ。」

田所は言った。田所の浅知恵に

「お前がそんな事でどうするのだ。」

山本は田所に大声で言った。

雨のあとに虹 その152

「高村さん!」

恵子は言った。か恵子にはなり酔いが回っている様子である。

「薬師寺さんはもう寄っているの?」

陽子が言うと

「大丈夫だよ。」

俊之は言った。

「あんた良い奴だよ。」

恵子は言った。立花が心配そうに俊之と恵子を交互に見ていた。

「薬師寺さんに褒められて嬉しいですよ。」

俊之が言うと

「私は安心したよ。」
恵子は言った。恵子は呂律が回らなくなってきていた。

「僕のどこに安心したの?

俊之言うと

「何がじゃないよ。」

恵子は言った。

「僕には想像がつかないものでね。」

俊之が言うと

「最初の挨拶の時に私に言った言葉は本音だろうね?」

恵子は言った。酔っ払ったおやじのように恵子は俊之に絡むように言った。

「薬師寺さんは酔うのが早いですよ。」

立花は俊之に気を使いながら恵子に言った。

「すみません。」

陽子は言った。

「いつもはあんなではないのですけどね。」

立花は言った。

「気にしないでいいよ。」

俊之が言った。

「薬師寺さんが酔うのは珍しいですね。」

陽子が言うと

「おそらく仕事上のストレスが高いからだろうね?」

俊之は言った。俊之は恵子が外見上は強い女を演じていても繊細な感覚の持ち主だという事を感じ取っていた。

久美子はパソコンでレポートを書いていた。そんなに難しい内容ではないが大川教授がレポートを提出した学生はテストを免除しても良いと言っていた。久美子はレポートを提出してテストを免除してもらう方法を選択していた。久美子は一区切りをしたところで時計を見と23時を少し過ぎていた。

「本当に大丈夫ですか?」

社用車を降りた俊之は陽子に言った。

「薬師寺さんは私が送って行きますから大丈夫です。」

陽子は酔い潰れた恵子を介抱しながら俊之に言った。

「すまないけど任せたよ。」

俊之は運転手の田中を見て言った。

「心配しなくて大丈夫ですよ。」
田中が穏やかな口調で言った。

「それではお疲れ様でした。」

俊之が言うと田中は静かにドアを閉めて社用車をスタートさせた。俊之は社用車を見送って自分の部屋に入って行った。温かい気持ちで仲間として自分を迎えてくれた彼らに自分が出来る事はトップとしての舵取りを的確に実行する事だと俊之は思っていた。彼ら彼女らのためにも自分は総武のトップとして総武グループの経営基盤をさらに広げる方法を考えていこうと俊之は頭の片隅でこれからのビジョンを描いていた。落着いた時間が静かに流れるような静寂を破って俊之の携帯に久美子からの着信があった。俊之は出て

「久美ちゃんの声を聞きたいと思ったところだよ。」

俊之は正直な自分の気持ちを言った。

「本当ですか?」

久美子は自分を頼る俊之の言葉が嬉しくなって言った。

「本当だよ。」

俊之は言った。

「何でも聞いてください。」

久美子が言うと

「これから少しずつ忙しくなるから久美ちゃんを身近に感じられる時間が大事になると思ってね。」

俊之は言った。俊之は以前の自分では口にしなかった言葉を自然に口にしているのに気づき始めていた。

「私もそう思います。」

久美子は言った。

「久美ちゃんも同じ事を考えていたの?」

俊之が言うと

「レポートや試験で大変な時にはそばで支えてくれたら何でも出来そうな気がします。」

久美子も素直に自分の気持ち言った。

「丸角書店の荒井です。」

荒井敦子は俊之を見て言った。

「同じく福田です。」

福田千鶴も俊之を見て言った。

「高村俊之です。」

俊之は言ってふたりを見た。敦子は30歳くらいの営業ウーマンである事がすぐに解った。千鶴は25歳くらいで編集担当に見えた。

「急にお時間をいただいきましてすみません。」

敦子が言った。

「いいえ構いませんよ。」

俊之が言った。

「平日はお忙しいと天門先生から伺っていましたが大丈夫ですか?」

千鶴が言うと

「今日は時間が空いていましたので大丈夫ですよ。」

俊之は言った。今回は別の本での取材である。先日の桑田の漫画と違って今日は天門が各専門書に開運を施す例として俊之の体験が載せられるのである。

「早速ですが天門先生の開運体験談についてお話をお聞かせ願えますか?」

敦子が言うと

「それでは経緯からお話しましょう。」

俊之は言った。