開運童子のブログ -53ページ目

雨のあとに虹 その193

「あなたから言っておきながらどうしたの?」

弘子が声を荒げて言うと

「どうしても外せない用件ができたからね。」

純一は電話の向こうで言った。

「だったらすぐに連絡をくれれば良いでしょ!」

弘子は怒って言った。

「あれは君の仲間がやった事ではないのか?」

純一が言うと

「いったい何の事を言っているの?」

弘子は言った。

「今週は野暮用があってだめだから来週にしよう。」

純一が言うと

「あなたから言っておきながら勝手な男ね。」

弘子は言った。

「わざわざ来てくれなくても僕から会いに行くつもりだったよ。」

俊之は言った。社長室で向き合った増田は

「一度お前が社長室に居るところを見たかったからね。」

増田がいつも調子で言った。

「君の力を借りて助かったよ。」

俊之が言うと

「だから俺に任せろと言っただろう。」

増田はクールに言った。

「総武と首都圏大学が提携する事により双方に利益が出る。」

俊之が言うと

「お前の発想は凄いな。」

増田は言った。

「首都圏大学は人材確保と権利収入の面でメリットがある。」

俊之が言うと

「総武はアフリカでの事業展開で他社を抑えて独占的に事業展開が出来る。」

増田は言った。

「環境を守りながら開発が出来る唯一の方法だよ。」

俊之が言うと

「ついでに俺のところの三友電機ともうまくやらないか?」

増田は言った。

「それはありがたい。」

俊之が言うと

「双方にメリットがあるな。」

増田は言った。

「順番に話を進めさせてもらうよ。」

俊之は増田の目を見てはっきりと言った。

「また明日ね。」

純子が言うと

「テストがんばろうね。」

久美子は純子の背中に言った。純子は自分が住む駅へ向かう電車に乗るために急いで改札を通って中に入った。久美子は心に抱えている不安とある意味での後悔を感じてその場から動けないでいた。誰かと一緒なら普通に振舞えるのであるがひとりになると心が悲鳴をあげそうになった。それでも気持ちを落ち着けて改札口の前に立つと

「久美子さん。」

翔太が珍しく大きな声で言った。振り返った久美子は安心した気持ちになって

「笹川さん。」

とだけ言った。

「久美子さん近いうちに時間を作ってもらえませんか?」

翔太は言った。

「テストが終わればいつでもいいですよ。」

久美子が言うと

「高村さんやひとみさんにも一緒に見てもらいたいものがありましてね。」

翔太は元気よく言った。

雨のあとに虹 その192

「来週には総武と三友商事との具体的な交渉に目処がつきます。」

総武企画の会議室で恵子が俊之に言った。陽子がメモをとり立花も真剣に聞いていた。立花には俊之が静かに聞いているように見えていた。

「高村さん。」

陽子が言うと

「うん。」

俊之は言って我に返ったように周囲を見回していた。

「何かありましたか?」

恵子が言うと

「続けてください。」

俊之は言った。

「総武に遊園地の仕入れ商品を価格が三友商事から購入すると1割安くなる予定です。」

恵子が言った。

「今日の高村さんはいつもと違いますね?」

立花が陽子に小声で言った。

「立花さんも気がつきましたか?」

陽子も小声で言った。

「外見はいつも高村さんだけど魂が抜けたみたいですよ。」

立花が言うと

「私は何も知らないですよ。」

陽子は言った。陽子も俊之に元気がない事が気になっていたのである。

「何か心配事でもありますか?」

立花が言うと

「何でもないよ。」

俊之は言った。

「明日からテストだね。」

純子が言うと

「しっかり勉強しておかないとね。」

久美子は言った。純子は学食の珈琲を飲みながら

「久美子は勉強が出来るからいいじゃない。」

と久美子に言った。

「私だって気が抜けないわよ。」

久美子が言うと

「私はギリギリで補習になりそうよ。」

純子は言った。純子は深刻な表情ではなかった。

と言っているがそんなに深刻ではない。

「私だっていつも良い成績が残せるわけではないからこの時期には真剣に勉強するよ。」

久美子が言うと

「いつもの久美子じゃないみたいね。」

純子は言った。

「そんなことはないよ。」

久美子が言うと

「何かあったの?」

純子は言った。

「お客様はこちらへどうぞ。」

ひとみは言った。

「お次のお客様はこちらへどうぞ。」

小百合は笑顔で言った。久美子がいない店内は混雑時の対応が大変であるが今日はいつもと違って対応がスムーズにいっていた。ひとみは久美子の事を考えていた。今は久美子にとって辛くても大事な時期である。久美子が少しでも楽に乗り越えられるようにひとみは影で支えてあげたいと考えていた。ひとみは俊之に対しても応援する気持ちがあるが俊之は大人である。自分が何もしなくても乗り越えてくれるだろうとひとみはそう考えてはいた。ひとみも小百合もいつでもふたりに協力する用意はあったのである。

「よくやった。」

翔太は関口を労って言った。

「これは久美子さんのためになりますよね?」

関口は言った。

「なるよ。」

翔太が言うと

「それはよかった。」

関口は言った

「それだけではなく何より高村さんのためになるのは間違いない。」

翔太は言って関口から受取ったビデオを手に取った。

「それはコピーのようですが映っている内容は鮮明です。」

関口が言うと

「顔は見られなかったよね?」

翔太は言った。

「そんな失敗はしないですよ。」

関口が言うと

「せっかく協力してもらってもお前が犯罪者になっては高村さんは喜ばないからね。」

翔太は言った。

「心得ています。」

関口が言うと

「石井純一はオリジナルを持っているはずだね?」

翔太は言った。公園の片隅で話すふたりは周囲には休憩しているようにしか見えないはずだった。

「これでひとつ解決ですね。」

関口は笑みを浮かべて言った。

雨のあとに虹 その191

 俊之は珈琲を飲みながら窓の外に目を移していた。そろそろ寝なければいけない時間だが目がさえてとても寝られそうになかった。久しぶりに本でも読もうとした時である俊之の携帯が鳴っていた。珍しく天門からだった。

「こんな時間に申し訳ないですが今話せますか?」

天門が言うと

「大丈夫です。」

俊之は言った。

「もっと早くに電話をすればよかったよ。」

天門が言うと

「今夜はまだ寝られそうにないものですからね。」

俊之は言った。

「高村さんの事だから心配はないと思うけどね」

天門が言うと

「何かあったのですか?」

俊之は言った。

「相手の事を考えるのも大事なら自分の気持ちを正直に相手にぶつけるのも時には大事だと思ってね。」

天門はわざと含みを持たせて言った。

「僕は自分の気持ちを相手にぶつけようか迷っています。」

俊之は正直に言った。

「もっと詳しく話してください。」

天門が言うと

「以前にお話した久美ちゃんの件でどうしても素直になれない自分がいます。」

俊之は言った。

「自分に素直にならないと先に進めないですよ。」

天門は優しく諭すように言った。

「20歳の若い久美ちゃんを自分のような中年男がいつまでも縛っていてはいけないのではないかと思えてきましてね。」

俊之が言うと

「高村さんのいけない部分が出てきたね。」

天門は言った。

「久美ちゃんにはいずれ年相応な男性が現れて本当の恋をすると思います。」

俊之が言うと

「それは考え過ぎだよ。」

天門は要った。

「僕はそれまでの遊び相手でも良いと思っていました。」

俊之は言葉を選んで言った。

「そんな馬鹿な考えは止めなさい!」

天門は珍しく大きな声で言った。

「天門先生。」

俊之は驚いて言うと

「それは違うと思うよ」

天門は言った。

「違いますか?」

俊之が言うと

「私は久美子さんとは会った事はないけれど遊びが出来る女性ではないと思うよ。」

天門は言った。

「私も久美ちゃんは遊びが出来ないと思っています。」

俊之が言うと

「高村さんがじっくり考えて答えを出せば良いいのは間違いないけれどね。」

天門は言った。

「何でもおっしゃってください。」

俊之が言うと

「男は時には自分の気持ちを女性にぶつける事も大事だよ。」

天門は珍しく力強く言った。

「自分の気持ちを整理してみます。」

俊之が言うと

「久美子さんはいつカナダへ」 
天門は言った。

「3月のはじめだそうです。」

俊之が言うと

「あと1ヶ月と少しだね。」

天門は言った。

「天門先生も久美ちゃんがカナダに行く事をご存知だったのですか?」

俊之が言うと

「私の鑑定でカナダ方面にから言った。