雨のあとに虹 その217
「久美子さん。」
社用車が止まって運転手の田中が久美子に言った。久美子は歩く通りは自動車の交通量は少なかった。
「田中さん。」
久美子が言うと
「急で申し訳ありませんがお時間があるようでしたら総武までお越しくださいませんか?」
田中が言うと
「今日は時間があるから大丈夫ですよ。」
久美子は言った。
「それでしたらこれからお連れ致します。」
田中が言って久美子を社用車に招き入れた。久美子少し恥ずかしいような気持ちで社用車に乗っていた。
「忙しいところ悪かったな。」
矢島が社長室で言うと
「構わないさ。」
俊之は言った。
「総武の次期社長に急なお願いをしてしまったな。」
矢島が言うと
「僕は矢島建設の顧問でもあるからね。」
俊之は言った。
「お前のおかげで助かったよ。」
矢島が言うと
「きちんと矢島建設の仕事もこなさないといけないからね。」
俊之は言った。
「おかげで田崎もかなり成長してくれた。」
矢島が言うと
「田崎さんは成長したね。」
俊之は言った。
「田崎は設計をさせても優秀だが経営的センスもあるようだな。」
矢島が感心して言った。
「田崎さんはこれから成長するする人だから見守らないとダメだよ。」
俊之が言うと
「解っているさ。」
矢島は言った。
「急にすみません。」
総武企画の応接室で立花が言うと
「気にしないでください。」
久美子は戸惑いながら言った。
「私は管理本部長をしている立花慎吾です。」
立花は丁寧に言った。
「私は高村俊之さんの知り合いの堀川久美子です。」
久美子が言うと
「詳細は存じていますよ。」
立場は言った。
「私の何かご用でしょうか?」
なぜここに呼ばれたのか状況が解らない久美子が言うと
「早速ですが今日はぜひ久美子さんに総武遊園地のイメージキャラクターをお願いできればと思いましてお越しいただきました。」
立花は言った。
「私が遊園地のイメージキャラクターですか?」
戸惑いながら久美子が言うと
「これは高村さんにはまだ了解をとっていないのですよ。」
立花は微笑んで言った。
「私でイメージキャラクターが勤まるのでしょうか?」
久美子は心配そうに言った。
「大丈夫ですよ。」
立花が言うと
「私には自信がないですよ。」
久美子は言った。
「久美子さんがイメージにぴったりです。」
立花は言った。
「楽しそうな仕事ですよね?」
久美子はイメージキャラクターに少しだけ興味を持って言うと
「カナダに行く前にお願いします。」
立花は含みを持たせて言った。
雨のあとに虹 その216
「明日なら時間がとれそうだけど良いかしら?」
弘子が直子の携帯に電話をかけてきて言った。
「明日は夕方から時間がとれますけど本当にお金を返してくれますよね?」
直子は強く言った。
「約束は守るから大丈夫よ。」
弘子が言うと
「先日お会いしたお店でどうですか?」
直子は言った。弘子がいう事は信用性が薄いのであった。
「夕方に会いましょう。」
弘子が言うと
「よろしくお願いします。」
直子は言って電話を切っていた。
「川嶋さんとこうしてゆっくり話すのは初めてだね。」
俊之は言った。珍しく静かな音楽が流れるショットバーで俊之と陽子が向かい合っていた。
「高村さんはアルコールが強くないと聞いていたのでお誘いしてもご迷惑かと思っていました。」
陽子が言うと
「迷惑ではないよ。」
俊之は言った。
「本当ですか?」
陽子が言うと
「いつも仕事の話ばかりだからね。」
俊之は言った。
「総武のトップになられるので大変ですね。」
陽子が言うと
「たまには適当な話をして時間を過ごすのも良いよね?」
俊之は夜景を見てから陽子の目を見て言った。
「今は私とゆっくり飲んでいる場合ではなかったのではないですか?」
陽子が俊之に言うと
「ひとりで考えてもどうにもならない事もあるからね。」
俊之は言ってコップに口をつけた。
「夜景は見る人の心によって違って見えるのをご存知ですか?」
陽子が言うと
「見え方が違うとはどういう事なの?」
俊之は言った。
「今の高村さんにはどう映っていますか?」
陽子が言うと
「綺麗で鮮やかだね。」
俊之は言った。
「それだけですか?」
陽子は言ってカクテルに口をつけた。
「鮮明に輝く光線が眩しく見えるよ。」
俊之は言った。
「ちょうどよかったです。」
田崎が俊之を見て言った。俊之が1週間ぶりに矢島建設の入口を通った時であった。
「おはよう。」
俊之が言うと
「おはようございます。」
田崎はまだ挨拶をしていなかった事に気付いていった。
「慌ててどうしたの?」
俊之が言うと
「矢島建設の新規事情でHARUKA-SHIRANIの専門店を出す事が決まりそうです。」
田崎は言った。
「春香さんから矢島に話があった件だね。」
俊之が言うと
「話が急展開で進んでいます。」
田崎は言った。
「無理な投資をしなければ良いと思うよ。」
俊之が言うと
「うちも建設業界だけではなく異分野へ進出できたのは良い事ですが不安もあるわけです。」
田崎は言った。
「誰にでも不安はあるよ。」
俊之が言うと
「大丈夫でしょうか?」
田崎は言った。
「本業に支障がない範囲でやればいいよ。」
俊之が言うと
「それで新規に人材を募集する事になりました。」
田崎は不安な表情で言った。
「僕が面接に立会わないといけないようだね。」
俊之が言うと
「お願いしますよ。」
田崎は言った。俊之はフロアーを見回しながら田崎の言葉を聞いていた。矢島建設ではいろいろな意味で社員が活気付いているように見えていた。
雨のあとに虹 その215
「急だったけど午前中にしか時間がとれなかったのでね。」
俊之は榊原に言った。
「見舞いに来てもらってすまないね。」
榊原が言うと
「手術が成功してよかったよ。」
俊之は自分の事のように嬉しそうな顔で言った。
「多恵子も驚いていたよ。」
榊原は俊之を見て言った。病室は静かでふたりの声だけが部屋に響いていた。
「そんなに元気なら退院も早いようだね。」
俊之が言うと
「まだ2ヶ月はかかるそうだよ。」
榊原は言った。
「2ヶ月で退院できるのなら感謝しなくてはいけないよ。」
俊之が言うと看護師が
「お薬の時間ですよ。」
と言って病室に入って来た。
「そろそろ出かけましょう。」
山本が岡村に言った。
「もうそんな時間かね?」
岡村が言うと
「時間に遅れるのは失礼ですから早めに行きましょう。」
山本は言った。
「中村くんは?」
岡村が言うと
「一社立寄りがあって現地で待ち合せる予定です。」
山本は言った。
「何だか気が重いわね。」
休憩時間になるとひとみが久美子に言った。
「店長も会議では気が重くなりますか?」
久美子が言った。
「会議の事じゃないわよ。」
ひとみが言うと
「それは何で気が重いのですか?」
久美子は言った。
「堀川さんと高村さんの事よ。」
ひとみが言うと
「もう決めた事ですからあとには戻れないですよ。」
久美子は言って少し考えていた。
「とにかく今出来る事を確実にやっていくしかないのね。」
ひとみは言った。
「このたびは弊社の田所が世間をお騒がせしまして総武さんにも動揺があるかと思います。」
岡村が言うのを山本も中村も横で聞いていた。
「あの時に私もあの場に居たのをご存知ですか?」
俊之が静かに言った。陽子と恵子が俊之の両サイドに座って聞いていた。
「あとで知りました。」
岡村が言うと
「高村さんが田所を捕まえたそうですね。」
山本は言った。
「あれはみんなの協力があったから出来た事ですよ。」
俊之が言うと
「高村さんはうちの事情が解っているから話がしやすくて良かったです。」
中村が言い難そうに言った。
「田所さんの事件は御社との提携には影響がないと思いますよ。」
俊之が言うと
「そのようにおっしゃってくださるとありがたいです。」
岡村は安心したように言った。
「あくまでも田所さんの事件は別の次元のお話ですからね。」
俊之が言うと
「交渉は詰めの段階ですのでこのまま中村さんと最後まで前向きに交渉したいと考えています。」
恵子は言った。
「それはありがとうございます。」
中村が言うと
「特に問題はないですね。」
俊之は言った。
「田所が迷惑をかけた件に関してはすまないと思っているよ。」
山本が言うと
「ひとつだけ言わせていただきたいのですけどね。」
俊之は言った。
「遠慮なくどうぞ。」
山本が言うと
「田所さんの実態は僕が在籍当時から知っていたわけだから早く対応しておけばよかったと思いますよ。」
俊之は言った。
「高村さんがおっしゃる通りです。」
山本が言うと
「僕は何度も会社側に報告していましたよ。」
俊之は言った。
「私は責任を感じています。」
山本は言って頭を下げた。