雨のあとに虹 その215
「急だったけど午前中にしか時間がとれなかったのでね。」
俊之は榊原に言った。
「見舞いに来てもらってすまないね。」
榊原が言うと
「手術が成功してよかったよ。」
俊之は自分の事のように嬉しそうな顔で言った。
「多恵子も驚いていたよ。」
榊原は俊之を見て言った。病室は静かでふたりの声だけが部屋に響いていた。
「そんなに元気なら退院も早いようだね。」
俊之が言うと
「まだ2ヶ月はかかるそうだよ。」
榊原は言った。
「2ヶ月で退院できるのなら感謝しなくてはいけないよ。」
俊之が言うと看護師が
「お薬の時間ですよ。」
と言って病室に入って来た。
「そろそろ出かけましょう。」
山本が岡村に言った。
「もうそんな時間かね?」
岡村が言うと
「時間に遅れるのは失礼ですから早めに行きましょう。」
山本は言った。
「中村くんは?」
岡村が言うと
「一社立寄りがあって現地で待ち合せる予定です。」
山本は言った。
「何だか気が重いわね。」
休憩時間になるとひとみが久美子に言った。
「店長も会議では気が重くなりますか?」
久美子が言った。
「会議の事じゃないわよ。」
ひとみが言うと
「それは何で気が重いのですか?」
久美子は言った。
「堀川さんと高村さんの事よ。」
ひとみが言うと
「もう決めた事ですからあとには戻れないですよ。」
久美子は言って少し考えていた。
「とにかく今出来る事を確実にやっていくしかないのね。」
ひとみは言った。
「このたびは弊社の田所が世間をお騒がせしまして総武さんにも動揺があるかと思います。」
岡村が言うのを山本も中村も横で聞いていた。
「あの時に私もあの場に居たのをご存知ですか?」
俊之が静かに言った。陽子と恵子が俊之の両サイドに座って聞いていた。
「あとで知りました。」
岡村が言うと
「高村さんが田所を捕まえたそうですね。」
山本は言った。
「あれはみんなの協力があったから出来た事ですよ。」
俊之が言うと
「高村さんはうちの事情が解っているから話がしやすくて良かったです。」
中村が言い難そうに言った。
「田所さんの事件は御社との提携には影響がないと思いますよ。」
俊之が言うと
「そのようにおっしゃってくださるとありがたいです。」
岡村は安心したように言った。
「あくまでも田所さんの事件は別の次元のお話ですからね。」
俊之が言うと
「交渉は詰めの段階ですのでこのまま中村さんと最後まで前向きに交渉したいと考えています。」
恵子は言った。
「それはありがとうございます。」
中村が言うと
「特に問題はないですね。」
俊之は言った。
「田所が迷惑をかけた件に関してはすまないと思っているよ。」
山本が言うと
「ひとつだけ言わせていただきたいのですけどね。」
俊之は言った。
「遠慮なくどうぞ。」
山本が言うと
「田所さんの実態は僕が在籍当時から知っていたわけだから早く対応しておけばよかったと思いますよ。」
俊之は言った。
「高村さんがおっしゃる通りです。」
山本が言うと
「僕は何度も会社側に報告していましたよ。」
俊之は言った。
「私は責任を感じています。」
山本は言って頭を下げた。